まだ始めていないんですか?お口からの感染予防 / 宮本 日出

 こんにちは、歯科医師の宮本日出です。

 

コロナ禍でどの医院様も大変な日々をお過ごしと思います。この度、そんな皆さまの一助になればと思い一冊の本を上梓しましたので、ご紹介いたします。

 

 

1. この書籍のコンセプト

新型コロナウイルス(COVID-19)をはじめ、感染症や口腔・歯についての医療情報が満載!「読みやすく、知ってお得、知らなきゃ損」という感覚で、普段は口腔の健康について意識をお持ちでない方にも手に取ってもらいやすい、そうしたコンセプトで出版した「口腔の最新情報」を紹介した書籍です。

 

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックにより、緊急事態宣言が発令され、歯科医院への通院(治療)を控えられた方が数多くいました。これは歯科医療の大切さが、国民の方々に浸透していないことの表れの一つだと考えました。

 

歯科医療業界で働く私たちにとっては、口腔環境が全身にさまざまな影響を与えることは、既に常識です。しかし一般の方々にとっては、まだまだ知られていません。

 

この書籍では、新型コロナウイルス(COVID-19)をはじめ、ウイルスや細菌の感染予防対策において、口腔環境へのアプローチの大切さを伝えたいと想い著しました。また口腔にまつわる色々なエピソードを知っていただくことで、口腔にもっと興味を持ってもらえるようにしたい、という点も留意しました。

 

医療従事者の方には物足りない面はありますが、『わかりやすい』『読みやすい』『面白い』をテーマに文章を構成したため、専門用語は極力使用しませんでした。また文章を、簡潔に短くするとともに、思わず話したくなるエピソードも豊富に盛り込みました。医療情報書籍ですが、コラムのように一気に読めるよう工夫しました。

 

 

 

2. 想定読者

働き盛りの方が「なるほど〜」から、思わず「クスッ」と笑え、人に話したくなるというストーリーを描き、話題を厳選しました!

 

読者の想定は、30歳代〜50歳代です。つまり、働き盛りの方をメイン読者として想定しました。これらの方には、子育て中の方もいらっしゃいます。また、ご両親は高齢者の層に入ります。つまり、自分自身だけを想定した内容ではありません。お子さんに当てはめても必要な情報、ご両親にとっても必要な情報を、意識して多く盛り込みました。

 

旬なキーワードを多く使用し、『今』使える情報を厳選しました。新しい生活様式の戸惑いの中で、不安を感じている方も少なくありません。この書籍を通して、少しでも不安を払拭し、リラックスしてもらいたいと考えました。

「なるほど〜」と納得してもらえる内容から、思わず「クスッ」と笑える話題まで多数あります。人に話したくなる「そんなお話」も、満載しています。

 

 

3. 現在のコロナ禍で特に訴えたい箇所(本文から)を2か所!

【新型コロナウイルスはお口から侵入する!】

新型コロナウイルス(COVID-19)は飛沫感染で、口腔からの感染が始まるリスクがとても高いのです。

 

 

新型コロナウイルス(COVID-19)は、体の表面にある専用の受容体と結合して、感染が始まります。この専用の受容体は、ACE2受容体(angiotensin-converting enzymeⅡ)です。ACE2受容体は、心臓や腎臓、精巣、肺、肝臓など体のさまざまなところにあることが知られていました。2020年2月発表の研究で、ACE2受容体は、口腔粘膜、特に舌の表面に多くあることがわかりました。

つまり、新型コロナウイルス(COVID-19)を含んだ唾液が直接的あるいは間接的に口腔内に入り、舌表面のACE2受容体と結合して、感染が始める可能性がとても高いのです。

 

【歯周病がウイルスを体内に入れる】

口腔環境の悪化が、ウイルスの侵入や体内での拡散に影響を与えます。口腔ケアにより、ウイルス感染予防ができます。

 

ウイルスが口腔内に入っただけでは、感染しないようになっています。ウイルス受容体は、タンパク質でできた膜で覆われています。この膜が、ウイルスが受容体と結合することを、防いでいます。

しかし歯周病があると、ウイルスと受容体は結合しやすくなります。つまり歯周病があると、ウイルス感染しやすくなります。歯周病菌が産出する強力なタンパク質分解酵素が、この膜を分解してしまうからです。

 

体内に入ったウイルスは、口腔内細菌により拡散されます。ウイルスの運動を活発にさせ、感染した細胞が、新しいウイルスを産出するのです。

しかし定期的に口腔ケアを受けていると、ウイルス感染リスクを低減できることができます。

 

この2つのトピックからも感じていただける通り、この書籍で貫くメッセージは「歯科医院に、定期的に通ってください!」という部分です。

 

