口腔医 社会の求める歯科の新診療域 クインテッセンス対談 前編
臨床 2017.03.20

口腔医 社会の求める歯科の新診療域 クインテッセンス対談 前編

WHITE CROSS編集部

未曾有の超高齢化社会に向かう日本。その大きな変化の中で、今まさに進行している「口腔医療革命」をご存知だろうか?

近年、基本的な予防や治療に加えて、身体機能の維持・回復にかかわる医療の価値が見出され始めている。歯科医療においては食べる力が注目されており、日本歯科医師会がオーラルフレイルについての啓蒙活動を始めたことも記憶に新しい。(オーラルフレイルとは、口腔機能の軽微な低下や食の偏りなどを含み、身体の衰えの一つ。)

自然な衰えだけが問題ではない。例えば、患者さんにとって手術後に自分の食べる力で食事をとることと、胃ろうにより栄養補給することには大きな違いがある。自分の力で食べることで得られる身体の回復力や、味わうことによる心の喜びの価値は高く、その後の人生に大きな違いを生む。

その一方で、現状歯科においても医科においても口腔機能の低下や摂食嚥下障害を治療・改善する専門家の組織だった育成がなされていない。そのため、誤嚥への安全策として、安易に胃ろうに割り振られる患者さんも数多くおり、社会的に問題視されている。

 

 

 

 

実はこの領域にこそ、歯科医療が発展させていくべき「口腔科」という社会が求めるこれからの歯科医療がある。

 

今回は、クインテッセンス出版『歯科衛生士』2013年7月号に掲載され「口腔医療革命」のきっかけとなった対談記事を前後2編に分けて掲載する。そして、後編のラストではそれから4年後、「口腔医療革命」の今の姿を描く。

 

聞き手の米山武義先生は、口腔ケアの第一人者であり、話し手である塩田芳享氏は、医療ジャーナリストとして、これまでにも医療事故、救急医療、研修医問題、高齢医療などについて、映像演出のほか取材・執筆活動を行ってきた。

これから求められるのは、口腔全体を見る「口腔科」という新たな形

―クインテッセンス出版『歯科衛生士』2013年7月号より抜粋―

聞き手: 静岡県 米山歯科クリニック 米山 武義先生

話し手: 医療ジャーナリスト 塩田 芳享氏  

 

米山 

過渡期にある日本の医療。今後、超高齢社会の中でどうすれば医療を良い方向に導けるのか。そして、その中で歯科はどんな役割を果たすべきなのか。長年がんや胃ろう等の問題を通じ医療現場を取材してきたジャーナリストの思いをうかがいます。

 

医療に対して、はたまた歯科や口腔ケアに対して、医療者でない一般の方がどのように考えていらっしゃるかを聞く機会はなかなかありません。しかし、そのような方々のお話には、われわれ医療者だけでは気づけない鋭いご指摘もあります。私は、そこにも耳を傾けることで初めて気づけることが多いと考えています。


今回はジャーナリストの塩田さんをゲストに迎えました。塩田さんには、まずご自身の取材経験をふまえて、医療において注目すべき話題について触れていただきます。そのうえで、歯科や口腔ケアのありかたをともに探っていければと思います。

 

お任せ医療は過去の価値観! 患者さんは無駄な治療を望んでいない

米山 

日本の医療は、今大きな過渡期にあると思います。というのも、超高齢社会に突入し、これまで良いとされていたものが必ずしもそうではなくなってきた。社会の価値観も変化してきていると思います。塩田さんから見て、この点についていかがでしょうか。


塩田 

まさにそのとおりで、この過度期を前に、恐らくほとんどの方が「高齢者がどんどん増えるから、お金がかかる」と悲観的な部分ばかりに目を向けがちだと思います。しかしこれからの方向性をきちんと見出すことができれば、むしろ医療を良くできるチャンスかもしれません。いずれにせよ、過渡期であることは間違いありません。


これから医療がどう変わるかは、医者だけの問題ではなく、医療を受ける側、患者さんの意識改革にもかかっています。そして私は、この意識改革は十分可能だと思っています。たとえば、今までの70~80歳の人は、「すべて先生にお任せした方がいい」と考え、医者に委ねる傾向があります。一方、これから高齢者となる団塊世代以降の人たちは、学生運動にかかわったり、若い頃に当時の体制に歯向かいながら生きてきた。だから、医療も自分で選んで決断することを重視します。ですから、これからの高齢者はこれまでの患者さんとは意識がかなり違うととらえるべきです。


これまでの高齢者医療は、治療費を安くして、治療をとことんするやり方でした。加齢を重ねれば最期まで病院が面倒をみますし、とにかく長生きするよう患者さんに強いてきたところがあります。その典型的な例が、胃ろうです。しかし、医療費がどんどん上がっている今、価値観を変えていかねばなりません。つまり、すべて治療でなんとかしようとするのではなく、患者さんが本来自分でもっている力を発揮できることの方が重要なのです。この価値観の転換が、日本の高齢者医療には必要ではないでしょうか。

米山 

このような提言をできる方はなかなかいないです。本当にそのとおりだと思いますよ。

 

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WHITE CROSS編集部
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