採用から始まる「強いチームのつくり方」 / WHITE CROSS編集部

※当インタビューは、オーディオブック「院長の経営成功術 VOL17」より抜粋、編集した内容です。

※本インタビューで紹介される役職や内容は収録時点のものです。

 

TODAY's GUEST

医療法人なかの歯科クリニック 理事長 中野 浩輔先生

 

平成4年、29歳の時に岡山県岡山市に「なかの歯科クリニック」を開業。小高い丘と川に挟まれた田んぼの中という、決して恵まれているとは言えない立地で、ユニット3台で診療をスタート。その後、立地の悪さから経営が立ち行かない状況を打開すべく、自身で経営や最新のマーケティングを学び、数多くの実践から成功ノウハウを開発。現在では、ユニット数11台、スタッフ数40名、医業収入4億円という人気クリニックとして成功している。またマネジメントとマーケティングを学ぶことで、経営成功と歯科医師としての豊かな人生を創造することを目的とした会員制クラブ「歯科医院経営マーケティング協会『Doing』」を主催。マーケティングやマネジメント、不動産投資等について、セミナーや研修会、情報誌の発刊など、積極的に活動を展開している。著書「常識破りの歯科医院経営」、「より白く美しく~幸運を呼ぶあなたの白い歯~」の他、多数、連載や執筆を行っている。

 

母性的なチーフと父性的なサブチーフ

今野 本日は、なかの歯科クリニック様の組織運営の秘訣についてお話を聞かせていただきます。なかの歯科クリニック様では40名という大所帯のスタッフをまとめるために、優秀な幹部の方が活躍していらっしゃるとお聞きしています。実際の組織体制はどのような構成になっているのでしょうか? 

 

中野 そうですね。ドクターは私と副院長。衛生士は、主任が私の妻なのですが、チーフに三宅、サブチーフに田儀という者がいてくれています。

 

今野 チーフとサブチーフがいる。

 

中野 はい。いわゆるチームリーダーも各チームにいるのですが、このチーフとサブチーフがうちの宝でありまして、本当は言いにくいことをスタッフに言ってくれるなど、積極的に活躍してくれています。

 

今野 なるほどですね。よく、スタッフが10名を超えてくる医院では「チーフが必要」と言われていますが、中野先生はどういう基準でチーフを選ぶのか、どういった面を一番大切にされて幹部スタッフを人選しているのかについて教えていただけますか?

 

中野 一番はスタッフから信頼されることですね。

 

今野 スタッフから信頼されること。

 

中野 はい。優秀なスタッフはとても多くいるのですが、「自分が評価されたい」というスタッフは組織として良くないと感じています。一方で、スタッフから信頼されて「彼女が言うことなら聞いてみよう」や、「彼女のために頑張ってみよう」などになると、若いスタッフもしっかり動いてくれる。ただ厳しいだけでは難しくて、真剣にスタッフのことを思ってものを言ってくれているかというのも大事だと思っています。その面において、今のチーフ、サブチーフは、本当にどこでも活躍できるスタッフに育ってくれているので非常にありがたいですね。

 

 

今野 そのお二人は得難い人材ですね。もちろん初めから持っていた部分もあるのかもしれませんが、実際に中野先生が幹部やチーフ育成などで、実際に手間暇かけたり、心砕いたことなどがあったら、ぜひ教えてください。

 

中野 この2名は元々優秀で、実は生え抜きみたいなもので、学生の頃から2人とも知っていました。

 

今野 生え抜きですね。

 

中野 やはり最初から優秀な人を採らないと、後から教育しようと思ってもなかなか難しい面はあるとは思います。

 

今野 ある院長がそろそろ大きくなってきたのでチーフ的な存在が欲しいと。ただピンとくる人材はいないので、今いるスタッフの中から選ぶとした場合、何かアドバイスできるとしたら、その基準やこのような要素を持っている人がいいという点はありますでしょうか。

 

中野 やはりあまり厳しくて父性的な指導をするタイプよりも、母性的な指導するタイプのほうが私は良いかなと思います。しかし、どうしても母性的な指導と父性的な指導、両方とも必要にはなっていきますので、当院の場合は三宅が母性的な指導をしてくれて、田儀が父性的な指導をしてくれているので非常にバランスが取れていると思っています。

 

今野 お二人の組み合わせとバランスが絶妙なのですね。

 

中野 はい。

 

今野 すごいですね。

 

中野 結構厳しい指導者が上に立つと、出来る人はついていくことができますが、中にはそこまで出来ない人もいるので、落ちこぼれていく可能性もありますから、みんなをまとめて同じ方向に導いていこうと思うと、そのような度量も含めてこの2名のようなバランスが必要だと思います。

 

今野 ありがとうございます。チーフ、サブチーフの組織構成については、どちらかといえば母性的な人がチーフで、父性的な人がサブチーフの組み合わせだと良いバランスになっているとのこと。これも大変勉強になりました。

 

今野 次に、なかの歯科クリニック様では、マネジメント上、面談とミーティングを積極的に実施されているとお聞きしました。ミーティングはどのぐらいの頻度で実施されていて、ファシリテートや進行の仕方で特徴的なことや、もしくは中野先生が大事にしていることなど教えていただけますか?

