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・多くの患者と近距離で接し、粘膜や唾液、血液などへの曝露が日常的に発生する職業であり、常に感染のリスクが高い環境下にいる、歯科医療従事者。 ・感染リスクが高くなる要因の一つとして挙げられる「エアロゾル」。今回はそんなエアロゾル感染を防ぐ処置前洗口について、エビデンスベースで解説! |
執筆者:佐野喬祐先生
はじめに
歯科医院で働く歯科医療従事者が、常に感染のリスクが高い環境下にいることは周知の事実である。この事実は、新型コロナウイルス感染症の流行に際しても大きく話題となった。
私たち歯科医療従事者は、多くの患者と近距離で接し、粘膜や唾液、血液などへの曝露が日常的に発生する職業である。そのため歯科医院では、常時、感染対策を講じる必要があることはいうまでもない。
今回はそんな高い感染リスクと隣り合わせで働き続ける私たち歯科医療従事者が知っておくべき、身近で簡単な感染対策についてお伝えしたい。
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歯科医療従事者の感染リスクを高める「エアロゾル」
他の職業と比較して感染リスクが高い要因の一つとして、歯科特有の「エアロゾル」の存在が挙げられる。
エアロゾルは厳密には医学用語ではないが、近年多用されるようになり、広く認知されている用語である。簡潔に説明すると、「空気中に浮遊する微細な液体または固体の粒子」のことである。
歯科治療においては、タービンや超音波スケーラー、エアポリッシャーなどの使用時に、唾液・血液・水などが微粒子化され、空気中に長時間浮遊する。これがエアロゾルである。肉眼で認識できる水滴はスプレーミストとよばれるのに対し、エアロゾルは肉眼では見えず、病原微生物を含む可能性がある。
身近な例を挙げれば、匂いの粒子もエアロゾルとして鼻腔に到達する。このように目に見えないが故に、対策が困難となるのである。

エアロゾル感染はどう対策する?
エアロゾルによる感染対策は、大きく以下の2つに分類することができる。
① エアロゾルを発生させないための対策
② 発生したエアロゾルによる感染を軽減させる対策
今回は、② に含まれる「処置前洗口」について解説する。
発生したエアロゾルによる感染を軽減させる簡便な方法に、洗口液を用いた処置前の洗口(Pre-procedural Mouth Rinse: PPMR)がある。PPMRの実施により、口腔内から発生するエアロゾル中の細菌量を著しく減少させられることがわかっている1)。

診療開始40分後の超音波スケーリング時の空気中浮遊細菌の減少率(グラフはKenvue社より提供)
抗菌性のある製品を使用したPPMRは、歯科治療中に発生するエアロゾルやスプラッターに含まれる口腔内微生物のレベルを低下させる可能性がある。DAHZ(ドイツ歯科衛生に関するワーキンググループ)やRKI(ロベルト・コッホ研究所)、CDC(米国疾病予防管理センター)でも処置前洗口は推奨されており、歯や粘膜を洗口することによって唾液や粘膜上のマイクロバイオーム(微生物叢)は大幅に減少する2)。
これは、エアロゾル中の微生物量を軽減する上で有効であるとともに、患者自身の感染予防策として、易感染性の患者や創閉鎖を伴う歯科外科手術においても推奨されている。安全かつ簡便に実施可能でコストも低いため、優れたエアロゾル感染対策といえるだろう。

1)Fine DH, Furgang D, Korik I, Olshan A, Barnett ML, Vincent JW. Reduction of viable bacteria in dental aerosols by preprocedural rinsing with an antiseptic mouthrinse. Am J Dent. 1993 Oct;6(5):219-21. PMID: 7880461.
2)William G. Kohn, Amy S. Collins, Jennifer L. Cleveland, Jennifer A. Harte, Kathy J. Eklund, Dolores M. Malvitz. 監訳 満田年宏, 丸森英史. 歯科医療における感染管理のためのCDCガイドライン 2003年版. p40-41.
PPMRにおいて推奨される洗口液の種類
PPMRには、以下の成分を含む洗口液が推奨されている。
・クロルヘキシジングルコン酸塩(CHX)
・塩化セチルピリジニウム(CPC)
・ポビドンヨード
・エッセンシャルオイル(EO)
日本では薬機法の関係上、海外で用いられるような高濃度のCHX配合洗口液は使用できない。香味やコスト、効果などを総合的に評価すると、日常的な使用にはエッセンシャルオイル(EO)配合の洗口液が有利であると考えられる。EO配合洗口液の代表的な製品としては、歯科用のリステリン®(販売元:株式会社松風)がある。
PPMRの注意点
PPMRで特に留意すべきは、洗口時間である。文献により推奨時間はさまざまであるが、多くは30〜60秒とされている。洗口の際は、咽頭後壁(喉の奥)の粘膜まで洗い流すイメージで行うことも重要である。また、使用にあたってはメーカーが推奨する用法・用量を遵守していただきたい。

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今回は、数あるエアロゾル感染対策の一つとしてPPMRについて解説した。PPMRは低コストで簡便、かつ安全に実施でき、日常臨床に速やかに導入可能である。ただし、PPMRはあくまでも補助的な感染対策であることを忘れてはならない。
近年、EO配合洗口液は「抗菌作用」と「抗炎症作用」の二重効果により、プラーク形成を抑制し、歯肉の炎症を軽減することで、歯肉炎予防に有用な手段であることもわかっている3)。PPMRでEO配合洗口液を使用することは、患者のセルフケアへの導入に繋がる可能性も秘めていると考えられるのではないだろうか。
エアロゾル対策の一環として、標準予防策に加えてPPMRを習慣化することは、患者と医療従事者の双方を守る有効な手段であるため、ぜひ実施を検討していただきたい。
3)Cortelli SC, Cortelli JR, Holzhausen M, Franco GC, Rebelo RZ, Sonagere AS, Queiroz Cda S, Costa FO. Essential oils in one-stage full-mouth disinfection: double-blind, randomized clinical trial of long-term clinical, microbial and salivary effects. J Clin Periodontol. 2009 Apr;36(4):333-42. doi: 10.1111/j.1600-051X.2009.01376.x. Epub 2009 Mar 11. PMID: 19426180.
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