【歯科用CT攻略マニュアル2023】見えなかったモノが視える! 画像による視診手段! / 永原 隆吉

知れば診断力が確実に上がるCTの世界。肉眼では見えない硬組織を攻略して、歯科医師レベルを上げましょう!

Chapter1  側枝を視つける!
Chapter2  セメント質剥離を視つける!

Chapter3  CBCTの各種設定を攻略する!

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【応用編】mission1   破折ファイルに到達せよ!

【応用編】mission2   トルネード根管に立ち向かえ!

 

Chapter1 側枝を視つける!

患者は42歳男性。#21の変色を主訴に来院。初診時の口腔内初見(図1)では、#21のレジン充填直下にう蝕を認め、デンタルX線写真(図2)では、根尖部に境界明瞭ではない透過像と、歯根近心中央部の透過像を認めた。

ここからどのように病因を特定したらよいのだろうか?

 

初診時口腔内写真。#21の変色歯はレジン充填下にう蝕を認め、歯髄生活反応はない。

(図1)初診時口腔内写真。
#21の変色歯はレジン充填下にう蝕を認め、歯髄生活反応(寒冷診、電気診)はない。

 

初診時デンタルX線写真。根尖病変(赤矢印)と根側病変(黄矢印)の透過像を認める。

(図2)初診時デンタルX線写真。
根尖病変(赤矢印)と根側病変(黄矢印)の透過像を認める。

CBCT画像。根尖病変(赤矢印)と根側病変(黄矢印)の透過像を認める。
(図3)CBCT画像。
根尖病変(赤矢印)と根側病変(黄矢印)の透過像を認める。

 

 

ボリュームレンダリング画像。歯頸部側まで拡大した根側病変内に歯根の側枝(黄矢頭)を認める。

(図4)ボリュームレンダリング画像。
歯頸部側まで拡大した根側病変内に歯根の側枝(黄矢頭)を認める。


シャープネスの有無による側枝の画像の違い。側枝(黄矢頭)。(図5)シャープネスの有無による側枝の画像の違い。
黄矢頭は側枝。

 

 モノクロ画像と白黒反転させた反転画像による側枝の画像の違い。側枝(黄矢頭)。

(図6)モノクロ画像と白黒反転させた反転画像による側枝の画像の違い。
黄矢頭は側枝。

 

感染根管治療後4年3ヶ月。根尖病変と根側病変の治癒が認められた。

 (図7)感染根管治療後4年3ヶ月。根尖病変と根側病変の治癒が認められた。

 

 

側枝の視つけ方は動画で!

動画を通して、病因を特定するための操作方法をお伝えする。見れば側枝が視える!視つけられる!

 

(動画1)側枝の検出。
操作方法や操作の意味はChapter3にて。

 

 

Chapter2 セメント質剥離を視つける!

患者は70歳女性。押すと上の前歯が痛いを主訴に来院した。自発痛はないが、デンタルX線写真では、#11、#21の歯根の近遠心面に線状の不透過像を認めた(図9)。

病因解明のためCBCT撮影の同意を得たが、どのように病因を特定したらよいだろうか? 


初診時口腔内写真。排膿と発赤・腫脹が顕著な#21は深い歯周ポケットの他に、Sinus Tract(黒矢印)を認める。#111のプロービング値は3mm以内である。(図8a)初診時口腔内写真。
#11は排膿と発赤・腫脹が顕著で、Sinus Tract(黒矢印)を認める。#11、#12ともに、軽度の打診痛(垂直・水平)と根尖部圧痛を認めた。


(図8b)初診時資料。

#11の動揺度は2度で、深い歯周ポケットを認めた。#21のプロービング値は3mm以内である。



初診時デンタルX線写真。#11、#21の歯根の近遠心面に線状の不透過像(青矢印)が認められる。また、深い歯周ポケットを認めた動揺度2度の#11は歯頸側に、3mm以内のプラ―ビング値を示した動揺度1度の#211は根尖側にそれぞれ骨吸収像が認められる。(図9)初診時デンタルX線写真。
#11、#21の歯根の近遠心面に線状の不透過像(青矢印)が認められる。#11歯頸側、#21根尖側にそれぞれ骨吸収像を認める。

 


#11の各断面像におけるCBCT画像(モノクロ画像と反転画像)。セメント質剥離(緑矢印)を認める。セメント質剥離は近遠心面の他に、口蓋側にも認められる。

 

#11の各断面像におけるCBCT画像(モノクロ画像と反転画像)。セメント質剥離(緑矢印)を認める。セメント質剥離は近遠心面の他に、口蓋側にも認められる。(図10)#11の各断面像におけるCBCT画像。
近遠心面と口蓋側に、セメント質剥離(緑矢印)を認める。



