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・歯科領域ではどのような医療事故が報告され、どんな傾向が見られる? ・「医療事故情報収集等事業2024年 年報」から読み取る、歯科医療現場が今後注視すべき安全対策のポイントとは? |
はじめに
公益財団法人日本医療機能評価機構が公表した「医療事故情報収集等事業 2024年 年報1)」によれば、2024年に報告された医療事故総数は 5,911件。そのうち、歯科領域に関連する報告も一定数含まれており、臨床現場における安全対策の方向性を改めて見直す契機となっている。
1):公益財団法人日本医療機能評価機構「医療事故情報収集等事業2024年 年報」
歯科医師・歯科衛生士が関与した事故
報告件数を職種別に見ると、
・歯科医師:113件
・歯科衛生士:6件
・歯科技工士:0件
と記録されている。医師や看護師に比べれば数は少ないが、歯科特有のリスクに直結する事例が目立つ点が特徴である。
診療科別の事故件数
診療科別の分析では、
・歯科:35件
・矯正歯科:2件
・小児歯科:4件
・歯科口腔外科:91件
と報告されている。
他科に比べ少数ではあるが、「抜歯部位の取り違え」「器具やPTPシートの誤飲・誤嚥」といった事例が含まれており、重大事故へ直結し得ることに注意が必要である。

歯科診療所の参加と情報共有の重要性
2024年12月末時点で、2,752施設の歯科診療所が医療事故情報収集事業に参加している。これは前年に比べ大幅な増加であり、2023年10月に開始された「歯科ヒヤリ・ハット事例収集等事業」が背景にある。
現場からは、
・「歯科の事例をもっと増やしてほしい」
・「外来や待合室でのインシデントも取り上げてほしい」
・「歯科用薬剤に関する情報が欲しい」
といった声が寄せられており、歯科独自のリスクマネジメントに資する情報提供が求められている。
再発防止に向けた留意点
歯科領域で多く見られる事例は、
・部位誤認による処置ミス
・診療中の誤飲・誤嚥
・器具管理や伝達不備による事故
などである。これらはダブルチェックの徹底やスタッフ間の情報共有、患者説明時の確認プロセス によって防止できる可能性が高い。
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事故件数は相対的に少ないが、歯科診療特有の事故は患者安全に直結するものが多い。
歯科医療従事者としては、最新の事例を積極的に把握し、自院の安全管理体制に反映することが不可欠である。


