・ZEISSのマイクロスコープEXTARO 300を使い倒すためのアイデアが満載! ・トップランナー達が語る「マイクロ精密歯科治療」の実際とは? |
はじめに
今回は、2024年11月14日に開催された特別セミナー「マイクロ精密歯科治療を極める」の内容をお伝えする。本セミナーは、マイクロスコープによる精密歯科治療の実際と、マイクロスコープの活用方法をまとめたセミナーである。
マイクロ精密歯科治療のトップランナーによる特別セミナー
講師の先生は、マイクロデンタル院長内山徹哉先生、デンタルクリニックK院長渥美克幸先生、岩田歯科医院院長岩田淳先生の豪華3名だ。
セミナーで使用されているマイクロスコープは、カールツァイス社のEXTARO 300。EXTARO 300は筆者も愛用している機種であり、精密歯科治療にも、治療の記録にも活用できるカールツァイス社のフラグシップモデルである。
セミナーではEXTARO 300による精密歯科治療の実際が供覧された
マイクロスコープの選定にお悩みの先生方や、マイクロスコープの活用方法を模索している先生方にとって、本稿が一助となれば幸いである。
カールツァイス社EXTARO 300による視認性の向上
マイクロスコープの使用による利点として、最初に挙げられるのは視認性の向上だろう。セミナーでは、カールツァイス社のハイエンドモデルEXTARO 300の特長が数多く紹介された。
なぜEXTARO 300は「よくみえる」のか?3名の講師による、熱い講演の内容を抜粋してお伝えする。
TureLight mode
マイクロスコープ下で診療を行う際には、適切な光源を確保することが重要だと内山先生は語る。EXTARO 300の光源は、RGBのバランスが整っており、肉眼で見たようなリアルな色彩表現をマイクロスコープ下でも体感できる。
EXTARO 300の通常時の強拡大像。肉眼で見る場合と比べても遜色ない色彩表現である。
ダイレクトボンディング時にはオレンジフィルターを使用することが一般的であるが、TrueLight modeを使用することで、CRの重合を抑えつつ、通常の色彩に近い状態での充填操作が可能となる。
オレンジフィルターとTrueLight modeの差は歴然。ダイレクトボンディングにEXTARO 300を活用したい場合には、TrueLight modeが効果を発揮するだろう。
筆者が使用しているEXTARO 300にはTrueLight modeは搭載されておらず、オレンジフィルターでダイレクトボンディングを行っている。オレンジフィルターに切り替えた直後には、色味の違いによる違和感を強く感じることもある。
MORAインターフェイス
MORAインターフェイスは対物レンズ部分を左右に振っても、鏡筒部分は動かないシステムだ。鏡筒部分が固定されることで、頭部を動かさずに視野を左右に振ることができる。
マイクロスコープに機動力を持たせるMORAインターフェイス
さまざまな角度でのシームレスな診療が実現できるMORAインターフェイス。ストレスフリーなマイクロ診療のためには必須な機能といえるだろう。
バリオスコープ
バリオスコープは、MORA interfaceが水平的な自由度を提供するのに対し、垂直的な自由度をもたらす。バリオスコープにより幅広い作業距離が実現され、マイクロスコープ本体のポジションを変えることなく、焦点調節が可能となっている。
EXTARO 300に搭載されるバリオスコープ230では、200~430mmという230mmもの広範な作業距離が確保されている。
作業距離が短いと、頻繁にマイクロスコープ本体を上下させなければならず、マイクロ精密歯科治療のストレスにつながる。
MORAインターフェイスとバリオスコープの組み合わせにより、EXTARO 300の機動力は大きく向上する。複数歯に及ぶ補綴修復治療や歯周外科治療では、マイクロスコープに機動力が要求される。
フットワークの軽いマイクロスコープだからこそ、どのような分野の治療でも「マイクロ精密歯科治療」を実践できるのであろう。
Fluorescence mode
Fluorescence modeは、細菌の代謝産物を蛍光発光させることで、う蝕罹患歯質や歯石などの識別をサポートする機能。
第一小臼歯遠心に赤色の蛍光発光を認める。エナメル質に被覆された遠心頬側の象牙質にも赤色の発光が広がっている。緑色に蛍光発光しているのは充填されているレジン。
このモードは医科領域において元々利用されており、腫瘍や血管などを選択的に発光させることで、手術を支援する用途が一般的であると渥美先生は説明した。
医科領域ですでに実績があるFluorescence mode
