バイタルサインモニタで広がる医科歯科連携 後編 / 片山 莊太郎 - WHITE CROSS 歯科医師向け情報サイト | WHITE CROSS 歯科医師向け情報サイト

医療法人社団仁屋会 片山歯科医院 院長

日本歯科麻酔学会歯科麻酔専門医 片山莊太郎

 

今や、高血圧症や糖尿病といった全身疾患をお持ちの患者さんが来ない日は一日もありません。そのような中でも私たちは、安全で安心な歯科医療を提供しなければなりません。

 

「形に残さなければ実際に行ったことにはならない」というのが今の医療の基本的考え方です。行ったことはしっかりカルテに記載したうえで保険請求を行い、実績を残しておくことが重要です。

 

前回に引き続き、一般歯科開業医である筆者が日常的に行っている全身管理下での一般歯科治療の取り組みをご紹介させていただき、医科歯科連携や「かかりつけ歯科医」機能について私見を述べたいと思います。先生方のご参考になる点があれば幸いです。

 

前編はこちら

バイタルサインモニタで広がる医科歯科連携 前編

 

 

医科歯科連携でかかりつけ歯科医機能を発揮しよう

医科歯科連携は、歯科医院でモニタリングした結果を医科主治医と共有していくことではじまります。前回ご紹介したAfの症例では、かかりつけ医に精査加療を依頼したので、診療情報提供料1(情1)で医科歯科連携を取りはじめることになります。

 

この場合は、

「Afの患者さんに対しモニタリング下で歯周病の定期管理を行っております。本日来院時、いつもより血圧下降と頻脈を認めました。自覚症状はありませんが貴科的ご精査ご加療の程よろしくお願い申し上げます。当院来院時のモニタ結果を添付します。」

といった内容で紹介を行いました。

 

ここで重要なのはモニタの結果を添付しておくことです。医科に客観的なデータを提供することになりますし、また医科主治医に対してもここの歯科医院はモニタを装着して治療しているとの信頼を得ることになります。

 

患者さんとの医療面接で全身状況が得られにくい場合には、あらかじめかかりつけ医から情報を得ておくことが重要です。服薬状況は当然ですが、例えば糖尿病や高血圧症の現症はどうなのか、それらに付随する全身合併症はないのか、そして血液検査結果に異常値はないかなどです。これについては、診療情報連携共有料(情共)で医科とのやり取りが可能です。

 

例えば、

「糖尿病患者さんに歯周治療を行っております。HbA1cが7%以上の場合、歯周炎の進行リスクが高いとされていますので、当院でも管理を強化する予定です。つきましては、貴科的な現症、服薬状況、腎症などの合併症の有無、血液検査結果等につきましてご教示いただけますでしょうか。なお本日来院時のモニタ結果を添付しております。」

という具合です。ここではやはりモニタ結果を添付しておくことが重要です。

 

情1は他の医療機関での診療を必要とする場合に算定されるものでなので、情1により医科歯科間でやり取りが続くことは疑義が生じる可能性があります。この点、情共は患者情報の確認に必要ならば3月に1回の頻度で算定できるので、常に新しい血液検査結果の把握ができます。

 

情共の大きな特徴は、医科点数表にも収載されているため、歯科側からの問い合わせがあれば医科でも情共の算定が可能なのです。歯科側からは歯科治療の予定や口腔内状況、口腔機能検査の評価を情報提供していけばよいでしょう。情共を活用することで、医科と歯科が共同して患者さんの健康管理を行うことができるのです。

 

このような形で医科から情報提供書を得てそれを踏まえて患者さんに健康管理を行った場合には、対象疾患は限られていますが、歯管に加算する総合医療管理加算(総医)が認められています。

 

例えば、糖尿病患者には「HbA1cが7%を下回っています。頑張られましたね。今日のP精検でもBOPが減ってきましたよ。この調子でいきましょう。」

骨粗鬆症患者には「〇年前からボンビバが使われているのですね。今のところレントゲンで問題ないですが、ARONJのリスクを減らしておくよう今後も管理を続けましょう。」

関節リウマチ患者には「CRPが上がってメトトレキサートが増量されたのですね。関節リウマチとPには関連性があることが分かってきたので、引き続きPの管理を続けていきましょう。」

といったように関連医学を踏まえて、口腔のみに留まらない総合的な管理ができるのです。

 

図2 さまざまな連携を通じることで、患者さんの健康管理に関わることができる

 

