[特別寄稿]歯科医院のための感染対策 / 中村 健太郎 - WHITE CROSS 歯科医師向け情報サイト

Shurenkai Dental Prosthodontics Institute 院長

インフェクションコントロール リサーチセンター センター長

博士(歯学)

中村健太郎

 

利益相反(COI)に関する開示はありません

 

 

2020年1月8日にWHOが新型ウイルスを認定してから3ヶ月あまりが経ちました。感染の猛威は強まるばかりで世界中に拡大しており、認定直後の1月30日には国際保健規則の最高レベルの警告である「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」が宣言されました。

 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、不顕性の保菌者すなわち感染の自覚がない保菌者であっても強い感染力を持ち、知らず知らずのうちに感染の連鎖を生み出す特質を備えているようです。また高齢者や有病者などの感受性のある宿主つまり感染を受けやすい人や易感染性患者は重篤化傾向にあり、死に至らしめる感染症であると言えます。

 

連日連夜のニュースによって、日本のすべての人が感染拡大の恐怖と感染対策に強く関心を抱くようになりました。しかしながら、マスクが最大の感染防護具とし、マスクさえ着用していれば感染対策は万全であるとした思い違いが蔓延していることが、感染の連鎖を完全に阻止できない原因の一つであると言わざるを得ません。

 

 

感染の連鎖を阻止するには、発症者や保菌者(感染源)と非保菌者(宿主)をつなぐ感染経路を遮断することが不可欠となります。感染経路には接触・飛沫・空気の3つの経路がありますが、もっとも感染が成立しやすいのは接触経路であり、その90%が手指からの接触経路であることが明らかにされています。飛沫経路からの直接感染よりも、飛沫が付着した汚染部位を無意識に触れてしまう手指からの間接感染が、感染の連鎖を完全に阻止できない最大の原因となります。

 

はからずも、不顕性の保菌者が来院するリスクが常につきまとう歯科医院の日常業務において、口腔内を直接触れるあるいは触れた器材を取り扱う歯科医療従事者は手指の管理に細心の注意を払わなければならないと考えます。

 

 

歯科治療中は飛沫やエアロゾルを遮断するためにマスクの着用も大切なのですが、手指衛生の徹底がきわめて重要であり、その徹底には「グローブの管理」と「手指消毒」が基本となります。日常生活における手洗いとは異なり、一患者さんや一処置ごとの「衛生的手洗い」は手荒れを引き起こし、かえって細菌やウイルス、汚れが手指に付着しやすくなります。汚染されたグローブの管理とグローブ撤去後の手指消毒が、歯科医院における感染対策の核心であると言ってもよいでしょう。

手指衛生の実践については「歯科医療従事者の正しい手指衛生(歯科衛生士2020年4月号 クインテッセンス出版株式会社)」を参考にして頂ければ幸いです。

 

 

また、歯科治療時では患者さんの口腔内が「感染拡大のスタート地点」であり、患者さんの唾液が「感染拡大のメッセンジャー役」となります。それゆえに、患者さんの唾液と接触した器材やグローブ、唾液を含んだ歯科材料、またはそれらに接触した手指や部位もすべて汚染されているもの(コンタミネーション)として予防策(ディコンタミネーション)を講じる必要があります。

 

予防策を講じるうえで、口腔内から唾液が伝播していく汚染経路(コンタミネーションルート)を、下記の6ルートに区分して、各ルート別に感染経路別予防策(トランスミッション−ベースドプリコーション)を必要とします(図1)。

 ①術者の手指

 ②汚染器材

 ③サクションシステム/スピットン

 ④エアロゾル

 ⑤画像検査機器

 ⑥印象体/補綴装置

 

図1

 

また、唾液に含まれる細菌やウイルスは新型コロナウイルスと同様に視覚的には存在判断がつかないので、歯科医院にある器材すべてが唾液に汚染されているかもしれないとする危機感を持たなければならないと考えます。

感染経路別予防策の実践については「決定版 歯科医院のための感染対策 ヨーロッパ基準のインフェクションコントロール(クインテッセンス出版株式会社)」を参考にして頂ければ幸いです。

 

これからの歯科医院における院内感染対策は、手指衛生の徹底を基本に、次の患者さんへの感染経路となる唾液の拡散をいかに阻止していくかが主要であり、そのプロセスのなかで滅菌や消毒の活用が成り立っていると言えるでしょう。

 

 

 

今回の新型コロナウイルス感染症によって、世間が感染拡大の怖さと感染対策の大切さを認知しました。ひいては、患者さんは歯科治療をうける際の院内感染対策に鵜の目鷹の目でチェックしてくることでしょう。今までのような感染対策では患者さんが安心安全であるとした実感が湧きにくいと思われます。

 

逆説的にいえば、厳格な感染対策が歯科医院の特色となり、いわゆる「医院の差別化」につながるのです。さまざまなコンサルティングやマーケティングでも、堅実な歯科医院経営のキーワードは、ズバリ差別化によって集客力を高めることとスタッフの獲得と定着であるとの考えを明らかにしています。近年の横ばいの歯科医院経営にあって、この時期からの感染対策が「安心安全な歯科医院づくり」の有力な差別化として、これからの新しいロジックとなることは間違いありません。

 

 

感染対策の成果は、院内アピールと患者さんのクチコミによって広告となり、かつ歯科感染対策者の育成によって人材の確保となり、結果的に患者さんやスタッフの安心度のバロメーターとなるのです。

 

院内感染対策が患者さんやスタッフにアピールできる、きれいな歯科医院にしませんか。

 

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執筆者

中村 健太郎の画像です

中村 健太郎

歯科医師・歯学博士

Shurenkai 主宰・Shurenkai Dental Prosthodontics Institute 院長
補綴臨床総合研究所 所長・インフェクションコントロール リサーチセンター センター長

愛知学院大学歯学部 冠・橋義歯学講座に常勤として所属後、補綴歯科治療を主軸とした中村歯科醫院を開院し、満15年目にして終院した。終院後には補綴研修機関としてShurenkaiを立ち上げ、研修会(補綴臨床StepUp講座)を通じて補綴歯科治療の後進指導に尽力している。Shurenkaiは関東・中部・近畿・中四国・九州・沖縄の6支部会で構成され、例会を通じて補綴歯科治療の研鑽を積んでいる。2018年には日本補綴歯科学会認定研修機関として認定され、現在は補綴歯科専門医の取得をサポートしている。また、歯科医療機関の差別化として院内感染対策のコンサルタントも担っている。

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