【特別対談】 矯正と補綴の治療計画をシームレスに〜インビザライン・スマイルアーキテクトの活用法と可能性〜 / WHITE CROSS編集部

この記事のポイント

・「インビザライン・スマイルアーキテクト」は、矯正と補綴それぞれの治療計画を単一のプラットフォームで視覚化できるソフトウェア。

・臨床現場でインビザライン・スマイルアーキテクトを活用する2人の先生にインタビューし、その活用法や実際の症例を供覧する。

・後半では、インビザライン・スマイルアーキテクトを活用するメリットや今後の展望について解説。

 

この記事は、矯正>マウスピース矯正

 

 

【対談】インビザライン・スマイルアーキテクトの活用法と可能性

矯正と補綴それぞれの治療計画を単一のプラットフォームで視覚化できる、スマイルデザイン用ソフトウェア「インビザライン・スマイルアーキテクト(以下、スマイルアーキテクト)」。

 

インビザラインユーザーの先生方はもうお使いになられましたか?

 

今回は、実際に診療で活用されているお二人の先生に、その具体的な活用方法と可能性についてご紹介いただきました。

 

山根茂樹先生

マナミ歯科クリニック 院長
銀座並木通り歯科 院長
インビザライン Goドクター

 

植田憲太郎先生

医療法人 UDC 理事長 

HANA Intelligence 歯科・矯正歯科 総合治療ディレクター

インビザライン・ドクター

 

なお、本資料にて示される臨床情報および推奨される内容については、インビザライン・システムを使用する一歯科医師の立場における個人的な見解に基づくものであり、必ずしもアライン・テクノロジー社の正式な会社方針を正確に反映するものではありません。また、それらはあくまで一般的な情報提供に過ぎず、本資料にて示される臨床情報および推奨される内容を実際に臨床応用されるか否かについては、あくまで担当医個々人の個人的裁量、判断、責任に委ねられるべきものです。

 

写真左:植田憲太郎先生 写真右:山根茂樹先生

 

インビザライン・スマイルアーキテクトとは?

インビザライン・スマイルアーキテクトは、矯正治療と補綴治療の両方を一つの治療計画で視覚化できるスマイルデザイン用のソフトウェアです。

 

インビザライン・スマイルアーキテクトは、高い治療満足度と治療成果をお届けするのに役立ちます。

 

インビザライン・スマイルアーキテクト 実際の画面

 

 臨床現場におけるスマイルアーキテクトの活用方法

ーー山根先生は、インビザライン・スマイルアーキテクトを、どのような場面で活用されていますか

山根先生(以下、山根):当院(銀座並木通り歯科)は、矯正専門の施設ではありませんので、一般歯科のいろいろな訴えを持った患者さんが来院されます。

 

その中で、より良い治療のゴールを目指すために、矯正治療が有効な手段であることを患者さんにお伝えします。具体的には、補綴治療やインプラント治療を組み合わせた場合の治療のゴールを患者さんに説明する際に、インビザライン・スマイルアーキテクトを使っていますね。

 

山根茂樹先生

 

 

ーー植田先生は、どのような場面で活用されていますか

植田先生(以下、植田):当院は、一般歯科でありながら、矯正治療を希望されて来院される患者さんも多く、全顎の矯正治療を行う方が患者数の半数以上いらっしゃいます。

 

そのため、矯正治療を目的に来院された患者さんに対して、歯並びを良くするだけではなく、補綴治療や修復治療も必要であることをお示しするためにスマイルアーキテクトを使っています。

 

植田憲太郎先生

 

スマイルアーキテクトを活用した3症例

【症例1】山根先生のインビザライン・スマイルアーキテクト臨床応用例:前歯部審美障害、前歯部咬耗の症例  

 

【症例1】口腔内写真

 

山根:こちらの患者さんは、定期健診で来院され、下顎前歯部舌側の叢生部に歯石が付いてしまうとのことでした。また、前歯部の見た目も気にされており、将来的にセラミック矯正を考えていらっしゃいました。

 

そこで私は、「矯正治療によりメインテナンスをしやすくする」かつ「摩耗を避けるために前歯のカップリングを獲得し、最小限の歯質削合で薄いセラミック修復治療をすること」を、スマイルアーキテクトを使って提案しました。また、歯頚ラインを少し上げ、前歯部切端の長さを整え、下唇のラインに平行にスマイルラインを作ることを目指す治療計画も合わせてご提案しました。

 

また、歯頚ラインを少し上げ、前歯部切端の長さを整えることで、下唇のラインと平行にスマイルラインを作ることを目指す治療計画も併せてご提案しました。

 

【症例1】インビザライン・スマイルアーチテクトによる、顔貌と歯並びのシミュレーション

 

