米国補綴専門医が見た風景 後編 Interview with Dr. Kazuhiko Tsuchiya
インタビュー 2024/06/25

米国補綴専門医が見た風景 後編 Interview with Dr. Kazuhiko Tsuchiya

WHITE CROSS編集部

「歯科医療の専門医制度が成立している社会において、専門医として教育を受けた上で日本に帰国した歯科医師」の実態について、米国インディアナ大学補綴科に留学した土屋嘉都彦先生にお伺いするインタビューの後編となる。

 

前編はこちら

米国補綴専門医が見た風景 前編 Interview with Dr. Katsuhiko Tsuchiya


今回は、前回に引き続き土屋嘉都彦先生に、留学の実際や米国専門医帰国後のリアルについて語っていただいた。

 

 

 

ーー主席で卒業し、The John F. Johnston scholarship awardも受賞されたそうですね

非常に光栄なことで、大学にも名前が残ります。

こればっかりは狙ってとれるものではないですから、やってきてよかったな、頑張りが認められたんだなと思いました。

 

卒業式にて

 

 

The John F. Johnston scholarship award

 

 

ーー奥様とは国際結婚だそうですね

タイのジュラルンカン大学出身で、同じ留学生です。インディアナ時代、2年目の後半に出会いました。同学年で彼女の保存修復学のプログラムが2年だったので、彼女の方が先に卒業したんです。

 

大学院卒業時、奥様とともに


僕は付き合うなら結婚を考えるタイプでして、付き合い始めもこのまま結婚すると思っていました。嫁が先にプログラムを終えて、1年間の延長ができたので、それで嫁は大学に残りました。僕が3年目の終わりくらいに、このまま一緒にいるためには結婚しかなかったんですよね。

延長が切れれば彼女はタイに帰りますし、僕も日本に帰るわけですから。だから自然とそういう形になりました。タイ自体が親日の国なので、反対などはされませんでした。

 

でも、文化の違いはでかい。

子どもができるまでは喧嘩したことはなかったんですが、子どもができると日本の文化に入ってもらわなければいけないので、そこから喧嘩が多くなって。大変でしたね。国際結婚は今後増えると思いますが、乗り越えるべきハードルも多いと感じています。

 

 

日本へ帰国。葛藤と新たなチャレンジ

ーー卒業して米国の歯学修士と補綴学の認定専門医を取得。その後すぐに日本に帰られたのですか?

ボード認定専門医になりたかったので、補綴のボード試験を受けて半年後に帰ってきました。

ボードを取らなくても専門医として認められるのですが、専門医のもう一つ上の資格、と言うイメージですね。アメリカのディレクター、いわゆる日本での教授になるためにボード認定専門医の資格は必須になります。ちなみに、現在補綴のボード認定専門医は私を含め日本に3人しかいません。

帰ってきたときは、裸一貫と言いますか、自分自身しかなかったですね。

 

父がITIのフェローだったり、九州インプラント研究会でインプラントの勉強会に誘ってくれたり、デンツプライのつながりで帰国後2、3年目で6回くらいドイツに行って勉強したり。楽しかったです。

今より留学が認知されていない時代だったので、講演をさせていただく機会があったり、その流れで臨床教授に推薦していただいたり。今思うと根拠のない自信だけで走っていました。最近留学して帰ってきた先生を見ても、自信満々だなあと感じるのですが、正直僕もそうだったなと思います。

 

 

ーー帰国後、日本の歯科医療に入ることに違和感はなかったですか?

正直な話、アメリカに帰りたくて仕方なかったですね、最初の2年間は。

独立開業する前は保険治療に納得ができなくて、点数の低さを補うためにかなりの人数を診なければいけないというのができなかった。

 

あとは文化の違いですね。

帰国後、国内の学会に参加した際は、質問をたくさんしていたんです。悪くいうと長いものに巻かれるというのを無視していたので、それでうまくいかないことを経験して、アメリカに戻りたいなと思った時期はあります。

 

ただ、開業して3年経ったこともあり、日本の生活もだいぶ落ち着いてきました。

患者さんに根拠のある治療ができているという自負がありますし、日本の診療スタイルにおいても手応えを感じ始めています。

 

 

ーー2015年、4年前に開業。そのきっかけは何ですか?

どこまで行っても、父の医院は父の医院なんですよ。スタッフも、院長は親父なんです。

結局は親父のやり方になりますし、さらに父の医院は大分県の佐伯市という、かなりの田舎にあるんです。だから最低でも大分だったら大分市内、もしくは福岡とか。子どもの教育も考えると大きな都市に出たいと思っていました。

 

もうひとつの理由は、熊谷先生ですね。予防の流れを勉強させてもらって、これを大分でもやりたいと思いました。そうすると、佐伯市ではなくて大分市という都市が選択肢に上がってきたんです。

医院外観

 

医院内観

 

 

ーー開業後の実感は?

