本書は、歯科医療事故における法律的な基礎知識と、事故訴訟についての現況を示すとともに、近年の歯科医療事故判例を詳細に解説している。「基礎知識編」では、法的責任とはどのようなものか、どのような場合に民事・刑事責任を問われるのかを解説。「事例編」では、歯科医師の責任をめぐって実際に争われた24の裁判例を臨床に即して類別し、法的な視点から検討する。歯科医療事故の防止、発生した事故の法務対策に必携の書。
はじめに

第1部　基礎知識編
1　歯科医療事故訴訟の現況
2　歯科医療事故と法的責任
3　歯科医療事故と民事責任（損害賠償責任）
　1　一般的不法行為
　　（1）故意・過失
　　　1）故意とは
　　　2）過失とは
　　　　注意義務の内容
　　　　過失の有無の判断基準
　　　　歯科医療水準
　　　　医師の裁量
　　　　特異体質－不可抗力
　　　　問診義務
　　　　転医（送）義務
　　　　立証責任－過失の推定
　　　　致死傷の場合の過失
　　（2）違法性
　　　1）違法とは
　　　2）違法性阻却事由
　　　　正当業務行為
　　　　被害者の承諾（患者の自己決定権、説明義務
　　　　－インフォームド・コンセント、癌の告知）
　　　　許された危険
　　（3）因果関係
　　　1）因果関係とは
　　　2）立証責任／相当因果関係
　　　3）期待権の侵害
　　（4）責任能力
　2　特殊的不法行為
　　（1）他人を使用するものの責任
　　　1）使用者責任
　　　2）公務員の不法行為／国家賠償責任
　　（2）工作物等の瑕疵による責任
　　　1）工作物責任
　　　2）営造物責任
　　（3）共同不法行為者の責任
　　　1）共同不法行為とは
　　　2）チーム医療と責任
　　　3）信頼の原則
　3　債務不履行
　（1）診療契約とは
　（2）応招義務－診療拒否
　（3）債務不履行と不法行為
　4　損害賠償責任
　（1）損害賠償の方法
　（2）損害賠償の範囲
　　　1）財産的損害
　　　2）精神的損害（慰謝料）
　（3）過失相殺
　（4）時効
　　　1）損害賠償請求権の消滅時効
　　　2）後遺障害と消滅時効の起算点
　5　歯科医療事故と解決方法
　（1）示談（和解
　　　1）過失のある場合／示談書作成上のポイント
　　　2）過失のない場合
　　　3）過失の不明の場合
　（2）調停
　（3）訴訟－債務不存在確認の訴え
　（4）弁護士への依頼
4　歯科医療事故と刑事責任
　1　歯科医療事故と犯罪
　（1）業務上過失致死罪
　（2）傷害罪
　（3）暴行罪
　（4）保護責任者遺棄罪
　（5）刑法上以外の犯罪
　2　歯科医療事故と刑罰
　（1）刑罰の種類
　（2）略式手続き
　（3）起訴までにいたらない事件の処理
　　　1）微罪処分
　　　2）不起訴処分
　　　3）起訴猶予処分

第2部　事例編
1．一般診療・処置に関する事例
　1)ブリッジ装着後の措置とその適否
　2)対合歯削合処置とその適否
　3)ブリッジによる補綴治療とその適否
　4)咬合調整治療とその適否
　5)治療過誤とリウマチとの関係
　6)齲蝕予防剤の誤薬死亡事故
　7)エナメル上皮腫と診療の適否
2．インプラント手術に関する事例
　1)インプラント手術とその選択・施行の適否
　2)インプラント手術とその適否
3．抜歯・骨折事故に関する事例
　1)抜去歯の口腔内落下窒息死事故
　2)抜歯手術の際の下顎骨骨折事故
　3)下顎智歯の抜歯と下顎骨骨折事故
4．歯科麻酔事故に関する事例
　1)抜歯手術の際の麻酔事故
　2)幼児の全身麻酔による抜歯等手術後の死亡事故
　3)悪性過高熱（悪性高熱症）による死亡事故
5．有病者に対する歯科治療に関する事例
　1)アスピリン喘息患者に対する歯科治療の適否
　2)重症筋無力症に対する麻酔薬使用の適否
6．説明義務（インフォームド・コンセント）に関する事例
　1)複数の治療方法と説明義務
　2)外貌におよぼす影響と説明義務
7．口腔外科に関する事例
　1)上顎嚢胞の摘出手術等と視覚障害
　2)慢性骨髄炎の発症と診断の適否
　3)上顎癌の肺転移と診療の適否
8．その他
　1)開口を拒む幼児への殴打行為
　2)診断書等の交付拒否と不法行為の成否

資料　日本弁護士連合会報酬等基準
索引