以前は、診断用ワックスアップを用いてこういった治療計画の説明をしていました。しかし診断用ワックスアップでは、患者さんは普段どの位置まで唇が上がっていて、前歯がどのようにみえているかまではわかりません。

 

スマイルアーキテクトでは、矯正治療後の歯並びだけでなく、セラミック修復治療をした際の顔貌の見え方も具体的に示せるので、患者さんが治療に納得されることが多くなりました。

 

植田:歯科医師は、どうしても一つひとつの歯を見てしまいがちですが、患者さんは自分の顔との調和を望まれています。スマイルアーキテクトを使用するようになって、以前の診断の時に考えていた着眼点とは違うところからスタートできるようになっていますよね。

 

山根:スマイルアーキテクトでは、補綴修復前の矯正治療をしないで補綴治療をする場合に必要な削合量、あるいは追加量のイメージを示せます。一方で、補綴修復前に矯正治療をすることで、削合量や追加量を減らすことができるということも示せます。

 

薄く削って薄い被せ物を入れるということは、我々歯科医師にとって、より技量が問われる治療になります。しかし患者さんにとっては、歯の持ちが良くなるだけでなく、近年の接着技術の進歩を考えても、できるだけエナメル質を残しておくということは大きな意味があるのです。

 

【症例1】インビザライン・スマイルアーキテクト「歯牙解析ツール」によるシミュレーション

 

スマイルアーキテクトでは、患者さんの顔に瞳孔間線を引いて、口角のラインとのバランスをみることもできます。歯の形を修正することもできるという点を合わせると、デジタル版の診断用ワックスアップとして使えるのではないかと感じています。

 

治療計画の画面上で患者さんに気に入ってもらえれば、その形をSTLデータとしてエクスポートして補綴設計を行うこともできるのです。

 

植田:顔貌をみながら歯の形のイメージを変えていくという点で明らかに優れていますよね。

 

山根:そうですね。顔貌に調和させてインサイザルエッジポジションなども細かく調整でき、チェアサイドでイメージ見せられる点が大きなメリットだと思います。

 

実際に患者さんにお見せすると、「こんなことまでできるんだ」と感動されます。その感動が、その歯科医院に対して、「矯正治療や補綴治療を全て任せていいんだ」という安心感に繋がっているように思います。

 

本症例は、現在矯正治療中で補綴治療までは至っていません。矯正治療が終わったところで、最終的なクラウンレングスニングに向けて前歯部のトリミングラインを確認し、参考としてSTLデータも起こそうと思っています。

 

植田:スマイルアーキテクトで、歯肉ラインのイメージを修正できることを体験したときは衝撃的でしたね。ここまでの機能が矯正のソフトウェアに入るというのは本当に便利です。

 

山根:ひと昔前と比べて、矯正治療と補綴治療のデジタルツールがここまで近づいてきていますね。ツールとしての完成度の高さを感じます。

 

 

【症例2】山根先生のインビザライン・スマイルアーキテクトがあれば良かった臨床例:前歯部の審美障害、前歯部咬耗の症例/iTeroで補綴物作製のためのスキャンを実施

【症例2】口腔内写真

 

山根:本症例は、スマイルアーキテクトがまだリリースされていなかったときのものです。スマイルアーキテクトがあれば活用したかった症例としてご紹介します。本症例は、前歯部のカップリングがとられておらず、切端咬合のために前歯部の審美障害を起こしていました。患者さんは、前歯の削れてしまった歯牙にセラミックを被せることを希望されていました。

 

植田:こんなケースこそ、スマイルアーキテクトのシュミレーションを見せてあげると、矯正治療の必要性を理解していただきやすくなりますよね。

 

山根:そうなんです。このときは、スマイルアーキテクトがなかったので、矯正だけのクリンチェック治療計画で説明しました。「前歯部のカップリングがとれた状態にすることで、歯の削合量を減らすことができ、補綴物も長持ちします」と。いま、前歯が摩耗してしまっているのはカップリングが得られていない切端咬合だからということもお示ししました。

 

最終的には、カップリングが得られたら、フルクラウンではなく、ベニアで歯の形態を整えることができることをご説明し、矯正治療に納得してもらうことができました。

 

山根:今回、矯正治療を提案させてもらったこの患者さんには、あえて模型を作らずに、すべてデジタルで補綴治療までを完結させることにしました。そのため、補綴はベニアですが、CADとブロックの削り出しで作製してみたんです。

 

iTeroで補綴のスキャンをする際には、縁下のマージンの位置によっては読み取りにくい部分が出てくることに留意が必要です。また、圧排糸をしっかりと入れ、半導体レーザーや炭酸ガスレーザーを使ってきれいにトリミングをし、外科的な圧排や二重圧排を用いてマージンをしっかり出しておくということが重要です。