赤色に発光したう蝕罹患歯質や歯石は、患者用の視覚資料としてインパクトは絶大だ。
また、セミナー中に渥美先生が示したFluorescence modeを使用したレジンコアの除去には感動を覚えた。
近年、CRの物性と色彩表現が向上したため、歯質とレジンの境界の識別に手間取ることがある。供覧された症例は髄腔に感染を認める再根管治療のケースで、レジンコアを除去していくと、徐々に赤色に発光する髄床底が現れてくる。
画像ではわかりにくいが、髄床底が赤色発光しており、まだ一部にレジンコア(緑色)が残存している様子がわかる。
レジンコアとう蝕罹患歯質の除去を進めていくと、ガッタパーチャから離れた部分に線状の赤色発光が現れてくる。結果として線状の発光部分はクラックから細菌がリークしていたことが確認できた。Fluorescence modeはクラックの有無を判断する一助となる可能性が秘められている。
強く発光している三点は、ガッタパーチャが充填された根管口。口蓋根(画像左側)の頬側には、線状に発光する部位を認め、クラックからのリークが疑われる。
感染がない場合では発光しない可能性も考えられるが、一つの臨床ツールとしての活用が期待される。
フィニッシュラインを明視野下に置いた補綴修復治療
マイクロスコープといえば、根管治療に使うというイメージがあるのではないだろうか。しかし、本セミナーを視聴すれば、マイクロスコープが補綴修復治療でも力を発揮することが一目瞭然だ。
EXTARO 300による支台歯形成。フィニッシュラインが明瞭に視認できる。
補綴修復治療にマイクロスコープを導入することで、フィニッシュラインやエナメル質の細部を可視化できると岩田先生は述べる。見えなければ精密な治療ができない事は想像に難くない。
前歯部ラミネートベニアの症例。エナメル質内の形成で、シャープなフィニッシュラインが確認できる。
マイクロスコープがもたらす診療姿勢の改善効果
歯科医療従事者の78%が筋骨格系に障害を抱えているとの論文を内山先生は紹介した。口腔内を肉眼でのぞき込むような診療姿勢を続けていると、頚部や腰部などに過度な負担がかかってしまう。
日々臨床を行っている先生方にとっても実感するところではないだろうか
マイクロスコープ下の診療では、姿勢を正し、正面を見ながら診療できる。自身の体を守ることは、歯科臨床を長く続けていくために不可欠だ。
肉眼の場合、ルーペとマイクロスコープを使用した場合の診療姿勢の変化
視覚資料を生み出すマイクロスコープ
マイクロスコープの視野はモニターを通じて、スタッフや患者と共有される。マイクロスコープを活用することが、ストレスの少ないアシスタントワークにも繋がると解説された。
アシストがうまくいかない理由の一つとして、アシストと術者の視野の違いが挙げられる。歯科医師の視野をモニター表示することは、歯科医師とアシスト間での術野の共有が図られることを意味する。
アシストの目線の先にもモニターを配置することで、より円滑なアシスタントワークが実現できる。
患者への説明においては、マイクロスコープから得られた動画や静止画により、視覚に訴えたコンサルテーションが可能だ。一眼レフカメラによる口腔内写真とは異なり、撮影時に治療を中断する必要がないこともメリットだろう。
内山先生が録画された治療シーンを患者に説明している場面。マイクロスコープに記録された映像を見れば、どのような治療が受けたのか、患者が容易に理解できる。
内山先生が紹介していた診療風景の中で筆者が特に興味をもったのは、歯間ブラシのOHIを行っていた場面。筆者は手鏡を使って歯間ブラシのOHIを行っていたが、マイクロスコープで撮影された鮮明な動画によるOHIの有用性を見せつけられた。
手鏡で見るよりも鮮明であることは言うまでもない。実際には動画で撮影されている。
まとめ
セミナーの最後には質疑応答の時間が設けられ、3名の先生方が丁寧に回答した。
その中でも印象的であった、「マイクロを導入して採算がとれるのか」という質問に対する回答を抜粋する。
セミナー最後の質疑応答の一場面
内山先生:「(マイクロが)ないとだめだと思っている。これからの歯科にとってはなくてはならない。」
渥美先生:「どの面での採算かにもよるが、スタッフの教育の観点では圧倒的にプラスになると思う。マイクロを入れない理由が見当たらない。」
岩田先生:「仕事に楽しみに見出さないと続かない。長い人生でみるとすぐにプラスになって積み重なっていく。技術は衰えるものではなく、それが自分の財産になっていくので十分に採算は取れると思う。」
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