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・歯科衛生士の求人では「年間休日120日以上」がかなり優先的に検索されている? ・休日を増やしても売上は減少しない?就業規則を改正するときの重要ポイントとは? |
M&D医業経営研究所代表の木村泰久です。
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
医療専門の経営コンサルタントの視点から、先生方の歯科医院経営に役立つ情報をお届けしていきます。
はじめに
歯科衛生士の採用がむずかしくなっています。効果的な対策はないでしょうか。
全国歯科衛生士教育協議会の資料によれば、令和6年度は卒業者数7,460名、就職者数6,680名、求人人数は158,320名で求人倍率は23.7倍と、調査開始以来もっとも高い倍率となりました。
学卒歯科衛生士が就職先として選ぶ条件は給与水準だけではありません。今や、「推し活」や趣味に使う時間を確保するため、「休めること」が第一優先になっているのです。そのため、「年間休日120日以上」、「週休3日」の歯科医院に人気があります。
図表―1は、グッピーのこだわり検索のメニューです。同社のスタッフによれば、「年間休日120日以上」はこれらの項目のなかでも、かなり優先的に検索されており、満たさなければ応募が期待できない状態になっているそうです。

図表―1 グッピー歯科衛生士募集サイトの「こだわり検索」の項目
年間休日120日以上とは
この「年間休日120日」とは、いったいどんなことでしょうか。
1年間は単純計算で52週です。このため、木日休診など週休2日制の医院では、休日が104日あります。これに祝祭日が図表―2のとおり年間16日あります。つまり、週休2日の104日と祝祭日の16日の合計で「年間休日120日」になるのです。
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① 元日 1月1日 ② 成人の日 1月12日 ③ 建国記念の日 2月11日 ④ 天皇誕生日 2月23日 ⑤ 春分の日 3月20日 ⑥ 昭和の日 4月29日 ⑦ 憲法記念日 5月3日 ⑧ みどりの日 5月4日 ⑨ こどもの日 5月5日 ⑩ 海の日 7月20日 ⑪ 山の日 8月11日 ⑫ 敬老の日 9月21日 ⑬ 秋分の日 9月23日 ⑭ スポーツの日 10月12日 ⑮ 文化の日 11月3日 ⑯ 勤労感謝の日 11月23日 |
図表―2 国民の祝祭日
ただ、2026年は日曜休診の医院では、5月6日が振替休日、9月22日が国民の休日となります。これを加えると祝祭日が合計18日になります。また、閏年は1日狂ってきます。
また、年中無休制の歯科医院では、祝日がその従業員のシフト上の休日と重なった場合は祝日振替を取得させる必要がありますが、カレンダー上で日曜と祝日が重なったことによる振替祝日まで休日にする必要はありません。このため祝祭日は16日となります。
つまり、「年間休日120日」は、完全週休2日制+祝日休みということです。しかし、すべての祝祭日を休日としなくても、指定公休を16日作ることで年間休日120日にすることは可能です。一例を示します。
<指定公休を16日作ることで年間休日120日にする方法の例>
① 週休2日制で、年間休日104日とする
② 年末年始6日+盂蘭盆会4日の、合計10日を指定公休とする
③ ゴールデンウイーク5月3日、4日、5日の3日間を指定公休とする
④ 院長の秋の学会参加予定日の2日間を指定公休として休診する
⑤ 医院の創立記念日を1日指定公休として休診する
祝日のある週は休診日の木曜に診療をしている医院や、祝日を休診している医院でも「有給休暇の一斉取得」として、合計で年間120日以上休んでいるケースもありますが、このように振替出勤日があったり、有休消化で休んだりしている場合は「年間休日120日」にはなりません。
それは法律上、「休日」と「休暇」は違うからです。「休日」は、所定内労働日数から除外されますが、有給休暇や特別休暇、介護休暇、産前産後休暇など、「休暇」は、所定内労働日数に含まれるからです。
整理しておきましょう。
(1)「法定休日」
「法定休日」は、労働基準法に定められた月4回の休日です。日曜日とするケースが多いようですが、この日に休日出勤をさせると35%増しの割増賃金を支払う必要があります。
(2)「休日」
「休日」は、週休2日制で月4回の「法定休日」以外の休日として、例えば水曜日や木曜日を休診している医院が多いようです。この日は休日出勤させても25%増しの割増賃金で大丈夫です。
(3)「指定公休」
「指定公休」は、医院が指定した任意の日を「休日」とするものです。前述のように、年末年始や盂蘭盆会などを指定公休としても大丈夫です。ただし、「休日」なので、この日に出勤させた場合は割増賃金を支払う必要があります。
(4)「有給休暇」
「有給休暇」は、労働基準法に従って付与する有給の休暇です。「出勤扱い」となって労働日数に含まれます。
(5)「特別休暇」
「特別休暇」は、医院が恩恵として特別に与える「休暇」です。従ってこの日に出勤させても割増賃金を支払う必要はありませんが、最低賃金を計算する際には労働日数に含まれます。
休日を増やしても売上は減少しない
年間休日を120日にしても医院の売上は変わりません。予約取りの際に祝日の予約の患者さんを平日で埋めていくことを想定すれば、イメージがわくと思います。総予約数が変わらないからです。
