義歯安定剤ガイドラインに基づく適切な使用のために〜義歯装着患者さんの満足度向上をめざして / WHITE CROSS編集部

社会の高齢化に伴い、義歯安定剤は市場への広がりを見せつつあります。義歯安定剤は、歯科医師の管理下で適切に使用することにより義歯装着患者さんの満足度の向上が期待されることから、適切な臨床判断が必要になってくると思われます。

2022年8月26日、国内外の義歯安定剤ガイドラインを踏まえ、EBM（Evidence Based Medicine）に基づいた義歯安定剤の使い方について、日本大学松戸歯学部 有床義歯補綴学講座 河相安彦先生にご講演いただきました。その内容の一部を紹介します。

高齢化に伴い需要の高まる義歯安定剤

近年、義歯安定剤が市場への広がりを見せている背景として長寿社会と義歯の関連性が挙げられます。顕著な顎堤吸収や口腔乾燥症の患者、訪問歯科診療を受ける患者が増加したことから、歯科医師の管理下において義歯安定剤が適切に使用され、義歯の満足度の向上につながっている可能性が考えられます。河相先生は、義歯に不満を感じている患者さんは満足している患者さんの約3倍、義歯安定剤を使用しており、一方で義歯に満足している患者さんも半数近くは義歯安定剤を使用しているという報告^1）もあることをご紹介されました。

_{1）Divaris K et al. Int J Prosthodont. 2012 Mar-Apr; 25（2）:145-7.}

「義歯安定剤に関するガイドライン」のポイント

義歯安定剤は、1999年に補綴専門医に対するデルファイ法を用いた調査が行われ、4つのコンセンサスが得られています。

また2019年には「義歯安定剤に関するガイドライン^2）」が作成されました。

ガイドラインには、患者さんの満足度に主軸を置いて考えることや、義歯の維持が高まると快適性が増し患者さんの幸福度が高まること、義歯自体の問題は義歯安定剤では解決できないことなどが記されています。しかし、患者さんの中には義歯自体に問題があっても義歯の新製作や調整ができない方もいるため、今後の義歯安定剤の位置づけは注視していく必要があると河相先生はご講演されました。

次の図はガイドラインを基にまとめた適切なケアの方法を示しています。

これらの4つのケアは基本的なことであり、しっかりと押さえておきたいポイントです。

_{2）https://www.dentalhealth.org/dentureadhesives Denture adhesives guidelines Oral Health foundation 2019 （2022年9月21日参照）}

義歯安定剤に関するエビデンス

義歯安定剤は、これまでに「義歯の維持力」、「安定（咬合力）」、「咀嚼効率」、「口腔衛生」、「患者満足度」のエビデンスが発表されています。

　・義歯の維持力・安定（咬合力）：義歯安定剤塗布後1時間から義歯の維持力が高まり安定する^3）

　・咀嚼効率：義歯安定剤の使用により咀嚼サイクル時間が短くなり咀嚼効率が高まる^4）

　・口腔衛生：義歯安定剤使用による唾液中細菌数の増加は認められていないが義歯におけるバイオフィルムの増殖は見られる為^5）　、使用後の洗浄が重要

　・患者満足度：義歯装着患者さんの満足度が高まった^4）

以上のことを踏まえ、例えば義歯が安定した状態で食事をとるためには食事の1時間前に義歯安定剤を塗布した義歯を装着するよう指導することや1日使用したら義歯を清潔に保つよう指導することが望ましいと河相先生は述べられました。

_{3）Varghese R et al. Clin Exp Dent Res. 2019 May; 5(3):276-83.}

_{4）Gonçalves TM et al. Int J Prosthodont 2014 Mar-Apr; 27(2):140-6.}

_{5）Leite AR et al. J Prosthet Dent. 2014 Aug; 112(2):349-56.}

義歯安定剤の使用判断は患者さんの状態を見極めて

高齢化によって、義歯を装着する患者さんにも口腔乾燥や介助者の有無などの多様性が見込まれます。そのため、患者さん一人ひとりの状態を見極め、義歯安定剤の適不適も含めた適切な指導を行っていくことがより必要とされます。

河相先生は最後に、義歯安定剤の使用によって維持力、咬合力、咀嚼効率の改善が認められていることから、今後は患者個別の情報から義歯安定剤使用の予後を予測することが研究課題として重要であると述べられました。

クリームタイプの義歯安定剤　新ポリグリップ

本ウェブ講演会のより詳しい詳細については、こちらのダイジェスト版動画よりご視聴いただけます。（※視聴にはGSKヘルスパートナーの登録が必要です。）

またGSKヘルスパートナーではご登録いただいた歯科医療従事者のみなさまに、新製品のお知らせ、義歯安定剤を含むサンプルリクエストの受付、お役立ち情報などを定期的に配信しています。

この機会にぜひご登録をご検討ください。