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経営 2026/01/09

コンサルタントの視点から 第111回「年間休日120日にしよう」

株式会社M&D医業経営研究所
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・歯科衛生士の求人では「年間休日120日以上」がかなり優先的に検索されている?

・休日を増やしても売上は減少しない?就業規則を改正するときの重要ポイントとは?

 

M&D医業経営研究所代表の木村泰久です。

 

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

 

医療専門の経営コンサルタントの視点から、先生方の歯科医院経営に役立つ情報をお届けしていきます。

 

はじめに

歯科衛生士の採用がむずかしくなっています。効果的な対策はないでしょうか。


全国歯科衛生士教育協議会の資料によれば、令和6年度は卒業者数7,460名、就職者数6,680名、求人人数は158,320名で求人倍率は23.7倍と、調査開始以来もっとも高い倍率となりました。

学卒歯科衛生士が就職先として選ぶ条件は給与水準だけではありません。今や、「推し活」や趣味に使う時間を確保するため、「休めること」が第一優先になっているのです。そのため、「年間休日120日以上」、「週休3日」の歯科医院に人気があります。

図表―1は、グッピーのこだわり検索のメニューです。同社のスタッフによれば、「年間休日120日以上」はこれらの項目のなかでも、かなり優先的に検索されており、満たさなければ応募が期待できない状態になっているそうです。

 

図表―1 グッピー歯科衛生士募集サイトの「こだわり検索」の項目

 

年間休日120日以上とは

この「年間休日120日」とは、いったいどんなことでしょうか。

1年間は単純計算で52週です。このため、木日休診など週休2日制の医院では、休日が104日あります。これに祝祭日が図表―2のとおり年間16日あります。つまり、週休2日の104日と祝祭日の16日の合計で「年間休日120日」になるのです。

① 元日          11

② 成人の日        112

③ 建国記念の日      211

④ 天皇誕生日       223

⑤ 春分の日        320

⑥ 昭和の日        429

⑦ 憲法記念日       53

⑧ みどりの日       54

⑨ こどもの日       55

⑩ 海の日         720

⑪ 山の日         811

⑫ 敬老の日        921

⑬ 秋分の日        923

⑭ スポーツの日      1012

⑮ 文化の日        113

⑯ 勤労感謝の日      1123

図表―2 国民の祝祭日

 

ただ、2026年は日曜休診の医院では、5月6日が振替休日、9月22日が国民の休日となります。これを加えると祝祭日が合計18日になります。また、閏年は1日狂ってきます。

また、年中無休制の歯科医院では、祝日がその従業員のシフト上の休日と重なった場合は祝日振替を取得させる必要がありますが、カレンダー上で日曜と祝日が重なったことによる振替祝日まで休日にする必要はありません。このため祝祭日は16日となります。

 

つまり、「年間休日120日」は、完全週休2日制+祝日休みということです。しかし、すべての祝祭日を休日としなくても、指定公休を16日作ることで年間休日120日にすることは可能です。一例を示します。

 

 

<指定公休を16日作ることで年間休日120日にする方法の例>

① 週休2日制で、年間休日104日とする

② 年末年始6日+盂蘭盆会4日の、合計10日を指定公休とする

③ ゴールデンウイーク5月3日、4日、5日の3日間を指定公休とする

④ 院長の秋の学会参加予定日の2日間を指定公休として休診する

⑤ 医院の創立記念日を1日指定公休として休診する

 

祝日のある週は休診日の木曜に診療をしている医院や、祝日を休診している医院でも「有給休暇の一斉取得」として、合計で年間120日以上休んでいるケースもありますが、このように振替出勤日があったり、有休消化で休んだりしている場合は「年間休日120日」にはなりません。

それは法律上、「休日」と「休暇」は違うからです。「休日」は、所定内労働日数から除外されますが、有給休暇や特別休暇、介護休暇、産前産後休暇など、「休暇」は、所定内労働日数に含まれるからです。

 

整理しておきましょう。

 

(1)「法定休日」
「法定休日」は、労働基準法に定められた月4回の休日です。日曜日とするケースが多いようですが、この日に休日出勤をさせると35%増しの割増賃金を支払う必要があります。

