波長222nm紫外線の安全性を実証 人がいる環境でウイルスや菌の不活化が可能に / WHITE CROSS編集部

この記事のポイント

・人体正常皮膚に対する波長222nm紫外線の安全性が確認された。
・長期的な研究においても、波長222nm紫外線の悪影響はなかった。

・波長222nm紫外線の技術は、衛生環境が求められる歯科医院において安全にウイルスや菌を不活化できる。

 

はじめに

人体に有害というイメージを持たれがちな紫外線のうち、従来の殺菌光源として活用されてきた波長254nm紫外線と比較して、波長222nm紫外線の人体への安全性の高さが証明された。

 

これは神戸大学整形外科学の黒田良祐教授らのグループと、ウシオ電機株式会社の合同研究によるもの。これにより、医療機関において人体に悪影響を及ぼさずにウイルスや菌を不活化する環境の実現が可能となった。

 

波長222nmの生体透過率に有用性あり

人工的に作られた殺菌光源として波長254nmが活用されてきたが、人がいる環境で照射すると体の内部に侵入し、日焼けや皮膚がん、白内障などの原因になると言われてきた。そこで研究者らは、人体に悪影響のないとされる波長200nm~230nm紫外線のうち、波長222nmの安全性を研究した。


研究では、マウスに対して波長254nmと波長222nmの紫外線をそれぞれ157mJ/cm2照射した。その結果、波長254nmにおいてはDNAの損傷を示すシクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)、6-4型光産物(6-4 PP)の発生を確認したが、波長222nmにおいてこれらは確認されなかった(図1)。



図1 マウス皮膚におけるUVC誘発性のDNA障害の発生データ

 

人体への臨床試験では、健常者に対して波長222nmの紫外線を500mJ/cm2以下照射し、照射終了後24時間における、紫外線による急性障害として重要な所見である皮膚紅斑の有無を調べた。

その結果、波長222nmを500mJ/cm2照射してもすべての被験者においてそれが認められなかった。一方で従来の波長254nmの場合は10mJ/cm2程度の最小紅斑量の確認が報告された(図2)。


研究者らは、波長222nmの安全性の理由は、波長222nmの生体に対する透過率の低さによるものであると明らかにしている。

図2 健常者における波長222nm紫外線照射試験

 

長期的な影響

長期照射に対する安全性については、神戸大学皮膚科学の錦織教授らのグループらによる研究が行われた。

研究では、紫外線感受性が高く、野生型マウスに比べて約10,000倍皮膚がんになりやすいと言われている色素乾皮症A群モデルマウス(Xpaノックアウトマウス)に対し、波長222nmを繰り返し照射した。対照群には、太陽光中の皮膚がんを起こす波長(280〜315nm)を照射した。

 

その結果、対照群ではすべてのマウスに皮膚がんが発生したのに対し、波長222nm照射群では皮膚がんがまったく発生しなかった(図3)

 

図3 波長280〜315nm(左)と、波長222nm(右)の紫外線照射による皮膚がんの発生経過。

ノックアウトマウスに0.5または1.0kJ/㎡の波長222nm紫外線を週2回、0.25kJ/㎡のUVBを週1回照射することを10週連続行った。

 

この結果は、従来の紫外線が表皮の基底層まで到達することで幹細胞のDNAを損傷させるが、波長222nm紫外線は表皮の表層までしか到達しないという実験結果と一致している*1

 

図4 紫外線照射により生じたマウス背部皮膚のDNA損傷(254nm-UVC)

 

同様に、眼の長期的安全性も確認された。対称群では角膜の損傷や白内障などの影響が出たのに対し、波長222nm紫外線照射群では異常が確認されなかった。

 

衛生環境が求められている歯科医院での活用が有効

波長222nmは安全性に加え、波長254nmと同様に広範囲のウイルスや菌を不活化することが、弘前大学の中根教授らの研究グループによって報告された*2

 

注目すべきなのが、従来の紫外線では不活化の難しいとされる芽胞に対し、人体に安全な波長222nm紫外線は効果的であるという研究結果だ。

さらに、エアロゾル中のインフルエンザ等に対しての高い不活化効果も報告されている*3.4。共存を求められている新型コロナウイルスに対しては、広島大学の大毛教授らの研究グループが、波長222nm紫外線の10秒間照射で88.5%、30秒間照射で99.7%の不活化を確認している*5

 

図5 共同研究先ならびにウシオ電機でのCare222®を用いた殺菌効果実験の結果

 

 

研究者の黒田医師は、インタビューでこう述べている。

これまでにない新たな予防や治療の手段として222nm紫外線を活用するために臨床実験を行い、殺菌効果を明らかにしました。今後は手術中などの高度な衛生環境に欠かせない医療機器になることを目指しています。今後、「Care222®が利用されているスペースはクリーン」と思えるような社会になってほしいと思っています。

 

 

Care222®に関するお問合せ先

ウシオ電機株式会社

Mail.    care222_sales@ushio.co.jp

Tel.      0120-911-222(受付時間 09:00~16:00、土・日・祝日を除く)

 

 

 

 

参考文献

*1. M. Buonanno Brian Ponnaiya David Brenner etal., Germicidal Efficacy and Mammalian Skin Safety of 222-nm UV Light、Radiation Research, 187(4):493-501. 2017

*2. Narita, K. et al. 222-nm UVC inactivates a wide spectrum of microbial pathogens. J. Hosp. Infect. 105, 459-467 (2020)

*3. Welch, D. et al. Far-UVC light: A new tool to control the spread of airborne-mediated microbial diseases. Sci. Rep. 8, 2752 (2018).

*4. Buonanno, M., Welch, D., Shuryak, I. & Brenner, D. J. Far-UVC light efficiently and safely inactivates airborne human coronaviruses. Sci Rep. 24;10(1), 10285 (2020)

*5. Kitagawa, H. et al., “Effectiveness of 222-nm ultraviolet light on disinfecting SARS-CoV-2 surface contamination.,” Am. J. Infect. Control, 2020,

doi: 10.1016/j.ajic.2020.08.022.

 

執筆者

WHITE CROSS編集部

WHITE CROSS編集部

臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・歯科関連企業出身者などの歯科医療従事者を中心に構成されており、 専門家の目線で多数の記事を執筆している。数多くの取材経験を通して得たネットワークをもとに、 歯科医療界の役に立つ情報を発信中。

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