去る12月12日、総義歯治療専門歯科医師の松丸悠一先生が、2度目となるWHITE CROSSライブセミナーに登壇された。セミナーは1月13日まで期間限定で公開中。日常臨床によく遭遇する問題解決型セミナーなので、今年のセミナー納めにもおすすめしたい。

 

松丸先生は、かねてよりWHITE CROSS動画『失敗しない総義歯臨床のヒント』で総義歯臨床のテクニックを紹介している。昨年のWHITE CROSSライブセミナー登壇時には『日常臨床に活かす総義歯臨床のコツ』として、動画と同症例のファイナルまでを供覧した。

今回は、形態的ゴールをイメージしにくい総義歯臨床を成功させるために重要なキーとなる、解剖学的形態に基づいた形態イメージについてレクチャーを行った。本稿ではその一部を紹介する。

 

 

 

まず、松丸先生が旧義歯を観察する際は、咬合状態だけではなく正中も観察するという。今回のケースも上顎前歯の配列位置が右側に偏っていることがわかるが、これが日々の総義歯臨床で遭遇する大きな特徴のひとつだそうだ。

術者がきちんと正面から確認をしていると思っていても、チェアサイドの位置によって術者の目線も変わり、患者も無意識に右を向いた状態を正中だと意識しやすくなるのだという。このズレが義歯の転覆にも繋がるため、術者はまず、“右側に変位しないように正中を設定する意識” を持つことが有用だと話された。

 

総義歯臨床において厄介者とされるフラビーガム

今回のキーとなる “形態” については、明日から臨床に活かせることをテーマに、上顎義歯粘膜面、上顎義歯研磨面、下顎義歯研磨面・床縁、下顎義歯粘膜面の4つのパートに分けて紹介。

 

上顎義歯粘膜面のパートでは、はじめに、上顎前歯部に多く見られるフラビーガムを取り上げた。

 

 

フラビーガムは歯槽骨がない可動性の軟組織のみの状態だが、総義歯臨床においては「倒れるか」「倒れないか」の2つのタイプに分けられるという。そのタイプを見分け、特に「倒れる」上顎前歯部フラビーガムの場合は、唇側方向にサポートする動かないエリアを判断し、そこに床縁を適切に設定するアプローチが必要だという。松丸先生は複数のスライドを用いて、その判断基準やエリア設定について詳しく解説された。

 

意識すれば見つかる、レトロモラーパッド

講義は進み、松丸先生は、レトロモラーパッドが覆われていない義歯症例を紹介。総義歯のレトロモラーパッドは重要だと言われながら、口の中をのぞいただけでは見つけにくく模型上に表現されることも少ないという。その原因は何だろうか。

 

 

 上記の写真においても、レトロモラーパッドは確認できない。というのも、多くのレトロモラーパッドは頬部と頬粘膜、舌の脇腹に覆われて見えていないため、印象採得の際の “とり逃がし” に繋がっているという。松丸先生はこの後、同症例のレトロモラーパッドを簡単かつ明確に明示する方法を示し、ここでは “最初にのぞいた時には見えないところにあるという意識” を持っていれば確認が可能であると強調された。

 

下顎舌側はオトガイ棘を意識

セミナーの中盤からは、下顎舌側面で多く見かける形態として、臼歯部遠心に深く長く設定されている義歯形態を挙げられた。術者はその同部の形態に注力する傾向にあるという。しかしながら、義歯の維持安定を獲得し、患者の満足を得るために大切なポイントは実は舌側前方の形態であるという。

 

 

舌小帯の近くに存在するオトガイ棘は、レトロモラーパッドに比べて明確ではあるものの、よくわからない邪魔な出っ張りとして舌小帯とともに大きく避けられやすい部位であるという。そのため多くの症例で、この部分を避けた、過剰に床が狭い義歯を見かけるそうだ。

しかし、失われた組織を適切に補うという総義歯臨床の概念において、同部を大きく避けたデザインにしてはならないという。松丸先生はその理由について、オトガイ棘に関わる解剖や配慮しなければならない舌小帯の動きのポイントなども交え、丁寧に解説された。

 

質疑応答

セミナーは生放送で行われたため、全国から多数の質問がリアルタイムで寄せられた。

 

質疑応答に答える松丸先生

 

・フラビーガムのサポート、即重レジンで修正する場合、具体的にどのようなテクニックになりそうですか?動くので押さえるのが難しそうです

・有歯顎時代、骨格的に2級や3級だったんだろうなという患者さんがいます。床と人工歯の位置に違和感が出ることが多いのですが、何か対策はありますか

・個人トレーで印象とる際にはトレーにとんろとなるような穴を開けたりした方が良いのでしょうか?

・辺縁封鎖が甘いところで泡が出てくるというのは理解しやすいのですが、見えにくい部分での泡の見つけ方や封鎖が甘いときの対処を教えていただけると幸いです。

・上顎義歯で開口時、口唇圧により落ちてきてしまう場合はどのように解決すればよいのでしょうか?

・フラビーで、上顎の義歯が咬合時に前に動きます。サポートを入れれば動かないのでしょうか。

・舌下ヒダまで床縁が達してない場合、どのようにすれば床縁を舌下ヒダまで確実に延長できるでしょうか?

・フラビーガムの印象の際に固定減となるエリアを印象に印記する手技を詳しく教えてください。

・下顎骨隆起が著しい下顎総義歯のケースでいま苦労しています。義歯の辺縁をどこに置くかすごく迷っているのですが松丸先生の臨床ではどうお考えでしょうか。

・コピーデンチャーでのリップサポートの修正際に、人工歯を印象して即重レジンでつくったものを利用して修正を行うとのことでしたが、その手技およびコピーデンチャーへの固定の方法を教えてください。 他

 

視聴は年始までの期間限定!

画像クリックでお申し込みページへリンク

 

ライブ配信は終了していますが、当日見逃した方のために 2020年1月13日(月)24:00 までの振り返り視聴(録画配信)期間を設けています。これからお申し込みいただいても、質疑応答含め、すべての講義内容をご視聴いただけます。

すでにご参加いただいた先生も、繰り返しご覧いただけますので、年末年始の研鑽にお役立てください。

 

日常臨床に活かす総義歯臨床のコツ

画像クリックでWCCH(WHITE CROSSチャンネル)へ

 

昨年開催された松丸先生のWHITE CROSSライブセミナーの講演が、WCCHに公開されました。今回の講演とは異なる総義歯症例のファイナルまでを解説いただいています。ぜひ今回のセミナーとあわせてご視聴ください。

執筆者

WHITE CROSS編集部

WHITE CROSS編集部

臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・歯科関連企業出身者などの歯科医療従事者を中心に構成されており、 専門家の目線で多数の記事を執筆している。数多くの取材経験を通して得たネットワークをもとに、 歯科医療界の役に立つ情報を発信中。

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*すでに開催は終了していますが、録画配信でご参加いただくことが可能です。
*2020年223日(日)24:00までの期間限定配信となりますのでご注意ください。
*録画視聴は準備が整い次第、メールにてご連絡差し上げます
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