(2)「休日」
「休日」は、週休2日制で月4回の「法定休日」以外の休日として、例えば水曜日や木曜日を休診している医院が多いようです。この日は休日出勤させても25%増しの割増賃金で大丈夫です。

 

(3)「指定公休」
「指定公休」は、医院が指定した任意の日を「休日」とするものです。前述のように、年末年始や盂蘭盆会などを指定公休としても大丈夫です。ただし、「休日」なので、この日に出勤させた場合は割増賃金を支払う必要があります。

 

(4)「有給休暇」

「有給休暇」は、労働基準法に従って付与する有給の休暇です。「出勤扱い」となって労働日数に含まれます。

 

(5)「特別休暇」

「特別休暇」は、医院が恩恵として特別に与える「休暇」です。従ってこの日に出勤させても割増賃金を支払う必要はありませんが、最低賃金を計算する際には労働日数に含まれます。

 

休日を増やしても売上は減少しない

年間休日を120日にしても医院の売上は変わりません。予約取りの際に祝日の予約の患者さんを平日で埋めていくことを想定すれば、イメージがわくと思います。総予約数が変わらないからです。

また、1週間の診療時間と医業収益(売上)には相関関係がないことがデータで裏付けられています

公益社団法人日本医業経営コンサルタント協会の大規模データベース(歯科経営指標2017年版)で、届け出診療時間と年間医業収益(売上)との相関分析をした結果がこの図表―3です。

 


図表―3 (公社)日本医業経営コンサルタント協会「歯科経営指標2017年版」より引用

「相関係数が0.1446で基準の0.2を下回り、届け出診療時間(1週間)は年間医業収益にあまり大きな影響を与えていない」という結果でした。つまり、「診療時間を短くしても売上には影響がない」ということです。

実際に、弊社の多くのクライアント医院で、診療時間を午後7時までから午後6時までに変更しましたが、売上が減少した医院はありませんでした。もちろん、年間休日120日にして祝祭日を休診にした医院でも、売上が減少した医院はありませんでした。

 

最低賃金の計算でも有利になる

昨年10月に最低賃金が大幅に上げられました。その結果、例えば受付助手の賃金を時間給で計算すると、最低賃金を下回るケースがでているようですので、チェックしていただきたいと思います。

最低賃金を下回って違法状態になると、罰則があります。


地域別最低賃金額以上の賃金を支払わなかった使用者は、50万円以下の罰金に処せられることがあります(最低賃金法第40条)


さらに、ハローワークで求人できなくなり、ハローワーク関連の助成金が申請できなくなり、場合によっては医院名が公表されます。こうなると歯科衛生士や受付の応募が来なくなってしまうでしょう。医院経営にとって重大な影響が出てくるのです。

しかし、新人の給料を上げると、玉突きでその他の職員の給料もすべて上げる必要がでてきます。そうなると、人件費の上昇が経営を圧迫してしまいます。


そのとき、給料を上げずに年間所定労働日数を減らすことで、最低賃金の計算基礎となる時間給を上げることができるのです。

年間所定労働日数は、その年の暦日数から就業規則等で定めた年間休日を差し引くことで求めます。

週休2日で、祝祭日は休日とせず、有給休暇の一斉取得としている医院があります。この場合は、週休2日の年間104日を365日(閏年は366日)から引き、年間所定労働日は261日(閏年は262日)になります。

有給休暇や特別休暇があるわけですが、いずれも所定労働日数に含めて計算されます。年末年始休暇や忌引休暇、介護休暇なども、最低賃金の計算上では所定労働日数に含めなければなりません。

 

具体例で計算をしてみましょう。
(※1年365日=52週+1日のところ、52週として簡易計算)

茨城県で、週休2日で働く歯科助手のC子さんの場合です。

茨城県の最低賃金は昨年1,074円になりました。

ある月の総支給額は、基本給183,000円、皆勤手当5,000円、時間外労働手当16,150円、通勤手当5,000円の209,150円でした。地域的に普通の水準です。

ここから、最低賃金の計算の対象とならない皆勤手当5,000円、時間外労働手当16,150円、通勤手当5,000円を除外します。これらを除くと月給は183,000円です。

