歯科医療の未来予測 2017 第2回「医療×テクノロジー と 歯科医療」 / WHITE CROSS編集部

未曾有の超高齢化に突入する日本社会において、これまでのように幅広い医療を病院で提供する体制を維持することは難しく、病院の医療機能を急性期対応などに絞り込み、現在病院が持っている多くの医療機能を民間に移行していく。

そして、病院や歯科医院などの医療機関、病院から民間移行された多くの医療機能、そして様々な医療・介護サービスなどを連動させるための構想として、地域単位で人々の健康を支えていく 地域包括ケアシステム が2025年を目標に構築されようとしている。

地域包括ケアシステムを確立し、それを支えるテクノロジーやネットワークを構築しようとしている。その断片が冒頭で紹介した 医療×テクノロジー である。

 

歯科医療 × テクノロジーの2つの流れ

それでは医療×テクノロジーの急激な進行に合わせて、歯科医療はどのように変化していくのであろうか?そこには2つの大きな流れがある。


一つ目の流れ 歯科医療の効率化・関連情報の管理性を高める

 

これまでアナログで処理されてきた歯科医療情報をデジタルデータにおきかえることで、効率化を図る流れである。例えば、現在のアルジネート印象やシリコン印象は、光学印象機器へと移行していく。

印象採得においてスキャニングセンサーが先端に付いた棒状の機器を口腔内に挿入し、支台歯などの印象をデジタルにて採ることができるようになる。そのデジタルデータを利用して、クラウン・ブリッジ・ベニア・インレーなど様々な補綴物が作り上げられる。

3DプリンターやCAD/CAMなどとの互換性が飛躍的に高まり、デジタルでのバイト・印象採得 → 自動でデータを転送 → 3DプリンターやCAD/CAMにより補綴物が完成 となり、従来のような人の手を必要するステップの省略・自動化が進む。

そのため歯科技工士のあり方も大きく変わってくる。

出典: 野村総合研究所 Society 5.0へのアプローチ

NRIと英オックスフォード大学マイケル A.オズボーン准教授等との共同研究(2015年)

 

こちらは、各職業が人工知能(AI)に取って代わられる可能性を示した表に、歯科医師・歯科技工士・歯科衛生士・歯科助手を当てはめたものである。心苦しい話ではあるが、歯科技工については、高確率で人工知能(AI)と3DプリンターやCAD/CAMに取って代わられるという予測が出ている。

 

無論、予測はあくまで予測に過ぎないが、歯科技工士は大量のデジタルデータに対応した歯科技工物工場の3DプリンターやCAD/CAMのライン管理者と、機械化不可能な匠の技に特化した少数のセラミストに別れていくのではなかろうか。


現在、歯科医療機器大手メーカー群が急激にテクノロジーが進化しているのは近年のデンタルショーをみれば明確であり、デジタル化の時代の波に乗ることができた巨大な歯科技工所に、歯科技工は集約されていくのではなかろうか。

近年、日本の歯科医院の中国などへの技工物の発注が問題視されたが、そもそも人の手を介さずに超効率的に技工物が作れる仕組みができた際には、歯科技工産業は再度、日本の国内産業として内需における競争力を得る可能性もある。


デジタル化は、歯科医療を成り立たせる上で必要なものである以上、確実に歯科医療界に浸透していく。

 

関連:3Dプリンターの歯科医療への適用予測

関連:光学印象機器マーケットの成長予測

 

 

2つ目の流れ 歯科医療の情報の流動性を高める

 

これから10年で、歯科医療産業内部での情報のあり方は大きく変わってくる。

日本の歯科医療界において情報は著しく伝わりづらい。一般社会の通常のニュースであれば、何かが起きたその数時間後にはテレビやインターットを介して世界に発信される。その一方で、歯科関連のニュースは、週・月単位で遅れて世界に発信される。

これは徐々に改善されていく。すでにデンタルトリビューンのような世界的に歯科医療情報を発信している媒体や、米国におけるデンタルXP、あるいはWHITE CROSSのような企業が、歯科医療従事者がより手軽に情報を得られるような時代を築き上げようとしている。

他産業において過去10年で起きたように、歯科医療界においてオンラインでセミナー参加できる仕組みや、最新の治療法、出版物、歯科医療機器・材料などの情報が得られる時代は必ず訪れる。

 

歯科医療従事者にとって新しい歯科医療情報に触れやすい環境が整備されることは、歯科医療従事者が患者に提供する歯科医療の質自体に影響を与えうるものである。

情報の流動性が高まることは、歯科医療現場における変化をうみ、環境の変化に対応できた既存産業にとっての活性化につながる。

 

まとめ

医療×テクノロジーは、21世紀前半の社会の発展を牽引していく産業となる。特に超高齢化に突入する日本社会においては、これからの10年間で、医療を大きく変えてく 医療 × テクノロジー が発展していく。歯科医療においては、より効率的に管理しやすいで歯科医療を提供するためのテクノロジーや、歯科医療情報自体をより得やすくしていくテクノロジーが発達していく。次回は、社会が求める歯科医療の変化について描いていく。

 

 

前回のコラムはこちら

第1回『日本社会における医療』

 

執筆者

WHITE CROSS編集部

WHITE CROSS編集部

臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・歯科関連企業出身者などの歯科医療従事者を中心に構成されており、 専門家の目線で多数の記事を執筆している。数多くの取材経験を通して得たネットワークをもとに、 歯科医療界の役に立つ情報を発信中。

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