 

中野 ミーティングは毎週水曜日に、診療時間30分切って昼休みを30分とらせてもらって、合計60分の時間をとっています。もちろん前もってテーマを決めて、企画書まではいきませんが今日はこれをするという情報を提供した上で実施しています。第1週目、第2週目ではこれをテーマにするなど決まった内容もあれば、その中で問題になっていること、例えばキャンセル対策の話をしようとか、アポイントをもう少し変えていこうという話をみんなでするようにしています。

あと私が大切にしていることは、ミーティングは一番大事な決議機関みたいな位置づけで、その場で決めたことはきちんとルールに徹底しようと言っています。トップダウンで私が今日からこれをすると決めて通達することもはもちろん大事なことではありますが、ミーティングでみんなが話をして意見を出し合って、具体的な変更点を決めるようにしていることもあり全員で参加してほしいと思っています。

 

今野 なるほど。最終決定でもあり、その場で共有されるオフィシャルな決定事項ということですね。

 

中野 これで決定だから、今日の午後から決めたことを実行し徹底しようということをやっています。

 

今野 ミーティングの進行や事前の議題など準備はどなたがやっていらっしゃるんですか?

 

中野 チーフかサブチーフがやってくれています。女性が多い職場なのでドクターよりも女性に任せています。

 

今野 なるほど。そのような積極性も含めて幹部としての仕事もやっていらっしゃるっていうことですね。

 

中野 そうですね。

 

 

今野 もう一つここで私もお聞きしたかったことが、よくあるケースでチーフ、サブチーフに幹部の仕事をしてほしいということで、ミーティングの運営や決定事項の整備も含めて色々お願いすることが増えてくると思われますが、実際には診療業務が手いっぱいで、幹部の期待する仕事をやる時間が確保出来ないなどがあると思います。そのようなケースでは、後方支援というか、仕事しやすい環境作りなどを含めて、中野先生が後方支援していることはどのようなものがありますか?

 

中野 少しお恥ずかしい話なのですが、おそらく幹部2名はオーバーワークになっていると感じています。昼休みも仕事をしていたり、診療後も残って仕事をしているというシーンがあります。私からは、業務をスタッフへ任せることや、抱え込み過ぎないようにと伝えていますが、なかなか難しいこともあるようです。

 

今野 確かにどこの会社や組織でも起こっていることだと思います。その中でも中野先生はコミュニケーションを大切されているとのことでしたが、特に幹部スタッフとのコミュニケーションで何かポイントになる点や注意していることなどはありますか?

 

中野 そうですね。チーフクラスとは移動ミーティングを3ヶ月に1回行っています。移動ミーティングは院内ではなく場所を移動してのミーティングという位置づけなのですが、場所には少しこだわっています。例えば、岡山で一番流行っているイタリアンのお店やお寿司屋さんなど、普段スタッフだけでは行かないようなお店に行って、美味しいものを食べながら、お酒を飲みながら3時間雑談をするようにしています。

 

今野 なるほど。少し特別な環境を提供しているのですね。

 

中野 そこでチーフやサブチーフのガス抜きにもなりますし、色々な活きた情報も得ることができます。スタッフ全体では月1回を定例の食事会にしていて、不公平感にもなってしまうため一部のスタッフを連れて行くということはしていません。食事会は、全体ミーティング、ドクターミーティングと、幹部の移動ミーティングのみでバランスを取っています。

 

今野 幹部スタッフへの特別感は良いですね。

 

中野 そうです。いつも頑張ってくれているのでガス抜きも兼ねて良いと思っています。でもこれは食事会ではなく、ミーティングだという緊張感でやっています。

 

今野 同時に、食事しながらのリラックスした場面でもあるので、院長の考え方なども共有・理解できる良い機会ですね。

 

中野 そうですね。私の人となりや考え方も知ってほしいと思っています。

 

今野 立場や公平感を大切にしつつ、スタッフとのコミュニケーションを大切にされている素晴らしいチームですね。ありがとうございます。

 

優秀な人材採用の秘訣は「仕事観」をしっかり伝えること

今野 先ほどコミュニケーションについてのお話を聞かせていただきましたが、現在のチーフ、サブチーフをはじめ学生の時から優秀な方を採用するために必要なこと。立地的にもあまり良い所ではないとおっしゃっていましたが、特に採用において知恵や工夫をされていらっしゃると思います。実際に中野先生が実施されている取り組みの中で、上手くいった事例の一部をお聞きできますでしょうか? 

 

中野 受付、歯科助手など国家資格がないスタッフに関しては、基本的にはハローワークから応募になるのですが、当院では、受付と歯科助手の応募者をチーフの三宅が一次面接をしています。

 

今野 チーフが一次面接を応対されるのですね。

 

中野 はい。ある時に一次面接で10人ぐらい連続して不採用にした時期がありました。当然かもしれませんが、ハローワークの担当の方から連絡がありまして、どのような人材を採用したいのでしょうか?という質問をいただきました。明確な採用基準や求める人材像をお伝えしたところ、ハローワークのご担当者がその方針をご理解いただいて、この人は良いからいかがですか?など今は良い方をご紹介してくださる流れになりました。ハローワークの方がファンになってくださると、大変ありがたいですね。

 

今野 これは一つの知恵ですね。

 

中野 担当者と顔を合わせて、当院の考え方をお伝えできることはとても良いと感じていて、今後も続けていこうと思います。

 

 

今野 歯科助手や受付さん採用で具体的な対応について2、3つご紹介していただけるとしたら、どのような方針をお伝えされたのでしょうか?