歯周病もムシ歯も、完治しません。またさまざまな感染症の予防、全身の健康にも口腔内の健康が大きくかかわっています。だから歯科医院で、定期的に口腔ケアを受けてもらいたいです。歯科医院で行うプロフェッショナルケアと、ご自身で行うセルフケアの協働治療が「予防歯科」です。これを多くの働き盛りの方に知っていただくことが、この書籍のミッションであると考えています。

 

 

 

4. 歯科医師に伝えたいこと

歯科医療の専門家である歯科医師の皆様にとっては、当然の内容ですので、ご自身の情報収集で読まれる必要はないと思います。

しかし、この書籍は、私自身の留学経験、海外の歯科医師との交流など、直接、現地でしか得られない情報や、TV出演や、新聞・雑誌・Webへの掲載活動を通して得られた内容も(話せる範囲で)できるだけ面白く感じるようにご紹介しています。

 

こうした教科書には載っていない切り口を、エピソードを交え、わかりやすく書いていますので、ちょいネタやトークの引き出しとして、お役に立つ部分もあるかもしれません。

 

感染症、バイオフィルム、ホワイトニング、口腔ケア、口臭、顎関節症、口腔がん、ダイエットなど簡単なエピソードとして紹介していますが、多くの国内外の研究論文や調査が、情報の「ネタ元」となっています。

 

患者さんにとっては、敷居が高く、緊張しがちになってしまうのが歯科医院です。これらの話題を通して、患者さんの気持ちをほぐしていただいたり、患者さんとの距離が近くなったり、良いコミュニケーションにお役立ていただければと思います。

 

 

5. 発刊に込めた思い

われわれ歯科医療人は、歯科医療を通して、日本国民に「幸せな暮らし」をご提供しようと日夜努力しています。

 

「日本国民の全てが、かかりつけ歯科医を持ち、定期的に歯科医院に通い、口腔の健康を保ち、生活を充実させ、『幸せな暮らし』を手に入れる」この書籍が、全国の歯科医療人のミッション実現の一助になれば嬉しい限りです。

 

 

心身ともに健康で、それぞれのライフステージでのイベントを楽しみ、充実した生活を送ることを『リアルライフステージ』と呼んでいます。

歯科医療には、人々をリアルライフステージにお連れする力があると考えています。口腔ケアはバイオフィルム感染症治療・予防として、全身の健康に影響を与えます。口腔ケアは、「感染症」「習慣病」「全身疾患」の対策になります。口腔環境を整えることで、「食べる喜び」「話す楽しさ」「笑う幸せ」を感じ、活気ある社会に貢献します。

国民をリアルライフステージにお迎えできるように、われわれが歯科医療を通して、お手伝いさせていただきましょう。

 

また、歯科医療の先進国アメリカでは、「Best Jobs 2020」のベスト100位に、歯科医師、歯科衛生士、歯科助手など、すべての職種がランキングされています。特に、一般歯科医が2位、矯正医が4位、口腔外科医が9位です。歯科医療は、とても誇りある職業です。

そんなアメリカでは、人口当たりの歯科医師数は、日本の2倍にもなります。日本では、歯科医師過剰問題が取り上げられています。しかしアメリカをみると、現状では歯科医師過剰とは言えません。わが国でも、歯科医療はヘルスケアの最前線に位置しています。

歯科医療の価値をもっともっと国民のみなさんに理解いただくことで、われわれが活躍する場はまだまだ広がることと思います。

多くの歯科医療人と力を合わせて、国民医療と業界の発展に貢献したいと考えます。

 

執筆者

宮本 日出の画像です

宮本 日出

歯科医師・歯学博士

幸町歯科口腔外科医院 院長

1990年愛知学院大学歯学部卒業後、石川県立中央病院歯科口腔外科入職。北陸初の顎関節症造影検査や内視鏡手術を導入、200以上の手術症例を担当する傍ら、症例報告や臨床研究を積み重ね、25歳で論文を発表。28歳でアメリカの一流学会誌『Journal of Oral & Maxillofacial Surgery』に自身の論文が掲載される。その後、アデレード大学、明海大学で口腔外科最先端医療の臨床的、基礎的研究に従事し、アメリカ、イギリス、オランダ、ドイツ、オーストラリア、日本で160を超える論文を発表。愛知学院大学では歴代2例目、歯学部では初めてとなる英語論文での歯学博士号の学位を取得。明海大学病院顎関節疾患総合診療センター長や明海大学歯学部病態診断治療学講座口腔顎顔面外科第2分野客員講師を経て、2007年埼玉県志木市に幸町歯科口腔外科医院を開業。2015年からは埼玉医科大学麻酔科非常勤講師。2017年、立教大学大学院にてMBA取得。多数の臨床関連著書の他、『サンタはなぜ配達料をとらないのか?』(VOICE社)等、仕事論、生きかた論についての著作も執筆。多数の書籍やレクチャー・セミナーが話題を呼び、歯科業界のサンタという異名を持つ。

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