
こんにちは。トリップ・ドクターの岸田邦加でございます。今回は私が臨床に取り入れているアロマオイルを使った芳香療法について、お話をしたいと思います。
なぜ歯科分野で芳香療法を行っているのか、そもそも鎮静と関係があるのかと尋ねられることが多々あることから、今回は導入に至った経緯についてお話しさせていただきます。
鎮静の重要性と困難さ
各国で公開されているガイドラインでは、鎮静について「苦痛緩和のために患者の意識を意図的に低下させること」と明記されています。しかしながら、国際的に統一された定義はございません。私自身、医療者でありながら歯科分野には疎く、内視鏡の検査以外では “鎮静”という言葉を病院内でも耳にしたことがありませんでした。麻酔科の皆さんと関わる機会から少しずつ勉強する中で、鎮静という手段は患者様の満足度を大変に高く出来るものと知りました。
一方で全身的な偶発症をも起こしうることから、鎮静に関わる全スタッフに知識と高度な技術が要求されることを痛感しております。
患者様の中には極度に緊張している方や気管支喘息をお持ちの方など、鎮静が必要不可欠なことも多くあり、鎮静が行えないと手術が始まらない症例もあります。そういったとき、麻酔科のスタッフにも大きなプレッシャーがかかります。そのようなストレスフルな環境に耐えることも仕事のひとつと捉え、どの先生方も動揺されるような姿は一切お見せになりません。
しかしながら、ガチガチに緊張されてブルブルと震えている患者様に点滴をとるということは、動く血管に細い注射針を刺すという大変に困難な作業になります。保険外診療の場合には注射針を刺す痛みも最小限に一回の穿刺でこなさなければならず、繊細に確実な手技と気遣いも必要だそうです。勤務後の他愛のない会話からその困難さを知り、大変驚くと同時に、先生方の近くにいる身として何かお手伝いができないかと考えるようになりました。
緊張している患者様と先生方にコメディカルができること
先生方にお聞きしたところ一番多かったのが「患者様の緊張は、麻酔科医にも伝わる。点滴をとる前の緊張感を少しでも緩和してもらえたら嬉しい。点滴をとることさえできれば薬剤を投与できる。」とのことでした。そこで、下記の三点を満たすものを思案しました。
①患者様にリラックスしてもらえる環境を作ること
②全てのスタッフが簡便に行えること
③患者様だけでなく、スタッフ側にも効果があること
そこで、“鎮静”という作業を分析しました。患者様がどの時点から緊張し、どこで緊張のピークを感じているのか、緊張はどの程度持続し続けるのか、スタッフはどのような声かけや動作を行っているのか等を調査しました。下記がその概念図となります(図1)。
図1 患者様の感じる緊張の概念図
その結果、歯科外来での先行研究が多くあったことが決め手となり、芳香療法を導入することとなりました。
これまでの研究から、各自で好みの芳香を使用することは、緊張を緩和する効果をもたらすために重要であることが分かっています。しかしながら皆様ご存知の通り、歯科外来には多様な方々がいらっしゃり、好みも千差万別です。中には芳香自体が苦手な方もいらっしゃいます。そこで、アロマの種類と使用方法についての検討を重ねました。次回はそれらについて書かせていただきたく思っております。
前回までの記事はこちら
第2回「歯科治療中の患者急変!~適切な対応ができますか~ Vol.1」
第3回「歯科治療中の患者急変!~適切な対応ができますか~ Vol.2」
第4回「歯科治療中の患者急変!~適切な対応ができますか~ Vol.3」
第5回「歯科治療中の患者急変!~適切な対応ができますか~ Vol.4」
第6回「遠隔 × 歯科 × モニタリング① ~遠隔地からの全身管理についての研究発表~」
第7回「遠隔 × 歯科 × モニタリング② ~遠隔モニタリング・遠隔鎮静の利点と課題~」
第8回「遠隔シミュレーション(Telesimulation)を活用した歯科医院での患者急変対応コースの開発」
執筆者

岸田 邦加
作業療法士
歯科麻酔サポート専門医院 TRIP DOCTOR
医療コーディネーター・作業療法士
高校在学中、ワールド青年交換プログラム選抜試験に合格し公費でIthaca highschoolに留学。大学卒後、兵庫県立リハビリテーションセンターで身体障害分野を担当する傍ら、特定非営利活動法人きずなが運営する福祉施設でボランティアを行う。障がいをもつ児童と接するうちに重要な早期療育が現場で不足していることに気づき、就学前児童を支援するための枚方市立すぎの木園に就職する。現在は歯科麻酔サポート専門医院TRIP DOCTORで咀嚼・嚥下のためのリハビリや歯科治療に恐怖心があるような心の障がいを抱えた方も対象に、身体・心理の両面からサポートを行う。今後は歯科とリハビリテーション分野が連携のするための架け橋となれるよう、日々奮闘中。
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