医療ホワイトニングの科学と知覚過敏への対応〜原因を理解して適確な対処を〜 / WHITE CROSS編集部

医療ホワイトニングで用いられるホワイトニング剤は過酸化物を含み、患者さんが知覚過敏症状を訴えることもあるため、事前に対処法を理解しておくことが重要です。

 

医療ホワイトニングに関連する知覚過敏症状に関して、2023年5月31日に開催されたシュミテクトWeb講演会では「医療ホワイトニングの科学と知覚過敏への対応」と題して、明海大学保健医療学部口腔保健学科教授 金子潤先生にご講演いただきました。

 

医療ホワイトニングの基礎知識と知覚過敏への対応について解説いただきましたのでご紹介します。

 

医療ホワイトニングの主成分は過酸化水素

オフィスホワイトニングは35%以下の過酸化水素、ホームホワイトニングでは主に10%の過酸化尿素が使われます。過酸化尿素は尿素と過酸化水素に分解されるため、いずれの方法でも過酸化水素がホワイトニング剤の主成分といえます。

 

 

医療ホワイトニングのしくみ

 医療ホワイトニングの主成分である過酸化水素(H2O2)は、歯質における光の吸収性と散乱性を変化させることでホワイトニング効果を発揮します。

 

 

① 光の吸収性の変化(浸透漂白作用)

過酸化水素がエナメル質表面と表層下の着色物質を分解し、さらに象牙質まで浸透して変色物質を分解することで「歯自体を白くする」作用です。

 

過酸化水素が分解する際に発生するフリーラジカル(OHラジカルやHO2ラジカルなど)が、有色物質の結合部分から電子を奪い、結合を解離することで無色化します。 

 

 

 

② 光の散乱性の変化(表層マスキング作用)

過酸化水素には歯質の微細構造を変化させる効果もあります。エナメル質表層における光の散乱の増加と、エナメル質・象牙質における光の屈折率の変化により、光の散乱性が変化することで「歯を白く見せる」作用もあります。

 

ホワイトニング効果には個人差がある

ホワイトニング効果には個人差があり、要因として患者さんの年齢や歯の色調、バンディングの有無などが挙げられます。

 

一般的に、薬剤が浸透しやすい若年者は高齢者よりも効果発現が早く、着色物質の分子量が大きい暖色系の歯は寒色系の歯よりもホワイトニング効果を感じやすいといえます。また、バンドなしの一様な変色では全体がほぼ均一に漂白されますが、バンドありの場合、歯頸部付近はエナメル質が薄く表層マスキング作用が得られにくいため、完全に取り除くのは非常に困難です。

 

医療ホワイトニング施術における注意点

医療ホワイトニング直後は、エナメル質の過度な脱灰を防ぐために、酸性飲食物の摂取を控えるよう指導する必要があります。また、副作用として知覚過敏症状が挙げられます。可逆性の症状ですが、対処法の指示を適確に行う必要があります。

 

医療ホワイトニングで知覚過敏が生じるしくみ

エナメル質表層にホワイトニング剤を塗布すると、薬剤は徐々に象牙質内まで浸透していきます。

 

すると象牙細管内では浸透圧により細管内液の移動が起こり、象牙芽細胞突起がこの移動をひずみとして感知します。最終的に神経伝達によって痛みとして脳に送られることで知覚過敏症状を生じると考えられています。

 

硝酸カリウムは神経伝達の鈍麻作用により、フッ化ナトリウムなどのフッ化物は結晶化による象牙細管の封鎖作用により知覚過敏抑制効果を発揮します

 

 

知覚過敏症への対処法

知覚過敏抑制材には、ホームホワイトニングのカスタムトレーに薬剤を注入して装着するシリンジタイプや、薬剤があらかじめ塗布されているトレータイプがあり、いずれも15~60分間装着して使用します。

 

また、硝酸カリウムとフッ化ナトリウムが配合されている知覚過敏用歯磨剤の使用も有効です。効果の発現時期を考慮すると、知覚過敏用歯磨剤を2週間程度先行して使用した後にホワイトニングを開始し、継続して使用いただくのが良いと思います。

 

金子先生は最後に、「医療ホワイトニングは国から安全性と有効性が認められており、安心して処置に使用できる一方で、施術する歯科医師・歯科衛生士には常に知識のアップデートが求められる」と締められました。

 

 

ご登録いただいた歯科医療従事者のみなさまに、新製品のお知らせ、サンプルリクエスト、お役立ち情報などを定期的に配信しています。

 

この機会にぜひご登録をご検討ください。

 


 

LINEで送る

記事へのコメント(0)

関連記事

人気記事ランキング