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・侵襲度が高いサイナスリフトに革命?!藤岡直也先生がエクストラワイド・ショートインプラントを用い、既存骨に初期固定を得て、低侵襲かつ短期間で完結できる新しい治療コンセプトを紹介! ・いま注目を浴びている「Minimalismに基づいたインプラント治療」とは? |
執筆者:藤岡直也
はじめに
従来、垂直骨量の乏しい上顎臼歯部のインプラント治療においては、組織侵襲度が高いサイナスリフトを伴うことが多いため、治療期間が長期に渡る。それに対し、エクストラワイド・ショートインプラントを用い、既存骨に初期固定を得て、低侵襲かつ短期間で完結できる新しい治療コンセプトは、患者にも術者にも恩恵をもたらす治療であると考えている。
本稿では、いま注目を浴びている「Minimalismに基づいたインプラント治療」のコンセプトに則り、インプラント治療を行った症例を供覧する。
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初診時資料
患者情報:58歳女性
主訴:他院からの紹介で、右上6番歯根破折によりインプラント希望で来院

破折した右上6番の口腔内写真(左)とデンタルX線写真(右)
破折を起こしている頬側近心根付近は骨吸収が大きく、上顎洞底までの垂直骨量は5mm程度であった。

右上6番のCT画像
また、患者は遠方より来院されたため、少ない来院回数で短期間での治療を希望された。
エクストラワイドショートインプラントを用いたグラフトレスサイナスリフト
今回はエクストラワイドショートインプラントを用いて、グラフトレスサイナスリフトを行うこととなった。
グラフトレスサイナスリフトは、従来のサイナスリフトとは違い、術後2ヶ月半という短期間で最終上部構造の装着までを行える。

従来の治療方法とエクストラワイドショートインプラントを用いたグラフトレスサイナスリフトの違い
CTでのシミュレーション

抜歯窩の近遠心の骨壁と上顎洞底の皮質骨、インプラント先端でのモノコーチカルサポートにより初期固定を得られると想定。
また、Osseodensificationを応用することで、水平・垂直方向への骨内移動による骨の圧縮(Compaction Auto Grafting)と自家骨による上顎洞粘膜の挙上(Sinus Auto Grafting)を図る。
インプラントは、既存骨で一次安定を得つつ、上顎洞への影響を必要最小限に抑える目的で直径7.0mm×長さ7.0mmを選択した。
Minimalismに基づいたインプラント治療
1.抜歯
頬側の近遠心根、口蓋根を分割して、歯肉や根間中隔を破壊しないように愛護的に抜歯を行う。抜歯後、徹底的に不良肉芽を除去する。
2.起始点のマーキング
PVRを試適、Round diamond 3mmで起始点をマーキング、Initial shaperで位置と角度を決定する。この時点で、最終補綴物における適正なインプラントの位置の確認を行う。

不良肉芽除去後の抜歯窩(左)とPVRを試適した状態(右)の口腔内写真
3.ドリリング
Densah burを用いて、VT1525(2.0)で正回転でドリリング、洞底骨を意図的穿孔した。続いてVT1828(2.3)〜VS3238(3.5)まで、穿孔した作業長より1mmアンダーで逆回転でドリリング。以降はVT3545(4.0)〜VS5258(5.5)まで作業長に戻して逆回転でドリリングを行った。最後にセレクションガイドドリル6.0・7.0で形成を行い、埋入窩の形成を終えた。
この際、上顎洞粘膜の一部を穿孔したが、上顎洞粘膜の穿孔は長期的な副鼻腔の健康に影響を与えないとされている1)。そのため、骨補填材を使用せず、上顎洞への過度の突出を避けるため7.0mmのショートインプラントをそのまま埋入した。

Densah burでOsseodensificationを応用することで、骨の圧縮による高密度化と垂直方向に圧縮された骨ができる。それによってインプラント窩形成時に、上顎洞粘膜は挙上される。
1)Abi Najm S, Nurdin N, El Hage M, Bischof M, Nedir R. Osteotome Sinus Floor Elevation Without Grafting: A 10-Year Clinical and Cone-Beam Sinus Assessment. Implant Dent. 2018 Aug;27(4):439-444. doi: 10.1097/ID.0000000000000793. PMID: 29958186.
4.インプラント体埋入
Any One インプラント直径7.0mm×長さ7.0mmを埋入した。ISQ値は77。抜歯窩とインプラントとの間隙に骨補填材を填入し、PEEKテンポラリーアバットメントを装着、コラテープで被覆した。

インプラント体埋入後の口腔内写真
5.プロビジョナルクラウンの装着
オペ直後にスクリュー固定PVRを作製した。

即時PVR装着後の口腔内写真(左)とデンタルX線写真(右)。Osseodensificationにより、骨の緻密化と補填材を用いない上顎洞底部の挙上を図っている。
術後経過

術後8週の口腔内写真とCT画像。上顎洞内に炎症は認められない。
Osseodensificationの自家骨の押し上げによって上顎洞底部が挙上されている。ISQ値は79。二次安定が獲得されたので口腔内スキャナーで光学印象を行った。

最終補綴物装着後の口腔内写真(左、右上)とデンタルX線写真(右下)
歯肉縁形態の連続性は維持されている。治療期間は10週。Non matching Connectionのインプラントの骨縁下埋入であるため、MBLのリスクは少なく、プラットフォーム上アバットメント周囲に新生骨の形成が期待できる。
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本ケースのように垂直骨量が少ない上顎臼歯部において、Minimalismのコンセプトに基づき、エクストラワイド・ショートインプラントを用いて、骨補填材を用いない上顎洞挙上、十分に初期固定が得られる抜歯即時埋入を行えば、即日にPVR装着が可能となり、患者の治療期間中のQOLの低下を防ぐことができる。
また、手術回数も1回のみで、上部構造をわずか10週で装着できる、低侵襲でかつ短期間治療が可能であると考える。
この必要最小限の侵襲で最大限の効果を目指した治療は、患者と術者の双方に対して多くの恩恵をもたらす治療であると考える。
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