大変です。同じことはもうやりたくないですね。

今だから落ち着いて言えますが、経済面だけ考えると、父の病院を改築する選択肢もあったと思います。
今は、やりたいことはできているのですが、経営上は苦しい場面もあります。ただ、自分でゼロから作った医院なので、ストレスがない診療体系でできていると思います。

 

熊谷崇先生のエッセンスを根底に入れていますが、専門性上、治療に重きを置いているので、予防より治療が主体となっています。

歯科治療は、補綴が中心だと考えています。なぜかというと、歯科治療は治療計画に始まり補綴処置で終わるからです補綴なしに歯科治療を考えたことはありません。

たとえ欠損がない患者さんであったとしても、補綴学の治療計画を立ててお伝えし、見積もりを出し、仕上げていく。どの患者さんにも行っています。

 

正直言うと、補綴で留学した理由の一つは、他の専門よりも入学するためのリクアイアメントが楽であったことなのですが、今は補綴を勉強して本当に良かったと感じています。このおかげで、現在自費率80%を超える医院を築き上げることができていると感じています。

 

 

ーー築山鉄平先生との関係は?

船越先生の勉強会で、姉の紹介で出会いました。同じ時期に留学を考えていたんです。

結果として築山先生が1年遅く留学し、2、3年目にはボストンに遊びに行きました。アメリカでも会いしましたし、築山先生が帰国した際には、一番先に頼んで佐伯に講演に来てもらいましたね。

そのうち、築山歯科の勤務医であった木戸先生が留学したいということで築山先生と共に佐伯に来ました。悩みを聞いて、背中を押したんです。

 

また、個人的に40歳くらいでスタディーグループ持ちたいとは思っていました。木戸先生が帰国した際、築山先生と木戸先生と一緒に「何か、みんなでやりましょう」ということになり、それがきっかけで現在のDENTAL SQUARE JAPANが立ち上がったんです。

 

木戸先生とのミーティング

 

 

ーーDSJの活動で目指す先

予知性の高い治療を行うためには、しっかりと時間をとって診療することが大切です。日本には自費と保険という枠組みがありますが、真の患者利益を考えた際に、保険治療には限界があると感じています。

保険治療がすべて悪いわけではありませんが、保険診療も変わっていかないといけない時期にきていると思います。

 

きちんとした自費治療を実践するために勉強するというのは皆さんのマインドとしてあると思う。そこに応えたいと思っています。

その結果として、医院が豊かになりますから、より一層良い治療が提供できるようになるのではないかと。

 

ちゃんと治療していれば患者さんも快くお金を出してくれるわけですよ。熊谷先生は歯の価値を広めた人だと思います。予防の価値ですよね。自分の歯を残すことは素晴らしいことだと。僕がDSJを通して伝えたいのは歯科治療の価値です

 

お金を出してでもしっかりとした歯科治療が必要だという価値観の醸成をDSJでもやりたいです。

それは巡り巡って、歯科技工士や歯科衛生士の不足問題の解決につながります。安くやっていると、若者から魅力的な業界に見えないんです。もちろん単純に単価を上げただけでは、患者サイドから受け入れられません。医療水準や価値観と一緒に向上させるのが大事。

ある一定以上のエビデンスに基づく正しい治療を実践することで、適正な報酬をいただく。若者にとって魅力的な歯科業界になるよう、業界を盛り上げていける人が増えるといいと思いますし、そのために貢献していくつもりです。

 

 DSJで教鞭を執る土屋先生

DENTAL SQUARE JAPAN

土屋先生の日本での活動の一つに、デンタルスクウェアジャパン(DSJ)があるので、ご紹介したい。

 


DSJボードメンバー

 

DSJは、世界水準で実践可能な日常臨床を習得して頂くことを主旨に、「自立して診査診断し、自律して治療を進めることができる歯科医師」を育成するための臨床コースとして、理念を共有する4人の専門医によって設立された。4名の専門医が今まで国内外で習得してきたことを余すことなく受講生に吸収して頂き、価値の高い歯科医療を自院で実践して頂くことを活動目的としている。
ご興味のある先生は、ぜひコンタクトをとってみていただければと思う。

 

プログラム内容はこちらから

執筆者

WHITE CROSS編集部

WHITE CROSS編集部

臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・歯科関連企業出身者などの歯科医療従事者を中心に構成されており、 専門家の目線で多数の記事を執筆している。数多くの取材経験を通して得たネットワークをもとに、 歯科医療界の役に立つ情報を発信中。

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