児童虐待早期発見のリスト作成や職域の歯科保健に関わるエビデンス集発刊を発表|日本歯科医師会定例記者会見 / WHITE CROSS編集部

4月21日、歯科医師会館にて、公益社団法人日本歯科医師会 定例記者会見が開催された。

当日の議題は以下の通り。

① 歯科用貴金属価格の緊急改定

② 歯科ビジョンの具体展開に関する進捗状況

 児童虐待への歯科的対応検討チームの活動報告
③ 歯科医師による新型コロナワクチン接種状況
④ 歯科口腔保健エビデンス集の発刊

会見の内容をダイジェストでお届けする。

 

① 歯科用貴金属価格の緊急改定

冒頭に堀会長より挨拶があり、先日中医協で了承された歯科用貴金属価格の緊急改定について言及した。この改定については日本歯科医師連盟が岸田文雄内閣総理大臣および茂木敏充自由民主党幹事長と面会し、歯科用金銀パラジウム合金の急騰に対する要望書を提出するなど、歯科医師会としても対応を行った経緯がある。

(参照:日本歯科医師連盟 内閣総理大臣および自民党幹事長へ金パラ急騰に対する要望を提出

 

堀会長は、価格改定についてはある一定の安心材料とはなるものの、引き続き極端に相場に左右されない代替材料の開発推進に取り組んでいきたいと述べた。

 


冒頭挨拶を務める 公益社団法人日本歯科医師会会長 堀憲郎先生冒頭挨拶を務める 公益社団法人日本歯科医師会会長 堀憲郎先生

 

② 歯科ビジョンの具体展開に関する進捗状況報告

2020年10月に同会が刊行した『2040年を見据えた歯科ビジョン(以下、歯科ビジョン)』の具体的な取り組みについて、柳川忠廣副会長より発表。4月13日に総合会議を開催し、全18チームの進捗状況報告を行ったという。

歯科ビジョンとは、2040年を見据えた歯科保健医療の役割と責任を明確にするとともに、国民歯科医療の推進に向けた政策提言を積極的に行うための指針。
(参照:2040年を見据えた歯科ビジョン―令和における歯科医療の姿―-公益社団法人日本歯科医師会

同会は、今後もアクションの進捗や検証を続けるため、国立がん研究センターや日本栄養士会などの有識者からなる外部委員ビジョン・フォローアップ会議の開催を決定した。初回は5月19日に開催予定。

 

 

児童虐待への歯科的対応検討チームの活動報告

定例会見では、プログラムの方針がおおよそ確定した「児童虐待への歯科的対応検討チーム」の取り組みが山本秀樹常務理事より発表された。

 

2020年、児童相談所による児童虐待の対応件数が20万件を超えた。また、近年は乳幼児だけでなく小学生まで幅広い虐待報告が挙げられていることから、歯科医師会だけでなく学校歯科医会などと協力してプログラムを実施していくという。

この状況を踏まえて同チームは、乳幼児の歯科健診に加え、学校の歯科健診、歯科診療所の3つのシーンを想定したアセスメントシートを作成。各自治体や学校などに発信を開始し、厚生労働省にも伝達済み。

健やかな子育て支援のチェックリストはこちら(日本歯科医師会公式HPへ)

 

表面は養育者の目に触れてもいい内容になっており、裏面に注視すべきポイントが記載されている


チェックリストには、所属する自治体の数値を書き込めるようになっているなど、普及に向けた工夫が施されている。

 

③ 歯科医師による新型コロナワクチン接種状況

歯科医師による新型コロナワクチン接種


第3回接種の開始により、歯科医師による接種についても2月、3月と増加している。

 

④ 『歯科口腔保健エビデンス集 2021年度版』の発刊

8020推進財団の副理事長を兼任する佐藤保副会長が、同財団が2021年度調査研究事業として取りまとめた『職域等で活用するための歯科口腔保健 エビデンス集 2021年度版』の発刊を報告した。

 

『職域等で活用するための歯科口腔保健 エビデンス集 2021年度版』はこちら


当書は、歯科口腔保健に携わるさまざまな職域の方が使用できるよう、1997年3月に日本歯科医師会から発刊された『産業歯科保健に関する文献調査』以降の論文などを収集し、さらにその内容のポイントをわかりやすくレビューを作成したもの。

「内容がわかりやすい」「エビデンスが一つにまとめられているので便利」と好評を受けているという。


エビデンスはわかりやすく図示されており共有しやすい(8020推進財団 2021年度調査研究事業公式HPより引用)

 

 質疑応答

Q .児童虐待への歯科的対応は以前より進められている部分もあるが、子どもの健診が義務化されていない、事業間連携が不十分といった課題があった。過去のやり方との違いはあるか

A .これまでは情報共有がしづらい環境であったため、効果が上がりづらい部分があった。現状、直接子どもや養育者と触れ合う機会のある歯科衛生士や保健師がかなりの情報を持っていることが分かっているため、今後はアセスメントシートを活用して情報共有を深めていきたい。

 

 

Q .歯科用貴金属価格の緊急改定について、今回臨時改定が認められることが示されたが、今後も年4回の頻度を見直す予定はあるのか

A .各機関の事務負担、現場の費用負担との兼ね合いで、今後も年4回を予定。非常時の臨時改定は今後もあり得る。

 

執筆者

WHITE CROSS編集部

WHITE CROSS編集部

臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・歯科関連企業出身者などの歯科医療従事者を中心に構成されており、 専門家の目線で多数の記事を執筆している。数多くの取材経験を通して得たネットワークをもとに、 歯科医療界の役に立つ情報を発信中。

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