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・歯肉炎と比較して、ステージ4の歯周炎の管理コストは200倍?!FDIワールドデンタルコングレス2025上海のシンポジウムでは、歯周病学の世界的権威であるMaurizio Tonetti教授が登壇。 ・他にも歯周病がもたらす全身への影響から、エビデンスに基づく具体的な臨床アプローチ、各国の実情に至るまで、多角的な議論を展開。今回はその内容をダイジェストでレポート! |
執筆者:WHITE CROSS編集部
はじめに
9月18日に開催されたFDIワールドデンタルコングレス2025上海のシンポジウムでは、歯周病の予防と管理における最新の知見が共有された。本シンポジウムには、歯周病学の世界的権威であるMaurizio Tonetti教授、臨床における化学的プラークコントロールを専門とするPaula Matesanz教授、そして中国における口腔衛生の現状に詳しいWensheng Rong教授が登壇。

写真左からPaula Matesanz教授、Maurizio Tonetti教授、Wensheng Rong教授
歯周病がもたらす全身への影響から、エビデンスに基づく具体的な臨床アプローチ、そして各国の実情に至るまで、多角的な議論が展開された。今回は、その講演内容を要約し、これからの歯周病管理の鍵となるポイントを報告する。
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第1部:歯周病がもたらす「障害」と「経済的負担」― 予防にシフトすべき理由(Maurizio Tonetti教授)
Maurizio Tonetti教授はまず、歯周病を単なる口腔疾患としてではなく、QOL(生活の質)を著しく低下させる「障害」として捉える重要性を強調した。
重度の歯周炎は世界で6番目に多い疾患であり、歯を失うことによる障害は患者にとって大きな負担となる。さらに、約20年前に主要な医学雑誌で口腔内の炎症と全身の炎症との因果関係が証明されて以来、歯周炎は慢性炎症性疾患や死亡リスクを高める一因となることが広く認識されるようになったと述べた。特に糖尿病との関連は深く、歯周の健康が糖尿病の全身管理にも影響を及ぼすことが示されている。

Maurizio Tonetti教授
Tonetti教授は中国のデータを例に挙げ、歯周組織の健康を維持できているのは若年層でさえ少数派であり、年齢とともに歯を失うリスクは急激に高まると警鐘を鳴らした。この問題は経済的な側面からも深刻であり、歯肉炎の管理コストと比較して、重症化したステージ4の歯周炎の管理には少なくとも200倍の費用がかかるという試算を示した。また、イタリアのような国では、歯科治療費の約半分が、歯周病によって失われた歯を補うための費用に充てられている現状を指摘し、「歯を失わないようにするための費用が不足している」と語った。

このような背景からTonetti教授は、エビデンスと臨床家の経験を統合した『EFP S3レベルの臨床ガイドライン1)』の重要性を説いた。このガイドラインでは、治療を以下の4つのステップで体系的に捉えている。
ステップ1:行動変容とリスク因子(OHI、モチベーション、歯肉縁上クリーニングなど)のコントロール
ステップ2:歯肉縁下に対する機械的アプローチ
ステップ3:ステップ1・2で改善しなかった部位への外科的治療などの追加的アプローチ
ステップ4:サポーティブペリオドンタルケア(SPT)による長期的な健康維持
結論として、歯周病の負担が世界的に増大する中、もっとも費用対効果が高い戦略は「予防と早期治療」、すなわち「歯肉炎段階での管理」であると力説し、講演を締めくくった。
1)Sanz M, Herrera D, Kebschull M, Chapple I, Jepsen S, Beglundh T, Sculean A, Tonetti MS; EFP Workshop Participants and Methodological Consultants. Treatment of stage I-III periodontitis-The EFP S3 level clinical practice guideline. J Clin Periodontol. 2020 Jul;47 Suppl 22(Suppl 22):4-60. doi: 10.1111/jcpe.13290. Erratum in: J Clin Periodontol. 2021 Jan;48(1):163. doi: 10.1111/jcpe.13403. PMID: 32383274; PMCID: PMC7891343.
第2部:臨床における抗菌性洗口液の役割 ― エビデンスに基づく補助的アプローチ(Paula Matesanz教授)
Maurizio Tonetti教授が示したマクロな視点を引き継ぎ、Paula Matesanz教授は、日々の臨床における具体的な予防・治療戦略、特に抗菌性洗口液の役割について詳細に解説した。
Matesanz教授はまず、歯周病管理の基本は患者自身による機械的プラークコントロールであるが、スキルや時間的な制約からすべての患者が適切に実践できるわけではない、という現実的な課題を提示。このような状況においては、抗菌性洗口液の補助的な使用が大きな助けになるとした。
また、歯周病の予防には2つのレベルがあり、それぞれの段階で洗口液が貢献できると説明した。
一次予防:歯肉炎の発症を防ぐ段階。洗口液はプラークコントロールを補助し、歯周組織を健康に保つのに役立つ。
二次予防:歯周炎治療後の再発を防ぐ段階。SPT期間中の炎症コントロールを助ける。

