義歯安定剤の有用性と、指導において知っておくべきポイント / WHITE CROSS編集部

現在、義歯安定剤は広く使われており、2021年には国内年間販売金額が147億円1)に達しています。ニーズが高まったことから、きちんと患者さんに指導できる知識と技術が歯科医療従事者に求められていると言えます。

 

そこで、2022年4月25日に開催されたWeb講演会において、「義歯安定剤を患者さんに薦める前に知っておくべきポイント」と題し、東京歯科大学老年歯科補綴学講座の上田貴之先生にご講演いただきました。その内容を一部ご紹介します。

 

1)インテージSRI+ 義歯洗浄剤・義歯安定剤市場 2021年 販売金額

 

市場で最も取り扱いの多いクリームタイプ

義歯安定剤はホームリライナー(クッションタイプ)と粘着剤に分類されます。

 

ホームリライナーは長期連用が難しく、応急的に使う材料と言えます。粘着剤は表の3種類に分類されます。とくに使用されるのがクリームタイプで、国内の販売の約7割を占めています1)

 

 

義歯安定剤の効果を示す、近年の研究報告

義歯安定剤は、一般的に義歯の維持力・安定性(水平抗力)・均衡(抗回転力)の向上や、床下への食片侵入防止による粘膜保護に役立つとされています。

 

加えて、クリームタイプは咀嚼力の向上や動揺の軽減2)咀嚼能率の向上3)に関する研究結果や、義歯安定剤による義歯の快適性4)満足度の向上5)に関する研究結果も報告されています。

 

また、口腔機能が低下した症例や、問題なく機能している患者さんにおける満足度・咀嚼力の向上に対する効果もあり、QOL向上のツールとして役立つと、上田先生はご講演でお話しされました。

 

2) Munoz CA et al. J Prosthodont. 2012 Feb; 21(2): 123-9.

3) de Oliveira Junior NM et al. J Prosthet Dent. 2014 Nov; 112(5): 1182-7.

4) Kelsey CC, Lang BR, Wang RF. J Am Dent Assoc. 1997 Nov; 128(11): 1532-8.

5) Atassi M et al. Clin Exp Dent Res. 2019 Jun 17; 5(4): 316-325.

 

部分入れ歯(パーシャルデンチャー)への有用性も注目すべき点です。

 

部分入れ歯はクラスプ(支台装置)があるため脱落が生じにくいのですが、少々ズレたり、細かい食べ物が床下に入ったりすると不快感が生じます。義歯安定剤はそれらを防ぎ、部分入れ歯の使用に関する満足度の向上を目指すことができます

 

使用の際は少なめを意識

粘着剤を使う際には少なめの量を意識するのが望ましいと、上田先生は仰っています。

クリームタイプは小豆の粒程度で十分で、その量で維持力が得られなければ義歯のリラインを要するそうです。パウダータイプは1回洗ってから水を少し払い、その上に義歯安定剤をかけます。その粉を振り払うと、適度な量になります。

※クリームタイプ・パウダータイプの場合

 

患者さんの生活にあわせた選択を

タイプの選択の際には、患者さんの生活にあわせることが大切です。たとえばクリームタイプやシートタイプは比較的作用時間が長く、終日の外出が多い場合に薦められます。パウダータイプは洗いやすいため、介護の現場で薦められます。

それぞれに利点・欠点があるため、複数を使い分けるのもひとつの考え方です。

 

患者さんからは、「自分に適した義歯安定剤を具体的に教えて欲しい」というご要望が多いそうです。「義歯安定剤を使っていいのですか?」という患者さんに「困ったら使ってもいいですよ」と答えるだけではなく、患者さんのニーズに合ったものまできちんと伝える重要性を、上田先生はご講演で強調されました。

 

クリームタイプの義歯安定剤 新ポリグリップ

 

本ウェブ講演会のより詳しい詳細については、こちらのダイジェスト版動画よりご視聴いただけます。(※視聴にはGSKヘルスパートナーの登録が必要です。)

 

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