大阪歯科大学を卒業後、大学院にて歯科麻酔学を専攻。主に口腔外科手術時の全身麻酔、静脈内鎮静、障がい者歯科医療に従事する。現在は大学教員として学生、研修医の指導にあたっている。また、2012年study group「AneStem(アネステム)」を設立し、歯科医療従事者へ歯科麻酔に関する教育を行っている。AneStemによる歯科麻酔学教育を通じて、日本の歯科医療の安全性を向上させることをミッションとしている。

 

 

 

 

歯科麻酔との出会い

5年生の登院前に1週間、いくつかの科を半日間づつ回るというプレクリの授業がありました。そこで初めて、外来で静脈内鎮静をしているところを見ました。

なんででしょうか、その際に“これだ!”と思ってしまったんです。

この技術すごいと圧倒され、こんなことも歯科医師のライセンスでできるのかと感銘を受けました。そのほんの少しだけの見学で歯科麻酔に残ろうと思った気持ちが卒業まで変わらなかったんです。それが歯科麻酔を選んだきっかけです。

 

 

歯科麻酔専門医としてのキャリア

卒業当時は、まずは認定医を取りたいと思いました。ちょうど私が卒業する年から臨床研修医が義務化されましたので、すぐに大学院に行くという選択肢はなかったんです。

ですのでまず研修先は大阪の寝屋川市にある小松病院の歯科口腔外科で全身麻酔や鎮静、一般口腔外科まで幅広く学ばせていただきました。

その後大阪歯科大学の歯科麻酔の大学院に入って歯科麻酔の臨床や研修をスタートしました。

 

 

歯科麻酔専門医の仕事

実際の臨床は国家試験で習った範囲では面食らうほどのものでした。本当にたくさんのことを勉強しなければなりませんでした。

 

歯科麻酔の仕事内容としては、手術もしくは小児・障害者など歯科治療に非協力の方の治療の際の全身麻酔、嘔吐反射や歯科恐怖症の方には鎮静、他には院内の救急に携わるようなこともしています。

 

やはり全身麻酔となると、薬のことだけではなく生理学や解剖学も学ばなければなりません。

それに加えて超高齢化社会ですから、有病の高齢者の方にも安全に麻酔をかけるというのがすごく大事になってきます。

安全な麻酔をかけるためにはまずはその方が持っている病気についての理解がなければならないんですね。高血圧の方にはどうするか、甲状腺の疾患を持っている方にはどうしなければならないかというのを学ぶ、その過程で歯科治療時においてもこのような患者さんが来たらどうしたらよいのかというのが自ずと学べるようになってきます。それと同時に歯科麻酔を学ぶということは全身管理に精通できるということなので、これは歯科麻酔専門医の専門性としての強いところだなと思います。

 

 

他科との関わり

一番多く関わるのは口腔外科の手術です。嚢胞・顎変形症・骨折・悪性腫瘍などの多くは全身麻酔で行いますので、その際の麻酔を担当します。

最近では障害者歯科との関わりも多くなり、トレーニングだけでは治療を受けられない患者さんや急性症状のある方は全身麻酔が必要になることがありますので、外来で日帰りの全身麻酔も行います。

大阪歯科大学の麻酔科では、処置の際に血圧が上がるような患者さんに対して鎮静を含めて術中のバイタルサインの管理も行っています。

 

 

Anestem立ち上げの経緯

歯科麻酔を専攻して働いていく過程で私は歯科麻酔に対して非常に誇りを持って働いているのですが、歯科麻酔以外の先生と話すと『難しいことをやっているんですね』とか『私たちにはわからない世界ですね』と言われることもがあり、歯科麻酔以外の先生とのギャップというものを感じて気になっていたんです。

 

そこで元々教えることが好きでしたので、僕が知っていることを歯科医師の先生に教えることができたら僕も自分の仕事を知ってもらうこともできるし、他の先生にとっても全身管理や歯科麻酔のことは聞きたい項目なのではないかなと思ったんです。その思いから、歯科麻酔を、歯科麻酔以外の先生に広めたくAnestemを始ました。

 

超高齢社会ですので、外来においても多くが有病高齢者であると思います。循環器系、呼吸器系の疾患、多くの薬剤を服用しているなどそういう方を見ていく上でどうしたら安全に歯科医療を提供できるのか。という部分でAnestemがお手伝いができるのではないかと思っております。

 

 

Anestemの活動

活動としては3つあります。

 

そのうち1つ目は講義形式のセミナーで、さらに4つのテーマに分けています。

・バイタルサインや生体モニターの評価の仕方

・高血圧や心疾患などの歯科治療時の偶発症とその対応法

・歯科治療時に注意すべき全身疾患に対してどのような配慮をすれば安全な歯科医療ができるかという管理の方法

・心肺蘇生つまり胸骨圧排やAEDに関しての講義

 

2つ目は、歯科治療の偶発症への対応を実際にマネキンやモニターを使って、たとえばアナフィラキシーに見立てた環境を作ってどう対応するかですとかをチームで考えていただきます。もちろん薬剤投与のことなど、実習形式で行います。

 

3つ目に、教育研究ということを行っています。

講義形式にしろ実習形式にしろ、教えているものがちゃんと効果があるのかということを調べるためにスキルチェックなどを行ったものを評価し、実際に論文発表などを行っています。

 

 

Anestemの目標

2012年から約5年ほど活動を展開してきました。セミナー回数としては約80回、延べ人数としては約800人ほどに参加いただきました。

主に私ひとりが中心となってまいりましたので、今後は受講機会の拡大のためにインストラクターとなる人材の育成をしていきたいと思っています。しいてはそういうことによってより多くの医療従事者の方に学んでいただけることになりますので、私たちの活動が広がっていくことを目標にしています。

 

あとは生体モニターの普及ですね。

現在歯科医院で生体モニターを置いているところも増えてきてはいるようですが、どうしても生体モニターがないとバイタルサインの評価は難しいですし、何か偶発症が起きて時の対応というのもモニターが必要です。セミナーの活動を通じて、いかにモニターが重要かということを伝えて歯科医院での普及率を上げていけたらなと思っています。

 

また、長期的な目標で私の夢でもあるのですが、将来的には私たちがやってきた歯科麻酔の知識のアップやスキルのアップを通じて、医療従事者の方の行動が変わってそれが患者さんの安全な歯科医療に通じれば一番だと思っています。

 

 

若手歯科医師へのメッセージ

Anestemを始めた時に、少しでも日本の歯科医療をよくしたいという思いがありました。その根本に問題意識があって、もっと歯科麻酔を学べる機会があればいいのにと思ったのですが当時はなかったんです。

悲観することはなくて、そういう機会がなければ自分が作ればいい。作ることで自分が思い描いていたことに貢献することになる。何もないところからアイディアと行動力があればできるんですよね。

働いていればいろんな困難もあるんですが、そこから行動をおこすことで自分で解決策を作り出すことができるので、困難に直面したとしても前向きに行動してほしいというのがメッセージですね。

 

 

日本の歯科医療の未来は明るいですか

私は明るいと思います。というよりも明るくなると信じています。

やはりこれも“思う”ところから変わると思うんですね。日本の歯科の現状もよく言われていませんし、未来もわからないけれど、良くなると信じてそのために何ができるかを常に考えてアクションをおこせば本当にそうなると僕は信じています。

 

WHITE CROSS編集部
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