#11の各断面像におけるCBCT画像(モノクロ画像/上 と反転画像/下)。 セメント質剥離(緑矢印)と歯根の水平破折(青矢印)を認める。セメント質剥離は近遠心面の他に、口蓋側にも認められる。

#11の各断面像におけるCBCT画像(モノクロ画像/上 と反転画像/下)。 セメント質剥離(緑矢印)と歯根の水平破折(青矢印)を認める。セメント質剥離は近遠心面の他に、口蓋側にも認められる。(図11)#21の各断面像におけるCBCT画像。
近遠心面と口蓋側のセメント質剥離(緑矢印)と歯根の水平破折(青矢印)を認める。

 

 

 

#11にはセメント質剥離と水平破折の他に、近心根尖部に側枝(黄矢印)も認められた。

 

#11にはセメント質剥離と水平破折の他に、近心根尖部に側枝(黄矢印)も認められた。(図12)#21スライス断面CBCT画像。
#21はセメント質剥離と水平破折の他に、近心根尖部に側枝(黄矢印)も認められた。


#11、#21の重度な歯槽骨破壊と広範囲のセメント質剥離、#21の歯根の水平破折のため抜歯となった。(図13)#11、#21の重度な歯槽骨破壊と広範囲のセメント質剥離、#21の歯根の水平破折のため抜歯となった。

 

 

セメント質剥離の視つけ方は動画で!

動画を通して、病因を特定するための操作方法をお伝えする。見ればセメント質剥離が視える!視つけられる!

 

(動画2)セメント質剥離と水平破折の検出

操作方法や操作の意味はChapter3にて。

 

Chapter3 CBCTの各種設定を攻略する!

ここではChapter2の症例を使用し、これまでの動画に出てきた操作方法を紹介する。

 

①スライス厚さ(断層厚み)の調整
②ヒストグラム(画面の明るさ)の調整
③フィルター(画面の鮮明さ)の調整
④モノクロ画像と反転画像の効果的な使い方

 

 

①スライス厚さ(断層厚み)の調整

歯や顎骨の構造観察の際はスライス厚さ1 mmで全体を観察した後に、微細な構造を調べたい際にはポイントを絞ってスライス厚さ0.5mmにて観察する。この際に0.5mmより薄くするとノイズが強調され、逆に荒れた画像になるので注意が必要である。

 

 

 

操作方法は画像を右クリックし、厚み>適切な厚みを選択する。

操作方法スライス厚さの決定方法

 

 

②ヒストグラム(画面の明るさ)の調整

ヒストグラムにて画像の明るさを調整する。主な用語と詳細は次のとおり。

 

【WW(ウィンドウ幅)】コントラストカーブをドラッグ&ドロップし、コントラストカーブの傾きを変更して設定する。傾きが垂直に向かうほど、WWは狭くなり、コントラストが強くなる。

 

【WL(ウィンドウレベル)】ヒストグラムの垂直線をスライドする。左に動かすと明るく、右に動かすと暗くなる。

【輝度レベル】ヒストグラムの水平線をスライドする。上に動かすと明るく、下に動かすと暗くなる。

 

 

 

③フィルター(画面の鮮明さ)の調整

フィルター調整にて画像の鮮明さを調整する。シャープネスやコントラストの調整はノイズや画像ボケに結び付くため、好みに応じて交互に微調整をしながら、術者が最も観察しやすい画像に仕上げる必要がある。

1. シャープネス
白黒階調画像の画質を鮮明にする。ボタン右側の▽ボタンをクリックすると、スクロールバーが表示され、シャープネスの度合いを調整することができる。

 

注意:シャープネスを適用すると、コントラストが強調されたシャープな画像になるが、同時に画像ノイズも強調され、粗い画像になる。また、歯牙と金属補綴物の境目などに偽像(アーチファクト)が生じる場合がある。

 

 

 

2.  コントラスト

白黒階調画像のコントラスト調整をおこなう。スライダを左右に動かすと、ヒストグラムビュー内のコントラストラインの傾きを変えて調整した場合と同様の効果変えられる。

 

 

 

3.  輝度

白黒階調画像の輝度調整をおこなう。スライダを左右に動かすと、ヒストグラムビュー内のWL(ウィンドウレベル)を調整した場合と同様の効果変えられる。

 

④ モノクロ画像と反転画像の効果的な使い方

モノクロ画像と、白黒反転させた反転画像を同時に画像確認することで、より効果的に微細構造の確認が可能となる。また、アーチファクトによる障害をある程度改善できるため、障害となった領域を見やすくしてくれる。

 

 

 