 

中野 まず先に仕事観についてお伝えしています。

 

今野 根本のところからお伝えされるのですね?

 

中野 はい。当院はこのような仕事観で、このような人材を求めています。こういうスタッフを求めますと明確にお伝えするようにしています。

 

今野 なるほどですね。スキルや技術的なものではなく考え方など仕事観のところからお伝えするのですね。

 

中野 はい。技術やスキルにつては、後からでも習得することができると思っています。最近でご応募いただける方は優秀な方が多いので、方向性が当院の方針と合っていれば問題ないと思っています。

 

 

今野 その仕事観ですが、ぜひもう少し具体的に教えていただくことはできますでしょうか?歯科助手、受付さんを当院はこのような考えを共感いただける方を募集しているとお伝えする場合、実際にはどのようなところを大切にしてお伝えされているのでしょうか?

 

中野 色々な観点がありますが、一つは他の人のために頑張れる人です。自分の権利ばかり主張するのではなく、他の人が喜ぶことを自分のことのように嬉しいと感じられる方ですね。あとは、基本的に業務は忙しいことを伝えています。歯科医院の受付業務を、ただ受付に座っていて、時々電話を取れば良いと思っている方もいるのですが、当院は電話も多くかかってきますし、非常に忙しいことをお伝えして業務内容をご理解いただいて、そこで頑張れるかどうかを大切にしています。そして、やはりスタッフがたくさんいることもあり、尊重してお互いが気持ちよく仕事が出来ることを実行できるかなど、いくつか大切にしているポイントを伝えています。

 

今野 なるほど。具体的で大変分かりやすいですね。しかもミスマッチは少なくなりますね。

 

中野 はい。あとは成長するために勉強してもらう姿勢も大切にしているので、お休みを自己研鑽に投資できる考えの方かどうかもお聞きしています。

 

今野 そこまで踏み込んでお伝えされているのですね。

 

中野 はい。その方針に共感してくださる方がハローワークから応募いただけるので、とても良い流れになっていると感じています。

 

今野 ありがとうございます。今回は、チーフなど幹部スタッフの育て方やコミュニケーション方法、そしてその優秀なスタッフを採用する方針など多くの成功事例をお教えいただきました。中野先生の事例を、少しでも多くの院長先生に参考にしていただければと思います。

 

 ※当インタビューは、オーディオブック「院長の経営成功術 VOL17」より抜粋、編集した内容です。

 

 

「院長の経営成功術」とは?

「院長の経営成功術」は毎回気鋭のゲストをお招きし、MOCAL株式会社代表 今野賢二が経営戦略、組織構築と人事マネジメント、外部マーケティングや診療システムの構築等、歯科医院の様々な課題、発展ポイントに焦点を当てたインタビュー形式のオーディオブック(CD教材)です。

 

歯科業界をリードする成功者、先駆者達が発展に至るまでの様々な困難や課題をどのように乗り越えてきたのか、経営成功の秘訣、経営の原理原則を学ぶ絶好の教材です。

 

 

「院長の経営成功術」は毎回気鋭のゲストをお招きし、MOCAL株式会社代表 今野賢二が経営戦略、組織構築と人事マネジメント、外部マーケティングや診療システムの構築等、歯科医院の様々な課題、発展ポイントに焦点を当てたインタビュー形式のオーディオブックです。

歯科業界をリードする成功者、先駆者達が発展に至るまでの様々な困難や課題をどのように乗り越えてきたのか、経営成功の秘訣、経営の原理原則を学ぶ絶好の教材です。

 

■「院長の経営成功術 VOL.17」

 

1. 今月のテーマ&ゲスト紹介

2. 口コミ拡大のポイントは満足度の高い「初診時」

3. コミュニケーションの主人公はスタッフ

4. 母性的なチーフと父性的なサブチーフ

5. 優秀な人材採用の秘訣は「仕事観」をしっかり伝えること

6. トップアプローチで衛生士学校との強いパイプをつくる

7. 自費率アップは説明する時間に比例する

8. 患者さんの美味しく食べる姿を見るために

9. 超具体的!ホームページ作成のためのチェックリスト

10. 5年間諦めずに取り組むと、必ず夢はかなう

11. 僕達50代が日本の歯科医療のためにできること

 

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■MOCAL株式会社 歯科経営出版

 

 

歯科繁栄会~Dental Prosperity Meeting~

「歯科繁栄会」とは、「Mr.歯科事務長」ユーザーを中心とした志の高い院長のための情報交流の場です。毎回、ゲスト講師をお招きし、最新の取組事例など経営成功に役立つ情報を発信します。

 

 

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