【過去問】#6 抗腫瘍薬に関する問題 / 岡田 優一郎

抗腫瘍薬に関する問題です。薬剤に関する問題は古くから出題されておりますが、近年の歯科医師国家試験では特に救急薬品(第3回を参照)や抗悪性腫瘍薬など、医学分野の薬剤を問う問題も多く出題されています。
薬剤名などの細かい部分まで問われるので苦戦する学生さんも多いところです。

 

 

今週の過去問

 

[111A-99]核酸合成過程の代謝拮抗によって抗腫瘍作用を示すのはどれか。2つ選べ。

 

a:5-FU

b:ゲフィチニブ

c:セツキシマブ

d:メトトレキサート

e:ドセタセル水和物

 

 

110回歯科医師国家試験の傾向としては比較的基本的な内容の出題が多かったのですが、隣接医学や高齢者、摂食嚥下といった分野は引き続き踏み込んだ内容を問う問題も多く出題されました。
薬剤に関する分野は薬理学、歯科麻酔学で出題可能ですので毎回出題がみられます。

 

 

Key Point

 

悪性腫瘍薬に限らず、薬剤に関する問題は「作用機序」「薬剤名」「副作用」を確実に抑える必要があります。
地道な暗記が要求されるところでもあります。

 

 

解説

 

a. 5-FU:

5-FU(5-フルオロウラシル)はピリミジン代謝拮抗薬です。DNA、RNAといった核酸合成に必要なウラシルと類似した構造をもち、腫瘍細胞の核酸合成を阻害して抗腫瘍効果を発揮します。

b. ゲフィニチブ:

ゲフィニチブは分子標的治療薬に分類される抗腫瘍薬で、細胞増殖に必要なチロシンキナーゼ(細胞増殖に必要な酵素の一種)を阻害することで上皮成長因子(EGFR)を阻害します。

c. セツキシマブ:

セツキシマブはゲフィニチブ同様抗悪性腫瘍薬に分類されます。
ゲフィニチブがチロシンキナーゼに作用することで上皮成長因子(EGFR)を阻害するのに対し、セツキシマブは上皮成長因子(EGFR)に直接結合して作用を阻害します。

d.  メトトレキサート:

メトトレキサートは代謝拮抗薬に分類される抗腫瘍薬です。
DNAの合成に必要な酵素であるジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)を阻害して細胞増殖を抑制します。

e. ドセタキセル水和物:

ドセタキセル水和物は微小管重合阻害薬に分類される抗腫瘍薬です。細胞の微小管に結合することで細胞分裂を阻害します。

 

 

よって、この問題の正解は  a と d です。

 

 

コラム

 

抗腫瘍薬の内容に関しては近年出題が増加しています。
ひとくちに抗腫瘍薬といっても様々な種類があり薬剤ごとに適応となる腫瘍も異なっています。
第108回~第111回で出題された(選択肢として出題された)抗腫瘍薬だけでもこれだけ存在します。

 

・代謝拮抗薬:5-FU、メトトレキサート
・分子標的薬:ゲフィニチブ、セツキシマブ
・白金化合物:シスプラチン
・微小管重合阻害:ドセタキセル、パクリタキセル
・アルキル化薬:シクロフォスファミド

またこのほかの抗腫瘍薬として抗癌抗生物質であるペプロマイシンやブレオマイシンがあります。
口腔癌への化学療法で用いられるのはシスプラチン、5-FU、ドセタキセルやパクリタキセルといった微小管重合阻害薬、ペプロマイシンなどがあり、しばしばこれらを併用しています。
ほかの部位の悪性腫瘍の治療に用いられる主な例としては以下のようなものがあります。


・シクロフォスファミドは白血病や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫といった血液系の悪性腫瘍に用いる
・メトトレキサートは骨肉腫などの肉腫に用いられる
・セツキシマブは頭頚部癌のみならず、直腸・結腸癌にも用いられる
・リツキシマブは悪性リンパ腫(B細胞性非ホジキンリンパ腫)に用いられる

また、抗腫瘍薬ではその副作用も大きな問題となります。
例えば、頭頚部癌の治療でも用いられるシスプラチン(白金化合物)では副作用として重篤な腎障害が、ブレオマイシンでは肺線維症などの呼吸器障害が起こります。

今回は、抗腫瘍薬に関する問題をご紹介いたしました。
また、次回もよろしくお願いいたします。

このコラムを書いた岡田優一郎先生ご略歴
日本大学松戸歯学部卒業(歯科医師・学部長賞受賞)/ 日本アンチエイジング歯科学会 理事 / 一般社団法人 医歯薬獣医総合教育機構 理事長/ 日本赤十字社 勲章 金色有功章 / 一般財団法人 日本歯学教育振興財団 代表理事

 

 

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(第93回メールマガジンより抜粋)

2. ラミネートべニア修復で正しいのはどれか。2つ選べ。(クラウンブリッジ学)

a 無麻酔で形成が可能である。

b 切端咬合の患者に適用できる。

c 材料はポーセレンのみを用いる。

d アンテリアガイダンスを保持できる。

e 装着にはグラスアイオノマーセメントを用いる。

 

解答:a,d

 

解説:クラウンブリッジ学から、ラミネートべニア修復に関する出題です。

ラミネートべニア修復に関しては歯科医師国家試験、進級・卒業試験にも多く出題されます。確実に押さえておきましょう。

~ラミネートべニア修復~

適応症:矮小歯、円錐歯、正中離開

禁忌症:切端咬合、ブラキシズムを有する症例

・形成が唇面にとどまるため、アンテリアガイダンスを保持できる

・形成には専用のバーを用いる

・接着性レジンセメントで接着

 

・材料はポーセレンや硬質レジン(ポーセレンラミネートベニアの製作は耐火模型を用いる)

 

 

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執筆者

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岡田 優一郎

歯科医師・博士(歯学)

東京メディカルスクール株式会社 代表取締役

大学卒業後は、学生時代より予備校や塾講師に携わった経験を活かし、歯学生1年~6年生、国試浪人生の進級、CBT、歯科医師国家試験対策のマンツーマン個別指導スクール 東京デンタルスクールを開校。自身も教鞭を取りながら関東すべての歯科大学の現役生の教育に携わり、北海道〜九州より受講希望者が訪れる。JR秋葉原駅徒歩2分の秋葉原教室など、都内に2教室を展開。また、大学や全国セミナーなど全国講演や集団授業を行い、講師の育成にも力を入れ、切磋琢磨している。日本アンチエイジング歯科学会では理事を拝命し、歯学界の発展のために日々奮起している。

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