 

補綴のデザインを患者さんに示し、実際に作製したものが下記の写真です。

 

正直なところ、私の中ではまだデジタルをフル活用した自らの補綴治療には、十分に満足できる段階まで至っていません。しかし、今後デジタルをどこまで駆使して、どのような素材で作っていくのか、スマイルアーキテクトを使いながら検討していきたいと思っています。

 

【症例2】ベニア設計と作製

 

【症例2】術前、矯正治療後、補綴治療後の口腔内写真

 

植田:私もスマイルアーキテクトがリリースされる前からデジタルを使った補綴治療に取り組んでいました。しかし、デジタルで補綴治療をしようと思うと、どうしても削合量を多くして、マージンをしっかり出してからスキャンをする必要がありました。

 

本症例をご紹介いただいて、スマイルアーキテクトを使ってデジタルで最初にセットアップしていれば、形成量をある程度把握でき、削合量を減らしていけるのではないかと思いました。デジタルの補綴治療がこのような新しいツールの登場で進化していくという実感を得ることができました。

 

山根:私たちにとって補綴治療はどうしても避けて通れません。矯正治療は、より良い補綴治療や修復治療を行うための手段の一つなのです。矯正治療によってできるだけ削合量を少なくしようと思っても、デジタルにこだわって削合量が増えてしまえば本末転倒です。症例によっては新しいデジタルツールを使って模型レスの治療を進化させていく必要もあるのだと思います。

 

 

【症例3】植田先生のインビザライン・スマイルアーキテクト臨床応用例:欠損部位のスペースコントロールが必要な症例

【症例3】口腔内写真

 

植田:当院にも、全顎的な矯正治療と補綴治療を組み合わせていく必要がある患者さんが多く来院されます。これまでは、矯正治療も補綴治療もデジタルでセットアップする場合、色々なソフトウェアを組み合わせる必要があり、うまく連携させていくことは簡単ではありませんでした。今回、スマイルアーキテクトが登場したことでその課題が解決されたことを実感したのがこの症例です。

 

本症例は、先天的に欠損があり、乳歯も残存していてその下に永久歯がなく、どこにどの歯があったのかさえわからないような状態でした。これまでなら、このような矯正治療と補綴治療の両方が必要な治療計画を患者さんに説明することはかなりむずかしかったと思います。

 

スマイルアーキテクトを使ってシミュレーションした結果が、下記の写真です。最終的な補綴治療のために、歯牙がここにあればいいんだというのが一目瞭然ですよね。

 

【症例3】 インビザライン・スマイルアーキテクトによる、顔貌と顔貌と歯並びのシミュレーション

 

スマイルアーキテクトを使うと、最終補綴のデザインに対して歯がどのように移動していくのかを見ることができ、歯の移動の難易度を判断することもできます。

 

この症例では、インプラントをどこに埋入するかもポイントになりますが、上部構造の補綴物を治療計画上で表示することができるため、埋入位置が自ずと決まってきます。

 

インプラントは早く埋入することで、それをアンカーとして使って他の歯を配列していくことができます。スマイルアーキテクトで歯の動きを見ることで、移動量が少ない歯を基準にしてインプラントの埋入位置を決めることができ、他の移動量が多い歯をどのようにコントロールしていけばいいのかを考えやすくなるのです。

 

このように、スマイルアーキテクトは、前歯だけではなく、臼歯部に補綴物を表示させて歯の移動や修復を考える際にも有用です。

 

【症例3】インビザライン・スマイルアーキテクトによる、歯の最終位置の考察

 

そして、スマイルアーキテクトからエクスポートしたSTLデータをインプラントのガイドソフトに取り込み、インプラント埋入位置を決定した上で、ガイドを作って埋入しました。

 

【症例3】CBCTのDICOMデータとインビザライン・スマイルアーキテクトのSTLデータを重ね合わせ、インプラントポジションを考察し、サージカルテンプレートを作製

 

山根:矯正治療前に、矯正治療後を想定した位置にインプラントを入れようとしたとき、インプラントが入った状態のSTLデータを重ねる時のリファレンスポイントがむずかしくなります。基本的には、リファレンスポイントを不動点にしないと画像には重ね合わせができないですよね。

 

植田:そうですね。歯科技工士と話し合い、「歯牙移動表」を見ながらミリ数を計算して、がんばってマニュアル操作で重ね合わせを行いました。次回からは、事前に不動点を3つ程度決めて、しっかりとリファレンスポイントを作ろうと思います。本症例では、ほぼ想定通りの位置にインプラントの埋入をすることができました。

