・昨年から歯科界で大きな話題となっている「ブルーラジカル P-01・ペリミル」。今回は、両者をいち早く導入した村川昇先生にインタビューを実施。 ・臨床現場ではどのように活用されているのか、どのような患者さんに適応するのか、他にも治療時の重要ポイントについて伺った。 |
はじめに
過酸化水素水と青色レーザーを活用した「ラジカル殺菌」という新たな歯周治療のアプローチ。その代表格ともいえるのが、昨年から歯科界で大きな話題となっている「ブルーラジカル P-01(以下、ブルーラジカル)・ペリミル」ではないだろうか。
今回は、関西でいち早くブルーラジカル・ペリミルを導入し、ブルーラジカルによる歯周治療をすでに数百症例以上行っている村川昇先生に、導入の背景や臨床での実感、そして今後の展望についてお話を伺った。
村川昇先生とブルーラジカル
「この治療方法なら歯を救える…」ブルーラジカル導入前に感じた確信。患者さんの治療後の反応は…?
Q1. ブルーラジカル P-01・ペリミルを導入されたきっかけは?
2024年4月、ブルーラジカルセミナーの案内が医院にDMで送られてきて、歯科医師の娘と一緒に受講してみようとなったんです。そして関西で初めて開催されたブルーラジカルセミナーに参加し、開発者の東北大学・菅野太郎教授から直接ご指導をいただきました。
セミナーでは、過酸化水素水と青色レーザーという安全性の高い素材を組み合わせた「ラジカル殺菌」というアプローチに、まず大きな衝撃を受けました。「この組み合わせは良い!」と思うと同時に、「この治療をあの患者様に使ってあげたいね」と、娘と意見が一致したことを鮮明に覚えています。「この治療方法なら、これまで救えなかった歯を残せるかもしれない」と感じたんです。
厚労省承認の医療機器であることも安心材料となり、その日のうちに導入を決断しました。
セミナー受講時の村川先生(左から2番目)と菅野教授(右から2番目)
Q2. 実際に使ってみて感じた患者さんの変化は?
まずいちばんに感じたのは、フラップ手術と比較したときの痛みの少なさと回復の早さです。
ブルーラジカルは、フラップを開けずに進行した歯周病に直接アプローチできるため、術後の腫れや不快感が少なく、患者様も治療効果を早く実感されています。
従来の歯周治療において、私はあまり歯周病菌そのものを意識してこなかったというのが正直なところです。しかし、ブルーラジカルでは目に見えないバイオフィルムを破壊し、歯周病菌をしっかりと殺菌できている実感があるんですよね。
治療中は、バイオフィルムの破壊と殺菌をイメージして施術を行い、「歯石除去」を行うための強い側方圧をチップにかけるのではなく、「殺菌治療」としてポケット底にチップを届かせることを意識して施術しています。この意識をもつことが術後の痛みを抑え、効果を高めるポイントのように感じますね。
何より治療後の歯肉の改善度が早く、患者様の自覚症状としても翌日からすぐに変化が感じられるようです。1・2・3週間後と期間が経つにつれて、どんどん出血や排膿が改善され、劇的な回復がみられます。特に重度歯周病の患者様では、その改善が顕著です。
ブルーラジカルによる治療後の歯肉の変化を確認する村川先生
また、患者様からかけられる言葉にも変化が見られました。
次のメインテナンスは、いつが良いですか?
この歯も診てもらえますか?
歯磨き、きちんとできていますか?
といった声が多く上がるようになり、治療後にご自身から積極的に声をかけてくださるようになりました。患者様全体の、歯を守る意識や主体性が高まってきていると感じます。
患者にブルーラジカルの説明を行う村川先生
ブルーラジカルを使用する上で重要なポイントや適応症は?
Q3. 導入後の運用で工夫していることは?
導入当初から、照射出力のキャリブレーションや施術時間の調整、超音波振動の出力などを何度も試行しながら、患者様ごとの反応を細かく観察して治療を行っています。
現在は私を含めた歯科医師3名が、ブルーラジカルによる治療を行っています。しかし歯周治療は、スタッフの協力なしには決して成功しません。そのため、スタッフとも意見を出し合い、「どうすれば患者様の不安を減らし、痛みを抑えつつ、最大限の殺菌効果を得られるか」を日々模索。治療フローの最適化を図ってきました。
すると、スタッフの意識にも明らかな変化が出てきたんです。
「今までの歯周治療とはまったく違う、新しい歯周病菌殺菌治療」としての役割を担っているという自覚が芽生え、患者様の歯を守りたいという思いが全体に根付いてきていると感じます。
スタッフの方とディスカッションを行う様子
Q4. 治療において特に重視されていることは?