【番外編:反転画像が効果的であった症例】

患者は49歳男性。ニキビができたを主訴に来院。自発痛はなく、近心頬側歯肉にSinus Tractを認める(図21)。CBCT画像上での診断(疑い)ポイントを図23、24で示す。 

(図21)初診時口腔内写真。

近心頬側歯肉にSinus Tract(黒矢頭)を認める。#46は動揺度1度、ポケット深さは頬側分岐部の4mm以外は全て3mmで、ファーケーションプローブを用いた検査では、分岐部病変Ⅱ度であった。

 

(図22)初診時デンタルX線写真(正放線、偏心投影法)。
分岐部病変、近遠心根の根尖病変が認められ、近心根根尖の外部吸収を疑う。

 

(図23a)根管口付近に穿孔を疑うモノクロ画像。

モノクロ画像上で近心根頬側の根管口(根分岐部側)に穿孔(赤矢印)を疑う画像を認めた。

 

(図23b)根管口付近に穿孔を疑う反転画像。
モノクロ画像では補綴装置の金属アーチファクトによる障害像が顕著であったため、画像診断の一工夫として、反転画像処理を用いて金属アーチファクトによる障害像を軽減させることで、穿孔(赤矢印)をさらに画像上で疑うことができた。

 

(図24a)近心根と遠心根に破折線を疑うモノクロ画像。

モノクロ画像上で穿孔部(図23)から舌側方向へ伸びた破折線(黄矢頭)を疑う画像を認めた。また、遠心根の舌側においては、頬側の放射状アーチファクトとは異なった破折線(青矢頭)を疑う像が認められた。破折を疑う遠心根舌側の同部位には深い歯周ポケットは認められなかったが、冠状断像上で歯根膜腔の拡大(青矢印)が認められることからも、その疑いが強くなった。モリタ社のCBCTは、独自の技術による金属アーチファクトの大幅な低減化と高解像力によって、術前から疑うことを可能にしてくれる画像技術と言える。

 

(図24b)近心根と遠心根に破折線を疑う反転画像。
画像診断の一工夫として、反転画像処理を用いて金属アーチファクトによる障害像を軽減させることで、各破折線をさらに画像上で疑うことができる。

(図25)補綴装置除去後の写真。
穿孔(赤矢印)。破折線(黄矢頭、青矢頭)。

 

【応用編】mission1 破折ファイルに到達せよ

患者は33歳女性。破折器具の除去困難のため紹介受診した。デンタルX線写真(図26)では根尖透過像と近心舌側根根尖部に破折器具を認めた。


(図26)デンタルX線写真。
Buccal Object Ruleから破折器具(黄矢印)は近心舌側根管根尖に位置すると推察される。

 

(図27)CBCT画像。
破折器具(黄矢印)は強い金属アーチファクトを示すことから、近心舌側根管根尖に位置することが断定できた。各断面像をパワーポイント上にコピーアンドペーストして、シミュレーションを実施する。

 

(図28)破折器具へのアプローチのためのシミュレーション。
PowerPointにコピー&ペーストした各断面像上で、非外科的に除去可能かのシミュレーションを実施する。紫色範囲が切削予定部位。破折器具(黄矢印)。

 

(図29)破折器具の除去後。
根管治療による感染源除去で症状は消退した。

 

【応用編】mission2 トルネード根管に立ち向かえ

患者は36歳男性。左上の歯茎のムズムズ感が消えないと紹介受診した。根管治療中の#25(図30、31)はCBCT画像(図32)から根尖を頬側に向けた螺旋状の湾曲根を示していた。


(図30)初診時口腔内写真。
#25は根管治療中である。

 

(図31)初診時デンタルX線写真。

 

(図32)初診時CBCT画像(冠状断像、矢状断像)。
#25の穿孔は認められない。また、根尖を頬側に向けた螺旋状の湾曲根を示している。CBCT画像を参考に穿孔を注意して、感染根管治療を実施したが、穿通はできなかったものの、症状は消失した。

 

(図33)根管充填前。
根管の方向は黄矢印の近心頬側方向に向かっている。

 

(図34)ガッタパーチャ試適時のCBCT画像。
根管形成の確認も兼ねて根管充填前にガッタパーチャ試適のCBCT撮影を実施した。

 

(図35)根管充填直後。

 

(図36)根管充填後1年9ヵ月。
#25側方の病変は縮小した。

 

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執筆者

永原 隆吉の画像です

永原 隆吉

歯科医師・博士(歯学)

医療法人社団日本鋼管福山病院 歯科部長

日本歯周病学会臨床ポスター賞・ベストデンタルハイジニスト賞(共著)、日本歯科保存学会認定医優秀症例発表賞、日本歯内療法学会大会会長賞を受賞。

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