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・EFP-S3レベル臨床実践ガイドラインに基づくStage I〜IIIの歯周治療STEP1「患者の行動変容」を吉武秀先生が解説! ・インフォグラフィックの見方やSTEP1「患者の行動変容」の目的と具体的な目標とは? |
はじめに
歯周病は、う蝕と並んで人類でもっとも蔓延している疾患の一つです。
その重症化は、咀嚼機能や審美性の喪失、生活の質の低下に直結するだけでなく、糖尿病や心血管疾患、早産など全身の健康にも悪影響を及ぼすことが明らかにされています。
世界的には、重度歯周炎の有病率は約7〜11%と報告され、主要な非感染性疾患(NCDs)の一つとして国際的に認識されています。経済的負担も莫大で、年間数百億ドル規模のコストが生じていると推計されています。
こうした背景を受け、2017年の世界ワークショップでは歯周病の新分類が提案され、「ステージ(重症度・複雑性)」と「グレード(進行速度・リスク)」という二軸で疾患を捉える枠組みが確立されました。
この新分類を臨床に適切に活用するため、ヨーロッパ歯周病連盟(EFP)は、もっとも厳密なS3レベルの方法論に基づき、Stage I〜IIIの歯周治療に関する国際的な臨床ガイドラインを策定しました1)。
本連載では、このEFPガイドラインのSTEP1〜4までを、推奨度や重点事項が視覚的に整理された「インフォグラフィック」を中心に読み解きながら、臨床での実践ポイントを解説していきます。
インフォグラフィックによって推奨度や重点事項は?
このガイドラインは、治療を以下のSTEP1〜4という4段階に体系化しています。そして各STEPは、インフォグラフィックによって推奨度や重点事項が色分けされ、視覚的に理解しやすく整理されています。
・STEP1:「患者の行動変容」
・STEP2:「歯肉縁下へのアプローチ」
・STEP3:「歯周外科ステージ」
・STEP4:「SPCのステージ」
※SPCはペリオドンタルメインテナンスやサポーティブぺリオドンタルセラピー(SPT)ともいわれる。
今回の連載では、インフォグラフィックを中心に、診療ステップを解説していきますが、今回は、特に臨床現場でもっとも基本かつ重要となるSTEP1:「患者の行動変容」に焦点を当て、実践をサポートするためのポイントを解説します。
インフォグラフィックの見方
今回の連載で中心的に扱うインフォグラフィックは、推奨度やエビデンスの強さが「色」で視覚的に示されています。まずは、この色のルールを理解することがガイドライン活用の第一歩です。

一目でわかる!色分けで整理した歯周病治療ガイドライン(EFP S3)の推奨度と解釈(画像は出典1を参考に作成)
STEP1〜患者の行動変容〜
STEP1の目的と重要性
STEP1の目的は明確で、「患者のやる気を引き出すことで行動変容を導く」ことです。
このSTEPは、特定のステージ(重症度)に関わらず、すべての歯周炎患者に共通して行われるものであり、歯周治療における「絶対に欠かせない大切な基礎」と位置づけられています。
STEP1で目指す具体的な目標は、以下の2点です。
・歯肉縁上バイオフィルムのコントロール
・リスク因子のコントロール
これらの積み重ねが、歯周治療全体の成否、すなわち歯周炎のコントロールに直結します。また、STEP1の達成度は、続くSTEP2:「歯肉縁下へのアプローチ」やSTEP3:「歯周外科」の治療成果を大きく左右することも強調されています。
では、STEP1のインフォグラフィックでは、何が「青(推奨)」とされているのでしょうか。 順番に見ていきましょう。
歯肉縁上のバイオフィルムのコントロール
ここでは、歯肉縁上のバイオフィルムを効果的にコントロールするには、患者自身の行動変容を通じた口腔衛生の改善に加え、専門家による機械的プラークコントロールとプラークリテンションファクターの管理が重要ということが示されています。
歯肉縁上のバイオフィルムをコントロールするために、行動変容というのは大切なポイントとなってくるでしょう。



リスク因子のコントロール
歯周治療においてリスクファクターの管理は非常に大切であり、 特に、喫煙と糖尿病に対する介入は推奨されています。





EFPガイドラインの限界点を知る
EFPガイドラインですが、いくつかの限界点も指摘されています。これらを理解した上で臨床応用することが重要です。
・アウトカムの問題:評価の多くが「歯が抜けるかどうか(真のアウトカム)」ではなく、「ポケットの深さや出血量(代理のアウトカム)」に頼っている。
・期間の問題:研究の追跡期間が6〜9ヶ月と短いものが多く、長期的に歯を守れるかはまだ十分わかっていない。
・一般化の問題:大学病院など理想的な環境での研究が多く、一般の歯科医院の日常診療にそのまま当てはめるのはむずかしい場合がある。
・患者視点の不足:「通院の大変さ」「治療費」といった患者にとって重要な視点が弱い可能性が指摘されている。
・利益相反(COI):専門家と企業の関係が完全に中立とは言い切れない可能性もある。
まとめ
STEP1は、すべての歯周炎患者に共通して行い、再評価をし続けることが大切です。
そしてSTEP1の目的であるバイオフィルムのコントロールとリスク因子のコントロールは、歯周治療には絶対に欠かせない大切な基礎であることを理解しましょう。
次回は、STEP1の評価を経て行われるSTEP2:「歯肉縁下へのアプローチ」について、インフォグラフィックを読み解きながら解説します。


