・子どもをもつ保護者250名を対象に「むし歯予防に対する知識と意識の実態調査」を実施。 ・甘い食べ物・飲み物など「食」に関する意識は?フッ化物(フッ素)に関する知識不足も? |
はじめに
WHITE CROSSは、5月28日、乳幼児〜10代の子どもをもつ保護者250名を対象に「むし歯予防に対する知識と意識の実態調査」を実施した1)。
調査概要
(1) 調査方法:インターネット調査
(2) 調査対象:乳幼児〜10代の子どもの保護者
(3) 回答数:250サンプル
(4) 調査実施日:2025年4月22日(火)~25日(金)
この調査は、本日6月4日、むし歯の日をきっかけに、より多くの患者さんに予防歯科の知識をアップデートし、日々適切なセルフケアをしていただくことを目的に行われた。
記事では、一般向けに発信した情報を、歯科医療従事者向けに一部改変。診療のスキマトークに、または口腔衛生指導の参考にしてみてはいかがでしょうか。
1)むし歯は知識で予防する?! 一般保護者の「知識と意識」を大調査 / 6月4日むし歯の日(PR TIMES)
Q:子どものむし歯予防の対策として日常的に行っていることは?
今回の調査では、約半数の保護者が「毎食後に歯磨きをさせている」と回答。また、寝る前に保護者が仕上げ磨きをしている割合も36%と高い傾向にあることがわかった。
文科省が発表している「令和6年度学校保健統計」2)によると、むし歯のある子どもの数は昭和後期から減少の一途を辿っており、令和6年の数値は過去最低を更新している。今回の調査結果だけを見ると、食後の歯磨き習慣の定着がう蝕予防に大きく影響している可能性が伺えた。
Q:むし歯の経験有無と日常的な歯磨き習慣は?
次に、「むし歯の経験有無」と「歯磨き習慣」の関係を調査。
これまでに、一度もう蝕になったことがない子どもと、う蝕になったことがある子どもとを比較したところ、「毎食後の歯磨き」「寝る前の仕上げ磨き」の割合に差があり、いずれもう蝕になったことがない子どもの方の割合が高いことがわかった。
これら結果から、寝る前の仕上げ磨きは、う蝕の有無に大きく影響していそうだと考察できる。
この結果は、どのように捉えられるだろうか。歯科衛生士のお二人は、以下のようにコメントした。
川﨑さをり先生(祥南歯科・矯正歯科医院/歯科衛生士)以下、川﨑先生:TOP3に歯磨きやフッ化物使用などの適切な予防習慣が入ってることは良いことですね。一方で、むし歯になりやすいお菓子や甘い飲み物など「食」のことが上位にランクインしていないことには懸念を感じます。
平澤一美先生(坂田歯科医院/歯科衛生士 )以下、平澤先生:むし歯予防=歯みがきの根強さを感じます。しかし、3位にフッ化物の使用が入っていることから、予防の考え方が昔よりも定着してきたのではないかと思います。フッ化物の正しい使用方法がさらに広まっていき、あと数年後には「フッ化物の使用」が「歯みがき・仕上げ磨き」を上回るといいなと思います。
仕上げ磨きは何歳までやるべき?
一方保護者からは、「何歳まで仕上げ磨きをすれば良いかわからない」といった声も多くあり、歯科衛生士のお二人は、以下のようにコメント。
川﨑先生:「小学生のうちは」とおすすめしています。いつか卒業できるように、自分磨きの後に、仕上げ磨きで磨き残しチェックをしましょう。保護者のチェックでは、ときどき「染め出し液」を使うとお互いにわかりやすいと思います。また、歯科医院でのメンテナンスの日に子ども自身の「自分磨き」だけで来院し、歯科衛生士に歯磨きスキルをチェックしてもらうと仕上げ卒業の参考になるかと思います。
平澤先生:親御さん自身がその子に任せられると思ったときで大丈夫ですが、歯の交換期(乳歯が抜けて永久歯に生え変わる時期)など、変化の多い時期には時々見てあげてほしいとは思います。
Q:甘い食べ物・飲み物など「食」に関する意識は?
歯磨きの習慣が定着してきている一方で、食べ物に対する意識は、「むし歯になりやすいお菓子を控えている」が全体で7%、「ジュースなど甘い飲み物を控えている」が全体で10%と、かなり低い結果となった。
年齢別で見ると、年齢が上がるに連れ意識が低くなっていく傾向が明らかになった。
川﨑先生:多くの保護者さんはもちろん食も大事と認識されていると思いますが、歯磨きしているから大丈夫だと思っている、または、食も気をつけなければと考えているものの実施に至っていない、といったことがあるかもしれないです。
Q:特にむし歯になりやすいおやつは何だと思う?
