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・日本デンタルショーで一際多くの歯科医師の注目を集めていたのが、株式会社ナカニシのブースで発表された新しい5倍速コントラアングルハンドピース『Ti-Max Z99L』。 ・100°アングルヘッドによって口腔内へアクセスしやすくなった『Ti-Max Z99L』の魅力に迫る! |
執筆者:WHITE CROSS編集部
はじめに
9月26〜28日にかけて開催された日本デンタルショー。最新の歯科医療機器が一堂に会するこのイベントで、一際多くの歯科医師の注目を集めていたのが、株式会社ナカニシ(以下、ナカニシ)のブースで発表された新しい5倍速コントラアングルハンドピース『Ti-Max Z99L』である。
日々の臨床で求められる精密さや耐久性、そして術者の負担軽減。これらの要求に応えるべく開発されたというこの新製品は、一体どのような進化を遂げているのか。今回は、Ti-Max Z99Lの特徴を一つひとつ紐解きながら、開発に込められた着想に迫った。

日本デンタルショー2025ナカニシブース
新しい5倍速コントラアングルTi-Max Z99Lの特徴
Ti-Max Z99Lには、術者のパフォーマンスを最大化させるため、ナカニシの技術が惜しみなく投入されている。ここでは、特に注目すべき特徴を詳説する。
「100°アングルヘッド」によって臼歯部遠心への優れたアクセスを実現
Ti-Max Z99Lの一番の特徴、それは「ヘッドの角度」。ナカニシの従来のコントラアングルハンドピースの多くが90°に近い角度設計であったのに対し、Ti-Max Z99Lでは100°という絶妙な角度を採用した。
これは口腔内の生理的なカーブを分析し、導き出された角度であり、特に臼歯部遠心といったアクセスしづらい部位への到達性を改善する。
さらに、チェアポジションの自由度を高め、精密な施術をサポートする。

100°アングルヘッドによって、臼歯部へのアクセス性が向上
バーのスリップや芯ブレのリスクを低減させる、新チャック機構「DURAPOWER CHUCK」
高トルクでの切削時におけるバーのスリップや芯ブレは、形成精度を損なうだけでなく、安全性にも関わる重大な問題である。
今回Ti-Max Z99Lに搭載された「DURAPOWER CHUCK」は、従来モデルから把持力を大幅に向上させた新しいチャックメカニズム。バーのスリップや芯ブレのリスクを低減することで、長時間の切削に耐える高い耐久性と安定した切削操作をサポートする。

ギアの構造を最適化することで、従来比2倍の耐久性を実現
Ti-Max Z99Lでは、ハンドピースの心臓部ともいえるギア内部の歯車の数や形状、材質をゼロベースで見直し、構造を最適化。これにより、ハンドピースの切削耐久性が、従来品に比べ、2倍以上に向上。日常臨床での切削や度重なる滅菌にも対応する高い耐久性を実現した。

左:従来のコントラアングル Ti-Max Z95L、右:新コントラアングル Ti-Max Z99L
施術状況にあわせて切替可能な「2Way 注水方式」
Ti-Max Z99L は、術者の多様なニーズに応え、「2Way 注水方式」を搭載。
歯への熱損傷リスクを低減するミスト注水と、チップエアによるエアロゾル飛散防止を目的としたジェット注水を、術者が状況に応じて選択でき、施術の自由度を向上させる。

左:チップエアによるエアロゾル飛散防止を目的としたジェット注水、右:歯への熱損傷リスクを低減するミスト注水
開発担当者が語るTi-Max Z99L誕生の背景
これらの機能は、どのような着想と挑戦から生まれたのか。実際にTi-Max Z99Lの開発に携わ
った小坂知久氏へのインタビューを通じて、その裏側に迫った。

Ti-Max Z99L商品化担当の小坂知久氏
Q.今回のTi-Max Z99Lは、どのような経緯で開発が始まったのでしょうか?
実は、今回の特徴的な機能のいくつかは、数年前に発売した当社のタービンで先行して採用し、ご好評をいただいていた技術なんです。
例えば、100°のアングルヘッドという試みや新しいチャック、注水方式などは、2年前に発売したタービンのフラッグシップモデルで初めて搭載しました。タービンで培ったこれらの最新技術を、多くの先生方が日常的に使用される5倍速コントラにも展開することで、製品ラインナップ全体の核となるフラッグシップモデルを作りたい、という想いから開発がスタートしました。
また、5倍速コントラしか使わないという先生方にも、当社の最新技術を体感していただきたいという狙いがあります。
Q.最大の特徴である「100°アングルヘッド」の狙いは何でしょうか?臨床ではどのようなメリットが生まれますか?
一番の狙いは、臼歯部へのアクセス性の向上です。
特に6、7番の遠心側の支台歯形成などでは、開口量の少ない患者さんだとハンドピースと前歯部が干渉し、アクセスしにくいケースがありました。そこでヘッドに100°の角度を持たせることで、これを回避しやすくなります。従来のコントラアングルハンドピースと比べて、わずか8°の差ですが、この差がスムーズなアクセスを可能にします。かといって、前歯部で使いにくいということもありません。あくまで全体のバランスを向上させるための設計です。

Q.耐久性が大幅に向上した点も注目です。ギアとチャックの耐久性がそれぞれ約2倍になったと伺いました。
はい。まずギアに関しては、内部構造を見直したことで、切削時の耐久性が従来モデルの約2倍以上に向上しました。そしてバーを保持するチャックについても、従来モデルの約2倍の耐久力を実現しています。これにより、強い力がかかった際にバーが滑ってしまい、切削力が十分に伝わらないといったケースを大幅に低減できました。
日々の臨床でハードにお使いいただく先生にも、より長く安心して使用していただけると考えています。
Q.カタログには載らないような、隠れた改良点があれば教えてください。
安全性の面で、メインテナンス後の残留オイルによる発熱を抑制する構造を取り入れたことです。
これまでのコントラアングルハンドピースは、始業前にハンドピースを試運転した際、ヘッド内部に残ってしまったオイルが熱を持ってしまい、「少し熱いな」と感じることがあったかと思います。Ti-Max Z99Lは、ギアの構造変更やベアリング周りの工夫によってオイルが溜まりにくい設計になっており、従来より発熱を抑えることに成功しました。これも安全に、そして快適に使っていただくための重要な改良点です。
Q.これだけの改良を実現する上で、もっとも苦労されたのはどの部分ですか?
やはり、ヘッドの角度を100°に変えたことで、内部の構造を根本からガラッと変えなければならなかった点です。

従来モデルとは内部構造がガラッと変わったTi-Max Z99L
特にギアの噛み合う場所が増え、検討すべき項目が飛躍的に増加したため、設計担当者は非常に苦労していました。開発チーム内では、作動音や振動もかなり低減されているという実感があるため、こういった体感的な部分もデータとして示せるようにし、先生方の健康にも貢献できる製品にしていきたいと考えています。
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ナカニシがTi-Max Z99Lで示したのは、単なるスペックの向上ではない。それは、術者の身体的負担を極限まで減らし、持てる技術を最大限に発揮させることで、患者により質の高い医療を還元したいという、明確なビジョンである。
日本デンタルショーでのお披露目を経て、いよいよ臨床の現場へと届けられるTi-Max Z99L。この一本のハンドピースが、今後の歯科治療のスタンダードを塗り替えていくことは間違いないだろう。
ナカニシでは、製品に関する詳細な情報提供やデモ依頼を随時受け付け中。製品保証やサポート体制についても整えている。
興味をもたれた先生方は、ぜひ下記のウェブサイトから問い合わせていただきたい。



