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・医療従事者向け情報サイト『KAKEN Medical Pro』がリリース! ・歯周病×糖尿病で本当に必要な医科歯科連携とは? ・外科処置前の血糖コントロールの目安は? |
執筆者:遠藤眞次
はじめに
2025年3月、リグロス®で有名な科研製薬株式会社から、医療従事者向け情報サイト『KAKEN Medical Pro(以下、KMP)』がリリースされた。
KMPは、医科歯科連携に関連する動画コンテンツが無料で視聴可能。『医科・歯科両分野で製品を展開している』という、科研製薬株式会社の強みを存分に生かした形だ。
記念すべき第一回目の医科歯科連携特別対談には、大阪大学大学院歯学研究科特任教授の村上伸也先生と、下北沢病院糖尿病センター長の富田益臣先生が登壇した。
タイトルは『健口の架け橋~口腔と全身の健康をつなぐ~ 第1回 口腔の健康と血糖管理』。医科と歯科のエキスパートが、歯周病と糖尿病の関係を解き明かしていく。
本稿では、本対談の内容をレポートする。歯周病と糖尿病の関係性について、医師の目線を知ることができる貴重なコンテンツだ。
【会員登録で無料で視聴可能】KAKEN Medical Proはこちら
医科と歯科で語り合う歯周病と糖尿病
まずは、村上先生と富田先生から、歯周病と糖尿病の病態の基本が語られた。歯周病の病態については、本稿では割愛させていただく。
富田先生からは、糖尿病の病態についての解説があった。
糖尿病は、血液中のブドウ糖が多い状態を特徴とする代謝疾患だ。糖尿病では、インスリンの分泌/作用が不足することで、細胞がブドウ糖を取り込めず、肝臓においては糖新生が過剰になり、結果として血糖が上昇する。
高血糖の状態が続くと、糖尿病合併症を引き起こす。糖尿病合併症の代表疾患は「えのき・しめじ」と覚えるとわかりやすい。
え:壊死
の:脳梗塞
き:虚血性心疾患
し:神経障害
め:網膜症(目)
じ:腎症
これらに加えて、歯周病の進行も主要な合併症の一つである。
糖尿病と歯周病の負のサイクルとは
歯周病と全身状態の関連を調べた長年の研究から、Periodontal medicine(歯周医学)という学問が確立された。歯周病と糖尿病の関係に着目してみると、歯周病から糖尿病へ、糖尿病から歯周病へ、という双方向性の関係が見て取れる。
糖尿病が口腔に与える影響としては、創傷治癒不全や口渇、味覚異常、歯周病の進行が挙げられる。
反対に、歯周病が糖尿病に与える影響は、歯周治療後のHbA1cの変化として数多くの研究がなされている。動画ではいくつかの論文が供覧され、歯周治療がHbA1cを低下させることが示された。

P M Preshawら(2011)のレビューでは、歯周治療がHbA1cを約0.4%減少させるとしている。
一方で、注意しなければいけない点もあると村上先生は警鐘を鳴らす。
2001年のIwamotoらの研究によると、2型糖尿病に罹患している歯周病患者に歯周治療を行ったところ、全体としてはHbA1cの改善を認めた(P<0.007)ものの、HbA1cが改善しない者もいたことが報告されている。歯周治療によって、すべての患者のHbA1cが改善するとは限らないのだろう。
糖尿病と足の関係~フレイルについて~
糖尿病は筋力が低下する運動器疾患であり、サルコペニアやフレイルを来しやすいと富田先生は述べる。インスリン抵抗性が存在すると、筋分解が筋合成を上回り、炎症性サイトカインの増加によっても筋量減少が誘導される。
足は健康の基盤であるにも関わらず、実際には多くの人が足のトラブルで苦しんでいるという。足の耐用年数は50年とされており、当然だが足も老化する。
口腔機能の衰えをオーラルフレイルというように、足の衰えはフットフレイルというようだ。オーラルフレイル同様に、フットフレイルの予防は全身の健康に大きな影響を与えることが示された。

オーラルフレイルと通じるところがある。
知っておきたい糖尿病診療の実態と医科歯科連携のための共通指標
医科歯科共通の指標として、HbA1cとPISAが挙げられた。
歯科においても、HbA1cはメジャーな検査値になったのではないだろうか。特に最近では、ある一点の数値ではなく、持続血糖測定(CGM)による経時的なデータを用いた血糖管理が主流になってきているという。
一方で、歯科から共有できる数値データが少ないことは問題だ。歯周精密検査のデータでは、歯科以外の医療従事者にとって、歯周病の状態を直感的に把握しづらい。

HbA1cのように一つの数値で概要がわかる検査値がPISAである。
PISAのようなわかりやすい指標を、医科歯科共通の検査値にしようという試みがなされていると村上先生は語る。
同じ時間軸で診る口腔の健康と血糖管理
糖尿病も歯周病も、生活習慣病であり、慢性疾患であるという共通項をもつ。どちらの疾患も数十年という長期間に渡って患者と関わっていく疾患である。
しかし現時点では、患者教育や目標設定など、医科と歯科でバラバラになっているように感じると富田先生はいう。医科歯科連携の重要性が謳われて久しいが、まだまだ課題は山積している。
とはいえ、特に侵襲的な処置をする際には血糖がコントロールされていることが望ましいことには変わらない。一般的にはHbA1cが8%以下が良いとされるが、正確なエビデンスはないとのこと。

歯周外科処置前の血糖コントロール(参考目安)
血糖値が高い場合には、待機可能な処置は血糖コントロール改善後に実施することが望ましいと、富田先生はアドバイスする。村上先生は、日々の診療の中で相談できる糖尿病専門医とコンタクトをとっておくことも、歯科医師として必要なことだと述べた。
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毎度の診療報酬改定でも話題に上がる『医科歯科連携』。しかし、実際に医科の先生の話を聞ける機会は少ないのではないだろうか。
筆者が視聴するセミナーも99%以上が歯科医師が登壇するセミナーで、医師が登壇するセミナーを視聴したことは数回しかない。この機会にKMPを利用して、糖尿病専門医の貴重な話を聞いてみてほしい。



