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・「令和6年歯科疾患実態調査」の結果(概要)が公表! ・8020達成は過去最大値?4mm以上の歯周ポケットを有する15〜24歳が急増した? |
はじめに
厚生労働省は6月26日、「令和6年歯科疾患実態調査」の結果(概要)を公表した1)。
これは、今後の歯科保健医療対策の推進に必要な基礎資料を得ることを目的とし、昭和32年から実施しているもの。
今回の調査は、前回の令和4年度歯科疾患実態調査の結果から、翌年4月から新たにスタートした「歯科口腔保健の推進計画(第二次)」の進捗度を測るための「基準点(ベースライン)」として設定され、今後の具体的な施策を推進するために活用する予定である。
令和6年歯科疾患実態調査の期間や対象は、以下の通り。
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・調査期間:令和6年10~11月 ・調査対象:令和2年国勢調査の一般調査区から475地区(各道府県あたり10地区、東京都のみ15地区) を無作為に抽出した当該地区(令和6年国民健康・栄養調査の調査地区と同じ)内の満1歳以上の世帯員 ・被調査者数:14,695 人 ・調査方法:質問紙調査ならびに調査対象地区内の会場で、歯科医師が調査対象者の問診と口腔診査 |
この記事では、歯科医療従事者が知っておくべき主要な調査結果を抜粋し、解説する。
8020達成は過去最大!61.5%に到達
今回の調査でもっとも注目すべき結果は、「80歳で20本以上の歯を有する者」の割合が61.5%(推計値)となり、前回調査の51.6%から大きく向上した点である(表1、図1)。

表1 20本以上の歯を有する者の割合の年次推移(永久歯:45歳以上)(画像は出典1より引用)

図1 20本以上の歯を有する者の割合の年次推移(永久歯:45歳以上)(画像は出典1より引用)
過去の調査と比較すると、「20本以上の歯を有する者」の割合は年々増加傾向にあり、特に80〜84歳で上昇した。
一方で、喪失歯を有する者の割合は年齢とともに急増し、75~79歳で89.3%、85歳以上では96.0%に達した (図2)。1人平均喪失歯数も、70代で6本を超え、85歳以上では13.7本となった(図3)。

図2 喪失歯を有する者の割合(永久歯:15歳以上)(画像は出典1より引用)

図3 1人平均喪失歯数(永久歯:15歳以上)(画像は出典1より引用)
未処置う蝕の状況は、男女差が顕著に?
未処置のう蝕を有する者の割合は、全体で28.2%という結果となった。(表2、図4)。
特に、小児期の5〜9歳は1.4%、10〜14歳は2.9%と非常に低い数値であるが、15〜29歳の成人期に差し掛かると22.3%と急激に上昇している。このことから、今後は成人期の定期歯科健診の受診を促すことが非常に重要であるといえる。
また、性別で見ると、ほとんどの年齢階級で男性の方が女性より未処置う蝕を有する者の割合が高いという結果であり、50~54歳では、男性が44.1%に対し、女性は22.3%と顕著な差が見られた。

表2 未処置のう蝕を有する者の割合(永久歯:5歳以上)(画像は出典1より引用)

図4 未処置のう蝕を有する者の割合(永久歯:5歳以上) (画像は出典1より引用)
4mm以上の歯周ポケットを有する者の割合は、55歳以上の各年齢階級で50%を超える
4mm以上の歯周ポケットを有する者の割合は、55歳以上の各年齢階級で50%を超えた(表3、図5)。
特に65歳以上では、年次推移で罹患率が概ね増加傾向にあり、残存歯数の増加とともに歯周病管理の必要性が高まっていることが示された。
また、今回の調査では15〜24歳成人期で24.7%と、過去の調査と比較して初めて20%を超えた。

表3 歯周ポケット(4mm以上)を有する者の割合、年齢階級別(15歳以上、性別) (画像は出典1より引用)

図5 歯周ポケット(4mm以上)を有する者の割合の年次推移、年齢階級別(15歳以上) (画像は出典1より引用)
フッ化物応用の経験を有する者の割合は、70.2%
フッ化物応用の経験を有する者の割合は、70.2%であった(表4、図6)。

表4 フッ化物応用の経験の有無(1歳以上) (画像は出典1より引用)

図6 フッ化物応用の経験の有無の割合、年齢階級別(1歳以上)(画像は出典1より引用)
また、年齢階級別に見ると、14歳以下の小児におけるフッ化物応用の経験率は72.5%に上る。特に、6歳においては、経験率が86.3%ともっとも高い値を示した(表5、図7)。

表5 フッ化物塗布・フッ化物洗口・フッ化物配合歯磨剤の使用の経験、割合、年齢別(1~14歳)(画像は出典1より引用)

図7 フッ化物塗布・フッ化物洗口・フッ化物配合歯磨剤の使用の経験、割合、年齢別(1~14歳)(画像は出典1より引用)
応用方法別の内訳としては、フッ化物歯面塗布の経験率が67.3%、フッ化物洗口が18.5%、フッ化物配合歯磨剤の使用経験率が74.4%という結果であった。前回調査ではフッ化物塗布経験者の割合は41.5%であったことから、20%近く上昇した結果となった。
この結果から、プロフェッショナルケアとしての歯面塗布と、セルフケアの基本となる歯磨剤の使用が広く浸透している一方、フッ化物洗口の普及にはさらなる推進が望まれることが示唆される。
口腔衛生への意識は高まっている?患者のセルフケアと受診行動
「毎日歯をみがく者」の割合は97.2%に達した。毎日2回以上ブラッシングする者の割合は年々増加を続けており、今回は80.0%であった(表6、図8)。

表6 歯ブラシの使用状況の推移(昭和44(1969)年~令和6(2024)年)、総数(1歳以上)(%)(画像は出典1より引用)

図8 歯ブラシの使用状況の推移(昭和44(1969)年~令和6(2024)年)、総数(1歳以上)(画像は出典1より引用)
また、過去1年間の歯科検診の受診率は全体で63.8%であった(表7、図9)。受診機会としてもっとも多かったのは「(かかりつけ)歯科医院での定期的な検診(健診)」で55.7%という結果となった。

表7 過去1年間に歯科検診(健診)を受診した者の割合、受診機会別(1歳以上)(画像は出典1より引用)

図9 過去1年間に歯科検診(健診)を受診した者の割合、受診機会別(1歳以上)(画像は出典1より引用)
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時代とともに、口腔の健康に対する国民の意識が上がっていることが示されつつある歯科疾患実態調査。
令和6年歯科疾患調査の結果は、8020達成率が大きく向上するなど、口腔の健康に対する国民の意識が上がっていることが示唆された。
また、未処置のう蝕を有する者は、特に60歳以降のすべての年齢階級で30%を超えており、高齢になるほどう蝕リスクの管理が重要になる。
加えて、かかりつけ歯科医への定期検診が受診機会としてもっとも多いという結果は、歯科医院が地域における予防拠点として一定の役割を果たしていることが示唆された。
今後の歯科医療においては、予防を中心とした小児期からの口腔機能管理や、継続的なメインテナンスをより推奨していく必要があると考えられる。
今回の調査は、臨床や教育、行政の各現場で活用すべき基盤資料となるため、今後の診療戦略として活用していただきたい。