Paula Matesanz教授
複数の研究をまとめたシステマティックレビューでは、特定の有効成分を含む洗口液が、歯肉炎および出血を有意に改善することが示されている。Tonetti教授が提示したEFP S3レベルの臨床ガイドラインにおいても、歯周治療のステップ1(セルフケアの徹底)やステップ4(SPT)において、補助的な消毒薬の使用が「考慮される可能性がある」と記載されており、その有効性が認められていることを紹介した。
では、どの製品を選ぶべきか。Matesanz教授は、クロルヘキシジン(CHX)に加え、エッセンシャルオイル(EO)や塩化セチルピリジニウム(CPC)を含む製品が、プラーク指数と歯肉炎指数の抑制に有効であることが実証されていると述べた。特に洗口液は、口腔内全体に有効成分を効率的に分散させることができ、患者にとっても使いやすいという利点があるという。
また、Matesanz教授は、スペイン歯周病学会とともに2年をかけて作成したコンセンサスレポート「Principles For oral health(口腔保健の原則)2)」について言及した。このレポートは、臨床医が化学的プラークコントロールからもっとも利益を得られる患者を特定するのに役立つものであり、洗口液の使用が特に推奨される患者像として、以下のような局所的・全身的要因をもつケースを挙げた。
局所的要因:プラーク量に比して歯肉の炎症が強い・歯並びや修復物などにより清掃が困難な部位がある・インプラント周囲の管理が必要
全身的要因:全身疾患を有する・免疫力が低下している・高齢など、機械的清掃だけでは不十分なリスクをもつ
これらのエビデンスに基づき、抗菌性洗口液を「機械的コントロールの補助」として適切に位置づけ、患者ごとに最適なものを選択することの重要性を強調した。
スペイン歯周病学会が作成した『Principles For oral health』
2)Principles For oral health(スペイン歯周病学会)
第3部:中国における口腔衛生の課題と洗口液への期待(Wensheng Rong教授)
Wensheng Rong教授は、中国における口腔衛生の現状と課題について報告した。
中国では、歯周炎が中高年における歯の喪失の主な原因であり、非常に蔓延している疾患であると指摘。その背景には、口腔衛生習慣の課題があるという。中国では1日2回歯を磨く成人は47%にとどまり、補助的清掃器具の使用率はさらに低いという実情がある。
このような状況を改善するため、中国では専門家らがコンセンサスを形成し、軽度の症状すなわち歯肉からの出血や口臭といった初期段階でのセルフケアと早期介入の重要性を国民に啓発していると述べた。
そしてRong教授もまた、機械的清掃の限界に言及。ブラッシングだけではプラークの約50%しか除去できず、歯間部の清掃が不可欠であると強調した。その上で、補助的なツールとして洗口液の有効性を示す複数の臨床研究結果を紹介。機械的な清掃に加えて洗口液を日常的に使用することで、プラークコントロールの効果が有意に高まり、歯肉の健康状態が改善されることをデータで示した。

Wensheng Rong教授
講演の後半では、ライフステージに応じた洗口液の活用方法を提案した。
小児・青少年:う蝕予防と、思春期に増加する歯肉炎の対策として推奨
妊婦:つわりなどで口腔清掃が困難になりがちな妊娠期の健康維持をサポート
最後に、専門家が患者一人ひとりの状況に合わせて適切な製品を推奨し、正しい使用方法を指導することが、国民の口腔衛生レベルを向上させる鍵であると結論づけた。
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3名の講演者に共通していたのは、歯周病管理の根幹は患者自身による日々の機械的プラークコントロールであるという点、そしてその効果を最大化し、限界を補うために、エビデンスに基づいた化学的プラークコントロール(洗口液)を補助的に活用することが極めて有効であるという二つの視点である。
歯周病が全身の健康を脅かす疾患であることが常識となった今、歯科医療従事者には、より包括的なアプローチが求められている。Maurizio Tonetti教授が示したように「予防」こそがもっとも効果的な戦略であり、Paula Matesanz教授とWensheng Rong教授が詳述したように、そのためのツールとして抗菌性洗口液は大きな可能性を秘めている。
日々の臨床において、患者のリスクや口腔内の状況を的確に評価し、適切なセルフケア指導の一環として、エビデンスのある製品の活用を提案していくことが、患者の生涯にわたる健康維持に貢献するであろう。

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