 

(1) 1年間の所定内労働日数を261日(週休2日のみ)とした場合

年間所定労働日数は、365日-104日の261日になります。


1ヶ月の平均所定労働時間数=年間所定労働日数×1日の労働時間÷12か月となることから、261日×8時間÷12か月=174時間。
時間あたり賃金は、183,000円÷174時間≒1052円です。


最低賃金と比較すると、 1,052円 < 1,074円 なので、C子さんの最低賃金額は茨城県最低賃金額よりも低く違法状態です。

 

(2) 年間休日120日で1年間の所定労働日数を365日-120日=245日とした場合

1ヶ月の平均所定労働時間数=年間所定労働日数×1日の労働時間÷12か月となることから、245日×8時間÷12か月=163.33時間。


したがって、時間あたり賃金は、183,000円÷163.33時間≒1,120円です。最低賃金と比較すると、  1,120円>1,074円 なので、C子さんの最低賃金額は茨城県最低賃金額よりも高く合法となるのです。

 

つまり、年間休日120日とすることで最低賃金の計算も有利になるのです。

 

年間休日120日に就業規則を改正するときの重要ポイント

年間休日120日にするには、就業規則の休日規定を改訂する必要があります。その際に留意すべきポイントがあります。それは次のどちらかにすることです。

① 国民の祝祭日を休日とする

スタッフにわかりやすいし求人もしやすくなると考えられます。

②「年間16日を指定公休とする」とする

こうすることで任意の日を「休日」とすることができます。前述のように、年末年始や盂蘭盆会、ゴールデンウイークなど患者さんが来ない日や、院長が所属する学会の開催日などを「指定公休」にすれば良いのです。

 

まとめ

実は、年間休日120日は産業界では常識であるということを認識しておく必要があります。メーカーや商社、金融系企業、IT企業は120日以上の休日で、さらにバースデー休暇や創立記念日休暇などを設定しています。

最近では、大型歯科医院でも採用を有利にするために「年間休日120日」としている医院が増えています。この流れに対応していかなければ中小歯科医院はますます歯科衛生士を採用できなくなってしまうでしょう。

前述のように、学卒歯科衛生士の求人倍率が23.7倍と史上最高になっています。「年間休日120日」とすることで、他の医院よりも採用しやすくなり、また最低賃金の計算でも有利になるわけです。すぐにでも実施することをおすすめします。

 

 