 

スマイルアーキテクトでは、上部構造のイメージが表示されているSTLデータを取り出せることで、補綴やインプラント用のソフトに取り込みやすくなったと感じています。

 

山根:矯正治療と欠損補綴が絡むこのような症例では、スマイルアーキテクトで矯正治療と補綴治療の術後イメージをみることで、どの位置まで歯を動かす必要があるのか、どこにインプラントを埋入すれば良いのかなどがわかってゴールまでの距離がわかりやすくなるのだと思います。

 

植田:実際、インプラントを埋入するところまでもやりやすかったです。今回は、左上4番にインプラントが埋入されたことで、左上3番をすぐに引いていけばいいですし、下顎6番や、遠心移動させる小臼歯も上に作ったインプラントに集めるような方法で並べることができました。

 

【症例3】口腔内写真

 

山根:歯科医師の間で、矯正治療が先かインプラントが先かよく議論になりますが、スマイルアーキテクトがあれば、矯正治療前のインプラント埋入に自信を持って決定できるようになりますね。

 

植田:やはり基本は、補綴修復前の矯正治療ですね。最終的に上部構造が入るまでにインプラントを入れて不動点を作って、補綴物の位置の確定までに歯の位置を動かす必要がありますが、スマイルアーキテクトによるシミュレーションを使えばそれがスムーズにやりやすくなります。

 

 スマイルアーキテクトを活用するメリットと今後の展望は

ーースマイルアーキテクトを活用することで、どのような変化がありましたか?

山根:患者さんにとって複雑な治療計画がわかりやすくなりました。そして歯科医師にとっては、削合量がイメージしやすいという利点がすぐに思いつきますが、植田先生はより包括的にスマイルアーキテクトを応用して治療計画を立てられており、参考になりました。

 

植田:当院の若い歯科医師たちにとっては、矯正治療も補綴治療も反映したイメージを動かしながら見られることで、治療計画を確認しやすくなったと思います。

 

山根:歯科医師同士、意思の疎通がしやすくなりますよね。いま、歯科領域でもアナログからデジタルへの大きな流れが生まれている中で、デジタルの最新技術を使ってスマートに治療をしているということ自体が楽しいです。一度使って、そのメリットを享受してしまったら、もう手放せなくなってしまいますね。

 

植田:歯科治療は最初の治療計画がとても重要であるという点も、このようなデジタル技術によるシミュレーションが重宝される理由だと思います。このような包括的な歯科治療をサポートするデジタル技術が進歩していけば、より自然な治療のために私たち歯科医師ができることがもっと増えてくるのだと思います。

 

 

ーーインビザライン・スマイルアーキテクトにおける今後の展望をお聞かせください

山根:患者さんと共有された治療ゴールが最終的な補綴に正確に反映されるように、最終的な補綴の形態もSTLデータに起こし、モップアップのようなプロビジョナルとして使えるようなものに変化させられる、さらには最終的な治療ゴールもデジタルで作れるなど、補綴治療のデジタル化が実現していくと良いですね。

 

植田:そうですね。最初に作ったデータがいかに補綴にまで活用できるかというのがポイントだと思います。スマイルアーキテクトが、担当医だけではなく、歯科技工士や他の専門医も同じ患者の情報を見られるようになると、補綴治療の底上げにも繋がっていくのではないでしょうか。

 

 

ーーインビザライン・スマイルアーキテクトの使用を検討されている先生方へ、メッセージをお願いします

山根:スマイルアーキテクトを使うことで、これまで独立していた矯正や補綴など複数の治療を組み合わせた患者さんへのコンサルテーション、そして治療ゴールの共有が容易になります。

 

治療の完成度が上がりますから、当然、患者さんの満足度も高まります。スマイルアーキテクトは、直感的に使えますので、ぜひ先生方の治療にご活用いただければと思います。

 

植田:スマイルアーキテクトは、矯正治療に全顎的な補綴治療を伴うような症例やインプラント治療を伴う症例、複雑な補綴治療が必要な症例などにかなり活用できると思います。スマイルアーキテクトを使えば、補綴する歯をいくつでも選択した上で治療計画を表示させることができ、それを参考にしながら、直感的に不動点を作っていく、歯を動かしていくということができます。ぜひ多くの先生方に使っていただきたいですね。

 

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この記事は、矯正>マウスピース矯正

 

執筆者

WHITE CROSS編集部

WHITE CROSS編集部

臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・歯科関連企業出身者などの歯科医療従事者を中心に構成されており、 専門家の目線で多数の記事を執筆している。数多くの取材経験を通して得たネットワークをもとに、 歯科医療界の役に立つ情報を発信中。

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