明日から始められるラバーダム防湿 パーフェクトガイド / 辻本 真規

従来よりラバーダム防湿というと、どうしても「面倒くさそう」、「別になくても出来るでしょ」、「時間もコストもかかりそう」というネガティブなイメージが強いのではないだろうか。

 

しかし、昨今は若手を中心に、ラバーダム防湿をしっかりしようという流れが出てきたように感じている。

 

ラバーダム防湿に対する患者と歯科医師の意識は違う

内藤らの調査によると、歯科医師がラバーダム防湿をしないのは、「面倒だから」、「患者が痛がるから」という2つが主な理由であった。では、本当に患者は嫌がっているのだろうか?

 

吉川らはラバーダム防湿の不快事項などを調査しているが、患者のラバーダム防湿に対する希望は、ラバーダム防湿をして診療してほしいという方が92%と、ほとんどであった。また、三好ら3 の調査では、ラバーダム防湿が「大学での専門的な処置だと思いますか?」の問いに対して83%の人が「思う」と答えている。

 

つまり、歯科医師側のネガティブなイメージに反して、患者は良いイメージを持っている事が伺える。

 

 

そんなラバーダム防湿の手技が生まれたのは100年以上前、かなり古い歴史を持っている。しかし、行う先生は極少数。これは、大学教育の問題が含まれているのだろう。

 

大学で習うラバーダム防湿は、1歯にかける位のものである。一歩臨床実習に出ると、大学病院にも関わらず、ラバーダム防湿をしている先生が少ない…(大学による)。

 

まず、この時点で、学生のラバーダム防湿への意識は薄れ、そのような状態で、研修医、開業医へと進むと、勤務先では、そもそもラバーダム防湿の器材がなく、「ラバーダム防湿をする事がなくなってしまう」という現状があると思われる。このような状態ではラバーダム防湿は広まるわけがない。

 

また、ラバーダム防湿を教えてくれるセミナーはほとんど見当たらず、ラバーダム防湿に関する書籍も少ないため、ラバーダム防湿を再度臨床に取り入れるという機会がないというのが現状ではないだろうか。

 

まずは最小限の道具を取り入れよう 

ラバーダム防湿はそんなに難しいものではない。一度しっかり覚えてしまえば、一生使える技術である。しかも、導入コストはそれほど高くはない。一方で、ラバーダム防湿の器材は様々なものがあり、どれを選べばいいか分からないという声もよく耳にする。

 

確かに器材の種類は多い。しかも、保険診療においてラバーダム防湿に関する点数はない為、できることならコストを安く取り入れたいところであるが、「安かろう、悪かろう」では臨床上使いにくいのは確かである。そこで、「コスパが良く使いやすいもの」と、「しっかりした作りの物」を組み合わせて取り入れる必要が出てくる。

 

クランプひとつとってもかなりの種類が発売されているが、実はそんなに種類を揃えなくてもラバーダム防湿は可能だ。むしろ、スタッフの在庫管理も減るので、まずは数種類のクランプを揃えることをお勧めする。

 

 

ラバーダム防湿の基礎は “1歯にかける技術” に8割が集約されている

そのように私は思っている。まずは基礎をマスターし、1歯にしっかりラバーダム防湿を出来るようにする。1歯にしっかりかける技術が付いたら、後は少しの応用だけだ。

 

 

特に失敗しやすい1歯のポイントとは?

一見しっかりラバーダム防湿が出来ているように見えて、隙間が空いてしまっている事はよくある事である。

 

 

このような失敗の原因の1つが、ラバーダム防湿をする際のシートの持ち方である。シートの持ち方が適切でないと、図の黄色〇のようにラバーダムシートが隣接面に重なった状態になってしまう。この状態では隣接面にフロスを通すことが困難になる。

 

 

ラバーダムシートにクランプをかけると図のように近遠心のシートがだぶついているのが分かる。このまま歯にクランプをかけると前述した状態になりやすい。

 

 

そこで、図のような持ち方をしてラバーダムシートの近遠心伸ばしてクランプを歯にかける事で、隣接面のシートが重ならずにラバーダムシートをかける事ができる。

 

 

適切にラバーダム防湿が出来た状態では、歯頚部に隙間がなく、ラバーダムシートがかかっている。

 

 

とはいえ、基礎をマスターしても、多数歯にかけるのはハードルが高い!と思っている先生も多いだろう。実は私もそうだった。

 

多数歯にラバーダム防湿をする時に私が一番困っていたのは、どのような間隔、位置でラバーダムシートにパンチングするかという事であった。これがうまくいかずに時間がかかり、多数歯防湿を何度も失敗したが、今では、それも解決した。スタッフにテンプレートを使ってパンチングをしてもらい、あとはかけるだけ。適切なテンプレートを有効活用し、多数歯でもラバーダム防湿をかけられるようになるのは意外と簡単なものだ。

 

 

この続きは、WEBセミナーで解説したいと考えている。これを機会に、皆さんもラバーダム防湿を日常臨床に取り入れてみてはいかがだろうか。

 

 

参考文献

1.内藤 徹,菅 義浩,野村義明 他:ラバーダムの使用状況とその背景因子.J Health Care Dent. 4: 18-23, 2002.

2.吉川 剛正,佐々木るみ子,吉岡隆知,須田英明:根管処置におけるラバーダム使用の現状,日歯内療誌24(3)83~86,2003

3.三好敏郎、板垣彰、遠藤育郎 他:歯内治療時のラバーダム防湿に関する現状と意識調査.日歯保誌 39(1):315~323,1996.

 

続きはWEBセミナー「明日から始められるラバーダム防湿 パーフェクトガイド」で!

WEBセミナー「明日から始められるラバーダム防湿 パーフェクトガイド」では、辻本真規先生に、初心者でも明日からラバーダム防湿を始められるポイントとコツ、導入のメリットと必要な道具、そして単独歯・多数歯防湿など、2時間たっぷり解説いただきました。

 

メッセージをいただいております

 

セミナー詳細は画像をクリック!

執筆者

辻本 真規の画像です

辻本 真規

歯科医師・歯学博士

辻本デンタルオフィス 院長

日本大学松戸歯学部を卒業後、開業医勤務を経て、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科にて歯学博士取得。同大学院齲蝕学分野助教を務めたのち、福岡県にて辻本デンタルオフィスを開院。日本顕微鏡歯科学会の認定指導医を取得するなど、マイクロスコープを用いた根管治療などに尽力し、著書も数多く手掛けている。

LINEで送る

記事へのコメント(0)

関連記事

人気記事ランキング

おすすめのセミナー