カウンセリングを非常に重視しています。
患者様のお悩みを“聴く”ことが、治療の出発点であり、もっとも大切だと考えています。
ブルーラジカルによる治療のチェアタイムは基本的に60分ですが、治療のアポイントの前に、カウンセリングと歯周組織検査を行うアポイントを必ず1回とります。カウンセリングを40分、検査を20分程度の時間配分で行うことが多いですね。
事前カウンセリングは、臨床経験が豊富で、比較的年齢層が近い私が担当しています。「なぜ歯周病が進行してしまったのか」「どんな不安や希望があるのか」といった背景を丁寧に聴くことで、一緒に治療を進める関係が自然と生まれます。「自分が歯周病だと気づいていなかった」「抜歯をすすめられて初めて深刻さを知った」といったお話を聴く度に、そこからが本当のスタートだと感じています。
実は当院では、ブルーラジカルの治療を受けた患者様からのクレームが1件もないんですよ。
まずは患者様の抱えている課題を聞き出して、患者様が「何を求めているか」を明確にすること。また、それに寄り添う姿勢を見せ続けること。これがブルーラジカルによる治療の満足度を高めていることに繋がっているのではないかと思っています。
併せて、目に見えないバイオフィルムや歯周病菌への理解を深めていただくことも大切にしています。
村川先生が患者さんにカウンセリングを行う様子
Q5. すべての患者に適応するわけではないと思いますが、治療選択の考え方は?
おっしゃる通り、すべての方にブルーラジカルが適しているわけではありません。
歯周ポケットが浅い場合や炎症が軽度な場合は、まず生活習慣の見直しやブラッシング指導を優先すべきです。また、外科処置や再生療法が適している場合もありますし、抜歯が最良の選択になることもあります。
歯科医師側から一方的に治療を押し付けるのではなく、患者様が自ら治療方法を選び、納得して取り組めるようにアプローチすることを大切にしています。
ただし、進行した歯周病に対しては、ブルーラジカルの強力な殺菌効果が非常に有効です。
また、ブルーラジカルはその治療効果だけでなく、患者様のモチベーション向上やセルフケアへの意識づけにも繋がっているんですよね。今まで何を言ってもプラークコントロールが改善しなかった患者様が、ブルーラジカルの治療を受けたことでモチベーションが上がり、PCR60%台から20%以下に下がったなんてこともありました。
将来的には、外科治療や再生療法とブルーラジカルを組み合わせた「ブレンド治療」によって、さらに重症の歯周病にも対応できるのではないかと期待しています。
大切なのは、「いま患者様がどのステージにいるのか」を見極めて、納得のいく治療方針を一緒に選ぶことではないでしょうか。ブルーラジカルは、その中の選択肢の一つとして、非常に価値のある治療だと思っています。
ブルーラジカルによる治療を行う様子
今後の展望とブルーラジカルフォーラムへの意気込み
Q6. 今後の展望や取り組みたいことは?
今後はブルーラジカル・ペリミルを通じて、次の3つを軸に取り組んでいきたいと考えています。
① 歯を守る歯周病菌殺菌治療
② 歯周病の再発リスクを減らす治療
③ 患者の悩みに寄り添うカウンセリング
さらに、ブルーラジカルの応用範囲として、インプラント・むし歯治療・根管治療への展開も視野に入れています。菅野太郎教授のご指導のもと、日々の臨床の中で実践を重ねていきたいと考えています。
また、7月13日(日)に開催される「ブルーラジカルフォーラム2025」では、実際の症例や知見を他の先生方と共有できることを楽しみにしています。
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技術だけでなく、患者との向き合い方や医院全体の意識までをも変革していくブルーラジカル。
村川先生の取り組みは、これからの歯周治療の新たな可能性を感じさせてくれるものであった。ブルーラジカルが迎える今後の新たなステージが楽しみである。