前回までのコラムはこちら

第1回『ホームページを情報発信ツールとして見直そう』

第2回『歯学部の状況を考える』

第3回『大災害からの早期復旧対策を考える』

第4回『悪質なクレームが増えている?』

第5回『成功している歯科院長に共通する3つのこだわり』

第6回『歯科衛生士の給与水準を考える』

第7回『歯科医師国試の結果に思う』

第8回『開業してやっていける歯科医師の売上と年収とは』

第9回『スマホページの重要性を考える』

第10回『歯科衛生士という職業の魅力を伝えよう』

第11回『歯科技工士の問題を考える』

第12回『歯科医師の将来を考える』

第13回『患者数の将来を考える』

第14回『歯科医院の髪色を考える』

第15回『ストーカーやDV被害に遭わないために』

第16回『院内感染予防の環境整備を考える』

第17回『小児の死亡事故防止策を考える』
第18回『歯科医師国試の結果を考える』

第19回『歯科衛生士養成校の現実を考える』

第20回『平均点数の地域別バラツキを考える』

第21回『外来環境加算を算定しよう!』

第22回『無断キャンセルを減らそう』

第23回『歯科医師の男女比率を考える』

第24回『院内暴力・暴言への対策を考える』

第25回『バーやリーマーなどの滅菌消毒を考える』

第26回『集患代行業者を使わない決意をしよう』

第27回『受付と歯科助手が採用できない!』

第28回『レントゲンスイッチをスタッフに押させない』

第29回『口腔がん検診に取り組もう』

第30回『国試の結果と歯科医療ニーズを考える』

第31回『開業苦難の時代を考える』

第32回『経営の視点から予防歯科を考える』

第33回『児童虐待の歯科医院での早期発見を考える』

第34回『ハラスメントの防止を考える』

第35回『事業承継の成功ポイントを考える』

第36回『不意の停電に備えよう』

第37回『インフルエンザの予防対策を考える』

第38回『安易に返金しないクレーム対策を考えよう』

第39回『予防歯科を定着させよう』

第40回『日頃から指導監査に備えよう』

第41回『新型コロナウイルス感染対策を考える』

第42回『歯科国試の結果を考える』

第43回『歯科医療は不要不急ではないし、感染リスクも高くない』

第44回『コロナショックからの復活のポイントを考える』

第45回『マイクロスコープを積極的に活用する』

第46回『オンライン資格確認を考える』

第47回『コロナに負けず、患者を呼び戻そう』

第48回『前歯CAD/CAM冠 保険収載の衝撃』

第49回『アライナー矯正戦国時代を考える』

第50回『補助金詐欺に注意しよう』

第51回『歯科治療時医療管理料を算定しよう!』

第52回『緊急事態宣言と解除後の対応について』

第53回『競合環境の変化に備えよう』

第54回『第114回歯科国試結果と女性比率の増加を考える』

第55回『コロナ禍対策としての予防歯科を考える』

第56回『コンプライアンスを守ろう』

第57回『歯科衛生士の浸麻を考える』

第58回『コロナ禍のレセプト点数への影響と今後を考える』

第59回『変異型コロナの院内感染に備えよう』

第60回『コロナ禍による医療費への影響と対策を考える』

第61回『衆院選を機会に、社会保険財政を考える』

第62回『忘年会など年末年始の院内イベントを考える』

第63回『患者の暴力から医院を守ろう』

第64回『歯科衛生士の採用と確保対策を考える』

第65回『在宅医療での安全確保対策を考える』

第66回『歯科医師国家試験の結果と将来への影響を考える』

第67回『不測の事態に備えてBCP(事業継続計画)を考えよう』

第68回『歯科技工士の実態と将来像を考える』

第69回『国民皆歯科健診とその影響を考える』

第70回『歯科医院での管理栄養士の採用と活用を考える』

第71回『オンライン資格確認の保険改定を考える』

第72回『コロナ禍2年目の医療費の動向と対策を考える』

第73回『マイナ保険証を考える』 

第74回『若手歯科医師の賃金高騰を考える』

第75回『女性歯科医師の増加と勤務環境の改善を考える』

第76回『歯科医院のM&Aを考える』

第77回『歯科技工士の現状と将来を考える』
第78回『第116回歯科医師国家試験の結果を考える』

第79回『歯科の管理栄養士の業務を考える』

第80回『次回改定までに、か強診をめざそう』

第81回『新しい歯科専門医制度を考える』

第82回『令和4年歯科疾患実態調査から』

第83回『カスタマーハラスメントからスタッフを守ろう』

第84回『令和4年概算医療費の変化と今後の対応を考える』

第85回『カルテ開示請求への対応ルールを作っておこう』

第86回『窓口負担のキャッシュレス払いを考える』

第87回『歯科衛生実施指導書を交付していますか?』

第88回『インプラント市場の変化と対応方向を考える』

第89回『アライナー矯正の採算性と市場の変化を考える』

第90回『第117回歯科医師国家試験の結果を考える』

第91回『歯科医院数の動向を考える』

第92回『ベースアップ評価料を算定しよう』

第93回『消滅可能性都市の歯科医院はどうなるのか』

第94回『これからの開業を考える』

第95回『歯科衛生士の需給と処遇を考える』

第96回『歯科医院の身だしなみ基準を考える』

第97回『レセプト平均点数の変化と地域間の差異を考える』

第98回『歯科医院数の増減から見える未来』

第99回『歯科医院の倒産、廃業の増加を考える』

第100回『雇用保険改正の歯科経営への影響と対策を考える』

第101回『歯科医師の減少と影響を考える』

第102回『スキマバイト活用のポイントを考える』

第103回『第118回歯科医師国家試験の結果を考える』

第104回『ベースアップ評価料を算定しよう-2』

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