「むし歯になりやすいおやつ」についての意識では、あめ、キャラメルなど「歯にくっつきやすいもの」が66%、次いで、ケーキ、チョコ、クッキーなど「洋菓子全般」が43%という結果になった。
また、ガムなど「口の中に長く残るもの」は19%で、あめ、キャラメルなど「歯にくっつきやすいもの」の66%に比べるとかなり低い数値である。
ナッツ・スルメなど「しっかり噛む必要があるもの」は6%、おにぎり、チーズ、無糖ヨーグルトなどの「軽食」は4%と、う蝕になりにくいおやつと一般保護者には考えられているということが伺えた。
歯科から伝えるおやつガイド
実際に、う蝕のなりやすさはどのような要素が影響するのか。「歯科から伝えるおやつガイド」(「以心塾」 医療従事者によるスタディグループ)の、おやつの選び方3つのポイントを参考にしていただきたい。
① 砂糖の摂取量
WHO(世界保健機関)の基準では、1日の砂糖の摂取量の目安として、3歳未満は極力避ける、3〜5歳は約16gまで、6歳以降も25gを超えないということが示されている。
例えば、ショートケーキ1つ(100g)に含まれる糖分は約30g、チョコレート1枚(60g)では約26gで、果汁100%のジュースであっても250mlあたりの糖分は約25g。「おやつ」と認識している食べ物に、どれくらいの糖分が含まれているのかを意識することが大切である。
また、糖分の中でも「遊離糖(ゆうりとう)」と呼ばれる食品や飲料に、製造・調理時に加えられた糖(砂糖・蜂蜜・シロップなど)はより注意が必要。果物そのものはOKだが、果汁100%であってもジュースに加工した場合は遊離糖となる。
② 食形態
糖分とは別に「食形態」という観点も重要なポイント。例えば、「噛まずに食べられるもの」、「口の中に残りやすいもの」、「だらだら食べになりやすいもの」は、よりう蝕になりやすいと考えられる。
ジュースやソフトクリームなどは、「噛まずに食べられるもの」に含まれ、「口の中に残りやすいもの」には、グミやキャラメルなどの歯にくっつきやすいと考えられているお菓子の他にも、ポテトチップスやお煎餅なども含まれる。
最近は子どもたちの間でもグミ人気が過熱してきており、「グミが原因と思われるむし歯が増えてきている」という歯科医師の声もあるので、注意が必要だ。
その他、「だらだら食べになりやすいもの」としては、あめやチューイングキャンディなどが挙げられる。
③ おやつを食べる回数
おやつを食べる回数は、多ければ多いほどう蝕に繋がりやすいという傾向が明らかになっており、多くても1日2回までとすることが推奨されている。
Q:フッ化物(フッ素)に対する意識は?
歯磨き粉などの商品に配合されることが多い「フッ化物(フッ素)」についての意識では、「むし歯に効果があり積極的に使いたい」という保護者が57%と過半数を超えていた。
一方で、「むし歯に効果があるかわからない」と答えた方が25%で、フッ化物(フッ素)に関する知識不足も伺える。
また、「むし歯に効果があるが体に悪そうなので使いたくない」は6%、「むし歯に効果があるが費用がかかる等の理由で使わない」12%と、フッ化物(フッ素)の活用にネガティブな意識を持つ保護者も一定数いることがわかる。
フッ化物(フッ素)は、う蝕を防ぐ効果が科学的に証明されており、歯の表面を強くし、酸に溶けにくくすることで、う蝕の原因となる「脱灰(だっかい)」を防ぐことが知られている。また、初期う蝕であれば、自然に修復される「再石灰化(さいせっかいか)」も助ける働きをもつ。
「フッ化物」と「フッ素」の違いを知っていますか?
ここまで、「フッ化物」と「フッ素」を併記していたが、実は両者はまったく異なるものを表す。今回の調査では、「フッ化物」と「フッ素」の違がわからないと答えた方が63%もいることがわかった。
たびたび混同されるこの2つの名称だが、厳密にいうと「フッ素」は元素の名前であり、自然界で単体で存在することはない。一方、「フッ化物」はフッ素と別の物質を合わせてう蝕に効果のあるものとして加工されたものを表す。歯科医院で塗布したり、歯磨き粉に配合されたりしているのは「フッ化物」であることを、認識させていくことが大切である。
なお、WHO(世界保健機関)や日本の厚生労働省も、フッ化物を適切に使用することで効果的にう蝕の予防ができるとしている。
ただし、フッ化物の使用量には注意が必要
フッ化物は体に安全なものとはいえ、当然のこと過剰に摂れば害になる。
日本口腔衛生学会や日本小児歯科学会、日本歯科保存学会、日本老年歯科学会の4学会が合同で公開している「4学会合同のフッ化物配合歯磨剤の推奨される利⽤⽅法」の中で、年齢に応じた適切な使用量の目安がわかりやすく示されているので、こちらもぜひ参考にしていただきたい3)。
3)4学会合同のフッ化物配合歯磨剤の推奨される利⽤⽅法【普及版】 (日本口腔衛生学会・日本小児歯科学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会)
う蝕は”知識で予防”する時代に!一般保護者へのアドバイスは?
歯磨きに対する抵抗感は、子どもそれぞれで異なり、仕上げ磨きを嫌がる子どもへの対応に頭を悩ませる保護者から質問されることも多いのではないだろうか。
無理に押さえつけることは逆効果になることがあるそう。対応方法としては、保護者から寄せられた仕上げ磨きの工夫では、「歌を歌ってあげる」「歯磨きの動画を一緒に見てから磨く」「同じ時間に家族全員が歯磨きをする」などが挙げられる。各家庭に合ったやり方を指導できると良いだろう。
また、毎食後に歯磨きをさせ寝る前の仕上げ磨きもしっかり行っている保護者であっても、「ちゃんと磨けているのかわからない」「くまなく磨く方法がわからない」といった不安を抱えているケースも。
このような保護者の不安に対して、平澤先生は、以下のようにアドバイスを行った。
そもそも、むし歯予防の観点からいえば、くまなく完璧に磨く必要はないのです!むし歯は知識で予防するものと心得ましょう。
また、甘いお菓子や飲み物を控えるといった食習慣で対策することも重要。「甘いお菓子やジュースは家には置かない」、「特別なときだけ」というようなルールを作って、上手に付き合えるようになると良いですね!
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6月4日は、むし歯の日。歯科医療従事者の皆さんは、う蝕に関する最新の知識はアップデートできていますか?
子どものいるご家庭だけでなく、すべての患者に正しいう蝕予防の知識を指導を行い、国民全体のむし歯に対する知識が向上することに期待したい。
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