医管にはじまり情共や情1を活用し医科歯科連携を開始し、さらに総医で全身の健康管理を行っていくのです。医療安全のために始めたモニタリングが発端となって、さらに医科歯科連携を通じて、患者さんの健康管理に関われるようになるのです。

 

スタッフも患者も一緒に取り組む医療安全

当院では、私が最初に患者さんにバイタルサインモニタをつける意義や必要性を説明した後は、実際にモニタをつけるのは歯科衛生士です。装着したらまずは実地指導や機械的歯面清掃から始め、バイタルサインが安定していることを確認して処置に入る流れです。治療後もその日の記録を患者さんに提供しています。

 

バイタルサインモニタの説明の上、装着する

 

いつもモニタをつけていると、歯科衛生士の方から「今日はいつもより血圧が高めですね」といった声掛けがあります。「急いでこられましたか?薬の飲み忘れはないですか?ご体調にお変わりないですか?お手洗いは大丈夫ですか?」といった新たなコミュニケーションが自然と行えます。

 

もちろん患者さんからは「この数字は何?」といった質問があるので、歯科衛生士も的確にモニタについて説明できる知識が必要となります。こういった些細な会話や配慮により、患者さんも参加した院内全体の医療安全につながっていきます。

 

学びの場

モニタを買って装着してはしてみたものの、どう評価したらいいかわからないといったお声もよく聞きます。継続した学習には、ぜひとも日本歯科麻酔学会をご活用ください。ご入会いただければ、学会が主催するさまざまなセミナーに参加が可能となります。

 

年に1度の学会学術集会では教育講座や参加型バイタルサインセミナーを企画しています。また最近では、学会リフレッシャーコースでも開業医向けのテーマを取り上げています。現在、これらの多くがこのコロナ禍によりWeb形式となっているので自宅にいながらオンラインでの参加が可能です。

 

さらに日本歯科麻酔学会では例年、地域の歯科医師会と共催し日本歯科麻酔学会バイタルサインセミナーを各所で開催しています。そして継続した自己研鑽の証しとして、ぜひ日本歯科麻酔学会登録医や登録歯科衛生士を目指していただきたいと思います。

 

まとめ

今、診療報酬でも「重症化予防」のための管理が盛んに謳われています。点数配分も歯の形態回復よりも管理が手厚くされていることは明らかです。図3に、情共や総医が保険収載されたH30年度診療報酬改定前後における当院での管理料の内訳と伸び率を比較したものを示します。

 

医学管理料全体に占める医管、総医、情共、情1の割合が5%から13%に増加し、医学管理料全体も8%増加しました。それに合わせ総点数も増加したことから、医管、情共、総医などの波及効果は単に管理料の増点のみならず診療内容にも影響を与えたことが伺えました。

 

図3 H30年度診療報酬改定前後における当院での管理料の内訳と伸び率を比較したもの

 

医療安全には手間とコストがかかります。しかも目に見えた治療とは異なり、患者さんの理解も必要です。ましてやバイタルサインモニタには初期投資が必要です。

 

しかし、「あなたの安全のためにここまでしっかり対応していますよ。医科の先生にも安全のために情報交換をさせてくださいね。」とお話をさせていただくと、ほとんどの方が喜んでくださいます。

 

かつてバイタルサインモニタの導入費用や手間が原因ででモニタリングが広まらない時代がありましたが、今や医管、情共、総医をうまく活用すれば十二分に診療の幅を広げられます。さらには、重症化予防と健康管理から、地域のゲートキーパーとしてかかりつけ歯科医機能を十分に発揮できる付加価値までついてくるのです1)

 

バイタルサインモニタを使って医科歯科連携に飛び込んでみませんか?

 

参考文献

1)片山莊太郎:社会から求められる歯科医師像~歯科麻酔科的視点から診療報酬改定を読み解く~,JICD,50,89-94,2019

執筆者

片山 莊太郎の画像です

片山 莊太郎

歯科医師・歯学博士

医療法人社団仁屋会 片山歯科医院 院長
歯科麻酔専門医

広島大学歯学部を卒業後、超高齢社会の到来を見据え、医師とコミュニケーションを取れる歯科医師を目指し、広島大学大学院で歯科麻酔学を専攻。現在は、地域医療に根差し、有病高齢者の歯科治療を中心に医科歯科連携を推進しながら、患者の健康管理も行えるかかりつけ歯科医を志す。地域包括ケアシステムにも参画し、行政や多職種との連携にも積極的に関わることで、歯科麻酔のフィールドを開拓。日本歯科麻酔学会や地域歯科医師会を通じ、安全で安心な歯科医療を展開していくため、講演、教育を行っている。

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