また、1週間の診療時間と医業収益(売上)には相関関係がないことがデータで裏付けられています。
公益社団法人日本医業経営コンサルタント協会の大規模データベース(歯科経営指標2017年版)で、届け出診療時間と年間医業収益(売上)との相関分析をした結果がこの図表―3です。

図表―3 (公社)日本医業経営コンサルタント協会「歯科経営指標2017年版」より引用
「相関係数が0.1446で基準の0.2を下回り、届け出診療時間(1週間)は年間医業収益にあまり大きな影響を与えていない」という結果でした。つまり、「診療時間を短くしても売上には影響がない」ということです。
実際に、弊社の多くのクライアント医院で、診療時間を午後7時までから午後6時までに変更しましたが、売上が減少した医院はありませんでした。もちろん、年間休日120日にして祝祭日を休診にした医院でも、売上が減少した医院はありませんでした。
最低賃金の計算でも有利になる
昨年10月に最低賃金が大幅に上げられました。その結果、例えば受付助手の賃金を時間給で計算すると、最低賃金を下回るケースがでているようですので、チェックしていただきたいと思います。
最低賃金を下回って違法状態になると、罰則があります。
地域別最低賃金額以上の賃金を支払わなかった使用者は、50万円以下の罰金に処せられることがあります(最低賃金法第40条)
さらに、ハローワークで求人できなくなり、ハローワーク関連の助成金が申請できなくなり、場合によっては医院名が公表されます。こうなると歯科衛生士や受付の応募が来なくなってしまうでしょう。医院経営にとって重大な影響が出てくるのです。
しかし、新人の給料を上げると、玉突きでその他の職員の給料もすべて上げる必要がでてきます。そうなると、人件費の上昇が経営を圧迫してしまいます。
そのとき、給料を上げずに年間所定労働日数を減らすことで、最低賃金の計算基礎となる時間給を上げることができるのです。
年間所定労働日数は、その年の暦日数から就業規則等で定めた年間休日を差し引くことで求めます。
週休2日で、祝祭日は休日とせず、有給休暇の一斉取得としている医院があります。この場合は、週休2日の年間104日を365日(閏年は366日)から引き、年間所定労働日は261日(閏年は262日)になります。
有給休暇や特別休暇があるわけですが、いずれも所定労働日数に含めて計算されます。年末年始休暇や忌引休暇、介護休暇なども、最低賃金の計算上では所定労働日数に含めなければなりません。
具体例で計算をしてみましょう。
(※1年365日=52週+1日のところ、52週として簡易計算)
茨城県で、週休2日で働く歯科助手のC子さんの場合です。
茨城県の最低賃金は昨年1,074円になりました。
ある月の総支給額は、基本給183,000円、皆勤手当5,000円、時間外労働手当16,150円、通勤手当5,000円の209,150円でした。地域的に普通の水準です。
ここから、最低賃金の計算の対象とならない皆勤手当5,000円、時間外労働手当16,150円、通勤手当5,000円を除外します。これらを除くと月給は183,000円です。
(1) 1年間の所定内労働日数を261日(週休2日のみ)とした場合
年間所定労働日数は、365日-104日の261日になります。
1ヶ月の平均所定労働時間数=年間所定労働日数×1日の労働時間÷12か月となることから、261日×8時間÷12か月=174時間。
時間あたり賃金は、183,000円÷174時間≒1052円です。
最低賃金と比較すると、 1,052円 < 1,074円 なので、C子さんの最低賃金額は茨城県最低賃金額よりも低く違法状態です。
(2) 年間休日120日で1年間の所定労働日数を365日-120日=245日とした場合
1ヶ月の平均所定労働時間数=年間所定労働日数×1日の労働時間÷12か月となることから、245日×8時間÷12か月=163.33時間。
したがって、時間あたり賃金は、183,000円÷163.33時間≒1,120円です。最低賃金と比較すると、 1,120円>1,074円 なので、C子さんの最低賃金額は茨城県最低賃金額よりも高く合法となるのです。
つまり、年間休日120日とすることで最低賃金の計算も有利になるのです。
年間休日120日に就業規則を改正するときの重要ポイント
年間休日120日にするには、就業規則の休日規定を改訂する必要があります。その際に留意すべきポイントがあります。それは次のどちらかにすることです。
① 国民の祝祭日を休日とする
スタッフにわかりやすいし求人もしやすくなると考えられます。
②「年間16日を指定公休とする」とする
こうすることで任意の日を「休日」とすることができます。前述のように、年末年始や盂蘭盆会、ゴールデンウイークなど患者さんが来ない日や、院長が所属する学会の開催日などを「指定公休」にすれば良いのです。
まとめ
実は、年間休日120日は産業界では常識であるということを認識しておく必要があります。メーカーや商社、金融系企業、IT企業は120日以上の休日で、さらにバースデー休暇や創立記念日休暇などを設定しています。
最近では、大型歯科医院でも採用を有利にするために「年間休日120日」としている医院が増えています。この流れに対応していかなければ中小歯科医院はますます歯科衛生士を採用できなくなってしまうでしょう。
前述のように、学卒歯科衛生士の求人倍率が23.7倍と史上最高になっています。「年間休日120日」とすることで、他の医院よりも採用しやすくなり、また最低賃金の計算でも有利になるわけです。すぐにでも実施することをおすすめします。


