第1回 超⾼齢社会?いやいや、注⽬すべきはデジタルネイティブな Z 世代! / 高橋 翔太

私がある歯科医院にコンサルティングで訪れたときのことです。

受付に20歳くらいの若い女性がいたので、話を聞いてみました。すると「高校を卒業して、そのまま歯科医院に就職した」というので驚きました。

 

なぜなら、私たちの世代の「歯科医院」といえば、「抜く」「削る」、つまり痛みやドリルの音を連想し、歯科医院はできれば近づきたくない存在だったからです。

 

私は思わずこの女性にもう少し尋ねてみました。

「ちなみに、むし歯になったことはありますか?」

「それが、ないんです。歯医者さんは、定期健診のために通っていました」

 

・・・お分かりでしょうか、これがポイントです。

 

定期健診でしか歯科医院に通ったことがない若い世代にとって、歯科医院はおそらく、美容院やエステサロンと同じような存在ということです。むし歯治療をしたこともなければ、ドリルの振動を経験したこともない、神経を抜いたこともない人にとって、歯科医院は嫌悪の対象ではないのですね。子どものむし歯が激減した結果、治療よりも予防(定期健診)で通う人が増えてきている昨今、こうしたマイナスのイメージを持たない若い世代が圧倒的に増えているのです。

 

 

この女性は、いわゆる「Z 世代」です。Z 世代とは、1990年代半ばから2010年ころまでに生まれた世代のことで、子どものころからデジタルやインターネットに親しんできたことから「デジタルネイティブ」と呼ばれる人たちと重なります。

 

Z 世代はデジタルに対してだけでなく、歯科医院に対する意識もそれ以前の世代とまるで違ってきています。

 

むし歯にほとんどなったことがない人がこれからも増え続ければ、おそらく自然に歯科医院に対するイメージが変わるのではないでしょうか。

今は過渡期なのかもしれません。この変化を、歯科医師・歯科衛生士のみなさんもきっと気づいているはずです。

 

これからの患者は「管理」してはいけない!

人々の価値観の変化は、無視できません。

 

かつての日本の教育現場では、団体行動の徹底による管理教育が当たり前でした。

しかし、Z世代以降は、多様性や自分らしさを大切にする価値観へとシフトしています。さらにコロナ禍以降は、「自分のライフスタイルは自分で決める」という風潮がますます強まっています。

 

これからは「管理されたくない」「強制されるのは嫌」という人たちが増えることが予想されますが、これは歯科医院経営においても対策が必須になります。

 

 

予防歯科は啓蒙が必要なサービスである

歯科医院に抵抗がない人が増えているということは、予防歯科のために気軽に来院してもらいやすい土壌ができつつあるということだといえます。

 

しかし歯科医院として、そもそも歯が痛くなったことがない人、さらには「別に行かなくていい」と思っている人に対して、どのようにアプローチすればいいのでしょうか?

 

「二度とむし歯になりたくないなら、口腔ケアをきちんとやっていきましょう」

「歯周病って知っていますか? “むし歯が治ってよかった”と思っているかもしれませんが、歯周病になると歯が抜けるかもしれません。口腔ケアはその対策です」

 

このように、患者さんのためを思って、口腔ケアの大切さを伝えているのに、患者さんは2〜3回は来院するものの、いつの間にか来なくなってしまう・・というのが、よく見られるパターンです。

 

せっかく歯科医院に対するイメージが改善されているのにも関わらず、定期的に通ってくれる患者さんが増えない・・・。

 

これは正に、Z世代の特徴である「管理されたくない」「自分らしく生きたい」という欲求に対して、キチンと向き合えていないからではないでしょうか?

 

私がコンサルタントとして展開している「デンタルフィットネス」では、「患者さんのセルフケアの習慣化」を最も大事にしています。自分の医院に何とかして通わせようという仕組みではないのです。

 

 

どうすればセルフケアが習慣化されるか。

 

これを考えることと、「管理されたくない」「自分らしく生きたい」今の若者のニーズを捉えることは、案外近いと考えます。

 

対象的に、歯がボロボロの高齢者が激増する近未来

20年前、30年前の高齢者の歯を思い出してみてください。あのころは総入れ歯の高齢者がたくさんいました。テレビのバラエティー番組でも、高齢者の総入れ歯が外れてお茶の間の爆笑を誘うというシーンがあったくらいで、金歯だらけの高齢者や歯が少ししか残っていない高齢者もたくさんいました。

 

しかし、むし歯がこれだけ減ると、未来の高齢者はどうなるのか?も考えていかなければなりません。8020運動の達成者の割合も年々増加しています。歯の本数が多い分、もしもこの高齢者達が寝たきりになってしまい、きちんとした口腔ケアを受けられなくなるとどうなるのでしょう。

 

・・・恐ろしい話ですね。

 

先生方には、「超高齢化社会=むし歯治療が延々と続く」という幻想から目を覚ましてもらい、健康な高齢者に対しても自発的セルフケアの習慣化を身につけるためのアクションを起こしていただきたいのです。

 

厚生労働省「平成28年歯科疾患実態調査」をもとに作成

 

 

流行る歯科医院は、患者の習慣化次第で作れます。

次回は「なぜサブスクが流行っているのか?そこには時代に沿った答えがあった!」についてお話しします。

 

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執筆者

高橋 翔太の画像です

高橋 翔太

コンサルタント

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長

医療法人社団しん治歯科医院 COO。日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者。IT企業、証券会社の勤務を経て、東京で広告代理店など複数社企業を起業。その後、震災の影響による倒産や出資詐欺被害、ビジネスパートナーの夜逃げなどの経験を元に、歯科業界専門のビジネスコンサルタントを開始する。同時に父親が開業した、しん治歯科医院の経営に事務長として参画し、次々と経営を改革。結果、2年間で売上を2億から5億に成長させ、2022年度は6億を超える計画で進行中。現在は、自医院で結果が出た手法を「次世代ストック型歯科医院経営法」としてまとめ、他の歯科医院経営者に提供している。プライベートでは車、カメラ、マンガおたく。

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