使いどころがわかる!『診断用WAXUPの重要性・日常臨床への活用法』を視聴してみた / 遠藤 眞次

この記事は、咬合・補綴>プロビジョナル・ワックスアップ

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先生方は診断用WAXUPを臨床に活用しているだろうか。筆者は以前まで、「なんとなく重要だろうけど、よくわからないな…」くらいに考えていた。

 

包括的な歯科治療を実践しようとすると、その重要性を痛感するのが診断用WAXUPである。本セミナーは、診断用WAXUPの指示書の書き方から臨床における活用方法まで、診断用WAXUPをトータルで学べる内容となっている。

 

講師は日本臨床歯科学会(SJCD)北陸支部の支部長を務める小坂井満先生。多数の症例が供覧された、わかりやすいスライドにも注目だ。

 

咬合診断の項目についても言及されており、臨床のステップアップにもってこいのセミナーとなっている。そんな『診断用WAXUPの重要性・日常臨床への活用法』のセミナーレポートをぜひ最後までご覧いただきたい。

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診断用WAXUPができるまで

診断用WAXUPとは、咬合器上でワックスを用いて歯冠形態を付与することにより、歯冠修復治療のゴールをシミュレーションする手法である。

 

診断用WAXUPは、すべての治療過程において基準となる道しるべになると小坂井先生はいう。

 

 

診断用WAXUPを作製するための資料採得

診断用WAXUPを作製するにあたり、まずは問題点を把握しなければならない。診断のためには基礎資料の収集が必要であり、小坂井先生は以下の資料を必要に応じて採得しているそうだ。

・ペリオチャート

・パノラマX線写真

・デンタルX線写真10〜14枚法

・セファロX線写真

・CT

・口腔内写真

・スタディーモデル

 

パノラマX線写真では顎口腔の全体像を把握し、デンタルX線写真ではう蝕や根尖病巣、歯槽骨吸収などの細かな所見を読み取る。セファロX線写真では歯や顎骨のずれを診断することができる。

 

近年では歯科用CTを導入しているクリニックが多く、CT画像は顎関節をはじめとする三次元的な形態を知る手がかりとなる。また、スタディーモデルは口腔内の状態を立体的に把握するために有用なツールだ。

 歯科用CTによる顎関節の診査

歯科用CTによる顎関節の診査

 

 

基礎資料から読み取る咬合の問題点

歯は他の臓器と違い、外力(咬合力)がかかる特異的な組織である。許容範囲から逸脱した力は、歯や歯周組織、顎関節の破壊を招くため、その力を分析する咬合診断が重要だと小坂井先生は述べる。

 

セミナー中で解説された咬合診断のポイントを以下に列記する。

・適切な顎位(ICPとCRのずれ)

・早期接触、咬合干渉

・アンテリアガイダンス、アンテリアカップリング

・Guiding tooth

・ポステリアサポート

・咬合平面

・咬合高径

・咬合接触(1歯対1歯・1歯対2歯)

 

咬合診断によって導き出された問題点を解決する際には、できるだけ侵襲の少ないステップを選ぶことがポイントだ。

 

シンプルで侵襲の少ない治療方法を選択する

シンプルで侵襲の少ない治療方法を選択する

 

わずかな咬合調整のみで問題点を解決できればいちばん良いが、必要であれば補綴修復治療や矯正治療も併用する必要があると語った。

 

 

問題点の解決方法を探るための診断用WAXUP

咬合診断により導き出された問題点は、診断用WAXUPで機能と審美を基準にさらなる診断を行い、その治療方法が検討される。

 

機能的形態の診断では、患者の顎機能に調和した安定したセントリックストップと側方ガイドを与えることが重要であると小坂井先生は説明した。調和しているかどうかは、口腔内でのプロビジョナルレストレーションで最終的に確認、評価することになる。

 

審美的形態の診断では、顔貌と口腔との正中線の位置関係、口唇と上顎中切歯との関係、歯の位置、スマイルライン、前歯から臼歯にかけての咬合平面の連続性、歯肉レベルの連続性などをWAXUPで診断する。

 

診断用WAXUPは、歯冠修復処置の選択において、咬合接触関係や積層されたWAXの量から、コンポジットレジン、ラミネートベニア、部分被覆冠、全部被覆冠といった順序で、最小で最適な治療オプションを決定する助けとなる。

 

診断用WAXUPの段階で、歯の位置や歯軸が補綴治療の範囲を超えていると判断した場合は、矯正治療との連携を考慮しなければならない。

 診断用WAXUPと支台歯の重ね合わせにより補綴の可否を決定する

診断用WAXUPと支台歯の重ね合わせにより補綴の可否を決定する

 

また、欠損補綴としてインプラントを用いる場合には、インプラント埋入位置と最終補綴物との関係や、インプラントと残存天然歯との関係を診査・診断する上でも、診断用WAXUPは有用であるとのこと。

 

目標とする口腔内の状態が三次元的に再現されることで、治療に携わるすべてのスタッフが治療のゴールを共有し、患者自身も術前に治療のゴールを把握できるメリットが診断用WAXUPにはある。

 

手間はかかってしまうが、最終的にはゴールへの近道になるとのことだ。

 

ケースプレゼンテーション

セミナーではいくつもの症例が供覧されたが、今回はその中から3症例の概要を紹介する。それぞれの診断用WAXUPができるまでの過程は、セミナーで詳細に解説されている。

 

Case 1

歯肉の腫脹と退縮を主訴に、歯の長期的な保存を望まれているケース

 

 

66歳女性。歯肉の腫脹と退縮を主訴に、歯の長期的な保存を望まれているケースである。不良習癖による過剰な側方力を、咬合平面や補綴形態の是正とナイトガードにより予防し、喪失した臼歯部には最適なバーティカルストップの確立のためにインプラント治療を行っている。

 

 

Case 2

全顎的な治療を主訴に、固定式補綴装置で良く咬めるようになりたいという要望で来院されたケース

 

 

64歳男性。全顎的な治療を主訴に、固定式補綴装置で良く咬めるようになりたいという要望で来院されたケースである。インプラントを併用した全顎的な補綴治療が行われた。

 

 

Case 3 

矯正医からの紹介で、矯正治療後の補綴治療を主訴に来院したケース

 

 

24歳女性。矯正医からの紹介で、矯正治療後の補綴治療を主訴に来院したケース。先天性の欠損歯があり、審美的な治療を望まれていた。審美的に補綴修復処置を実践するだけではなく、デジタル技術も活用したケースが供覧された。

 

 

***

 

 

本セミナーでは、診断用WAXUPによる診断だけではなく、診断用WAXUPを活用したダイレクトモックアップやスーパーインポーズについても解説されている。

 

診断用WAXUPを技工士にオーダーする際に、どのように指示すればよいか悩むことも多いと思う。それぞれのケースでは小坂井先生の技工指示書も供覧されているので、ぜひ確認してみてほしい。

 

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執筆者

遠藤 眞次の画像です

遠藤 眞次

歯科医師

医療法人社団MEDIQOLデンタルクリニック神楽坂 院長

臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

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